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第2章★為政者の品格★

★閑話3★「忠犬」

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菫「リョウマ様、失礼致します。お部屋の掃除に参りました」

リョウマ「ああ、入れ」

菫「わ、綺麗! 鉱石ですか?」

リョウマ「趣味で集めている。というか掃除はいらん。座れ、今紅茶を淹れる」

菫「そういうわけには参りません。他の女中の皆さんも働いております」

リョウマ「ふっ。倭国王女が使用人の真似事なんて、俺以外が知ったらどうなるだろうな。とにかく座れ」

菫「わっ。急にお姫様抱っこしないで下さい」

リョウマ「……」

菫「リョウマ様?」

リョウマ「少しだけこのままでいても良いですか……」

菫「どういうこと? 抱っこされたまま? 重くないですか?」

リョウマ「重くない……」

菫「リョウマ様。奥様のいる身でダメですよ」

リョウマ「2年暮らしているが一度も妻に触れたことはない。拒否される」

菫(うっ、それはつらい……)

菫「じゃあ、自分の気持ちを伝えれば良いのです。あなたを抱きたいと」

リョウマ「あなたを抱きたい……」

菫「いやいや、わたしじゃなくてね」

リョウマ「あなたがいい……」

菫「うーん、狂犬だったのが子犬みたいになっちゃったな……」

リョウマ「また、頭をなでて下さい」

菫(寂しいのかな?)

菫「少し頭を下げて。よしよし、いい子だね」

リョウマ「……好きです、菫様」

菫「うん、ありがとう。でも、道ならぬ恋はイヤなの。身ぎれいにしてから出直して」

リョウマ「身ぎれいにしたら俺を好きになってくれますか」

菫「うーん、どうかな。紫苑の塔で女性と遊んでいるのもイヤだな。わたしだけ見るならいいんだけどな」

リョウマ「あなたしかもう目に入らない。二度といかない。菫様に忠誠を誓う」

菫「うん、ありがとう。でもあなたは天界国赤騎士団長という立派な立場がありますね。個人的にわたしに協力してもらってとても助かりますが、リョウマ様の立場を悪くするような行動はやめて下さい。責任ある立場である以上、部下や仲間を裏切ったらだめですよ。天界国を守るためにわたしを切り捨てる人でないと、好きになってあげないよ」

リョウマ「くくっ。あなたがそういう人だから俺も惹かれた。ただ地位や金のためではない」

菫「うん、知ってる。大丈夫」

リョウマ「菫様みたいな王族を見たの、初めてなんです」

菫「ああ、そうだよね。ルウ王子やカボシ姫は王族の生活を第一に考えろって言う人だって言ってたもんね」

リョウマ「はい」

菫「騎士団の皆さんも大変ですね」

リョウマ「俺たちを気遣ってくれる王族なんか、天界国にはいない。だったら俺に政略結婚なんかさせないはずだ」

菫(確かに……天界国王に政治利用されたか……? 人質差し出すとしたらルウ王子と結婚させるのが一般的のはず……可哀想だったな)

リョウマ「……菫様? 急に頭をなでて、どうしました……?」

菫「ううん。リョウマ様の髪、柔らかいなって思って」

菫(何故ルウ王子とアコヤ様を結婚させなかった……? 何か裏でもあるのか……)

リョウマ「す、菫様……嬉しいですがそんなにベタベタ触られたら……さすがに俺も、ちょっと、その、我慢出来なくなりそうです……」

菫「ああ……そうだよね、ごめん」

リョウマ「襲いますよ……」

菫「あら、やってみて下さい。あなたはどうせ出来ないでしょ」

リョウマ「くっ……またバカにして……」

菫「あ、またやっちゃいました? そんなつもりないんですけど、気を付けます」

リョウマ「まあ当たってるからな……俺は権力に弱いから」

菫「えっ、自覚してたの? 嘘でしょ?」

リョウマ「くっ……ところどころ生意気だな……本当に襲ってやろうか」

菫「忠誠を誓うって言ってたじゃないですか」

リョウマ「そうだが、たまにイラッとくるぞ」

菫「……ふふ、狂犬リョウマも可愛い」

リョウマ「……」

菫「お手」

リョウマ「…………わん」


☆終わり☆

    
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