上 下
28 / 84
第2章★為政者の品格★

★閑話2★「王女の飼い犬」

しおりを挟む
リョウマ「家に行ったら、コウキがお前を探していたから俺とオークションに行ったことを話したら怒っていた」

菫「本当のことを言ったのですか?」

リョウマ「いや。双頭院が逮捕されたことをサラッと言ったら、今度は俺の両親が騒いでオークション会場に走って行った」

菫「そうですね。双頭院派でしたものね」

リョウマ「ルージュは学院時代の友人と呑気にディナーに出かけた」

菫「ふんふん」

リョウマ「だから今うちにはコウキが一人でふて寝をしている。奴隷3人は、金を握らせて貧民街のことを教え、解放した」

菫「良くできました」

リョウマ「……その、頭をなでるのは癖なのか? 俺は犬か?」

菫「何かリョウマ様見ていたら、撫でたくなっちゃって。嫌でした?」

リョウマ「嫌ではない……」

菫「それで、何でまたわたしの泊まるホテルに帰ってきたんですか? コウキ様と一緒にいればいいのに」

リョウマ「俺にやきもち妬いてるギスギスした男と一緒の空間にいたくはない」

菫「このホテルにわたしと二人きりって知られる方が面倒じゃないの?」

リョウマ「確かに……」

菫「ふふ。ではわたしたちはここでディナーでも食べますか?」

リョウマ「……そうだな」

菫「? どうしたのですか?」

リョウマ「いや。王族が普通に騎士とディナーなどとは、信じられないと思ってな。王族の傍で騎士は立って守るものだからな」

菫「そうなのですか?」

リョウマ「ああ。うちのカボシ様はワタルを気に入っていて、必ずワタルを傍に置いて食事をしていたが、ワタルと共に食べることはなかったはずだ」

菫「そうですか」

リョウマ「それに、為政に詳しいのに驚いた。国民のために動くなどと、考えられないからな。カボシ様やルウ様は、とにかく王族が気分良く過ごせるようにしろと命令する。自分たちの遊びに忙しい。だから驚いた。国民のために動く王族もいるのだな」

菫「それ、天界国だけじゃないですか? 大抵の王族は国民のことを第一に考えると思いますよ」

リョウマ「そうか……」

菫「? 何ですか、さっきから。ニヤニヤして」

リョウマ「いや、見とれているだけだ」

菫「それもうやめましょう。アコヤ様に失礼ですよ」

リョウマ「元々政略結婚なんだ。アコヤは邪神国と同盟を結ぶときに差し出された人質でな。年齢の近い俺に白羽の矢が立ち、結婚することになった。まあ、言ってしまえば愛はない」

菫「邪神国の人質なのですか……」

リョウマ「サギリ女王の妹だ。輿入れするときも邪神国のやつらは誰もこなかった。サギリでさえもな。だから奴らは俺の顔も知らないだろう。俺が身分を隠して偵察に行けるくらいにな」

菫「サギリ女王の妹……確かサギリ女王も後妻だったと記憶しておりますが……」

リョウマ「ああ、そうだ。俺も実際会ったことはない。アコヤと数名の仕官が俺の家に来て式を挙げた。連れてきた庭師が、アコヤの真に愛する男らしい。俺のいないところで良く愛し合っている。俺とは結婚してからも、一度も肌を合わせたことがないのにな」

菫「え……」

リョウマ「ふっ、そんな顔をするな。同情はされたくない」

菫「すみません、何も知らずでしゃばった真似を……」

リョウマ「始めは愛せると思った。だがこうも庭師といちゃいちゃされたら、俺も気分が悪い」

菫「それで紫苑の塔に通い始めたのですか?」

リョウマ「ああ」

菫「あの、紫苑の塔に通っている騎士団長は誰でしょう? 白騎士様は通っていないと言っていたのですが」

リョウマ「ワタルはカボシ様が通うことを禁止しているんだ。ワタルを余程気に入っているのだろう」

菫「まさか、白騎士様がカボシ様の愛人ということは?」

リョウマ「どうだろうな……ワタルは竜神女王ひとす……いえ」

菫「ふふ、気を遣って下さっているのですか? 大丈夫です。白騎士様は竜神女王にご執心だということは、コウキ様から聞いております」

リョウマ「年がかなり離れているがな……」

菫「年上好きなのね。母性を求めていそうな顔していますものね。態度も子供っぽいし、意地っ張りだし、甘えたいのかも」

リョウマ「ワタルがか? はは」

菫「コウキ様も通っていますよね」

リョウマ「あれは変態だからな……通ってはいても共に寝てはいないだろう。恐らく温もりが恋しいときに添い寝でもしてもらっているのだろうな」

菫(また変態か……余程の性癖なのかな)

菫「コウキ様はどのような変態なのですか?」

リョウマ「! 知らない方がいい。女はみんな知らないはずだ。ヒサメですらな。あれはちょっと理解できない変態だ。上手くフェードアウトしろ」

菫「あんなに爽やかで優しいのに」

リョウマ「ふん、女はみんなコウキに騙される」

菫「あら、嫉妬ですか? 可愛い、リョウマ様」

リョウマ「……その、男をバカにしないで頂きたい」

菫「そんなつもりありませんけれど……」

リョウマ「あなたは何もしなくても男が寄ってくるでしょう。だから少し小馬鹿にする癖がある」

菫「えっ、そうかな……」

リョウマ「はい。自分の美貌で寄って来る男を無意識にバカにしているところがあります」

菫(わっ、そう見えるのか……気を付けよう)

リョウマ「逆に言えばあなたの内面に惹かれる男に弱い。俺はどうですか? 今や菫様の内面に惚れ込んでいますが」

菫「えっ、待って。リョウマ様」

リョウマ「ははっ。迫られることには弱いのか。これは新発見」

菫「……からかわないで下さいよ。アコヤ様に報告しますよ」

リョウマ「構いません。むしろそうして下さい。そうすれば堂々とあなたを口説きにいける」

菫「ちょっと……調子が……狂います、リョウマ様」

リョウマ「ふっ。まあ、既婚者なので、今は本気出しませんがね。叩いてしまった右の頬に懺悔の口づけくらいはお許し下さい」

菫「えっ……えっ……」

リョウマ「ふっ。赤くなった。今回は俺の勝ちですね」

菫「りょ、リョウマ~!」


☆終わり☆
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

3.戦災の魔界姫は正体を隠し敵国騎士の愛人候補になる3★空中楼閣籠城編★

喧騒の花婿
恋愛
2.戦災の魔界姫は正体を隠し敵国騎士の愛人候補になる2 ★陰陽師当主編★ の続きの物語です。 天界国青騎士団長ヒサメと、 異世界から神隠しに遭ったニンゲンが かどわかされ 倭国の人質となってしまった。 倭国側の要望は、天界国に幽閉されている 竜神女王とヒサメの人質交換と、和平交渉。 天界国はヒサメを無事取り戻し、 倭国との和平交渉を有利に進めることが できるだろうか。 ★R15です。苦手な方は気をつけて下さい。 該当の話にはタイトルに※が付いています。 ★設定上、魔界は14歳が成人であり、アルコールを飲める年齢になります。 ★閑話は、時系列順不同です。

2.戦災の魔界姫は正体を隠し敵国騎士の愛人候補になる2 ★陰陽師当主編★

喧騒の花婿
恋愛
【戦災の魔界姫は正体を隠し敵国騎士の 愛人候補になる1 ★月読教改革編★】 の続きの物語です。 ★2.陰陽師当主編★は6章で終わります。 ★3.空中楼閣籠城編★に続きます。 天倭戦争で逝去した倭国王室陰陽師長 稲田 八雲の跡取り問題が表面化しつつあった。 本妻、マユラとの間に子供ができず 愛人を複数抱えていた八雲。 愛人の子供、太一は 果たして本家に認められ 次期当主として稲田家に君臨する ことができるだろうか。 ★R15です。苦手な方は気をつけて下さい。 該当の話にはタイトルに※が付いています。 ★閑話は、時系列順不同です。 ★IF番外編√は 本筋以外の魔人と恋愛したら という、もしも√を書いています。 本編とは異なる設定ですので、 ご了承下さる方はお気を付けて 読んで下さると幸いです。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

お金目的で王子様に近づいたら、いつの間にか外堀埋められて逃げられなくなっていた……

木野ダック
恋愛
いよいよ食卓が茹でジャガイモ一色で飾られることになった日の朝。貧乏伯爵令嬢ミラ・オーフェルは、決意する。  恋人を作ろう!と。  そして、お金を恵んでもらおう!と。  ターゲットは、おあつらえむきに中庭で読書を楽しむ王子様。  捨て身になった私は、無謀にも無縁の王子様に告白する。勿論、ダメ元。無理だろうなぁって思ったその返事は、まさかの快諾で……?  聞けば、王子にも事情があるみたい!  それならWINWINな関係で丁度良いよね……って思ってたはずなのに!  まさかの狙いは私だった⁉︎  ちょっと浅薄な貧乏令嬢と、狂愛一途な完璧王子の追いかけっこ恋愛譚。  ※王子がストーカー気質なので、苦手な方はご注意いただければ幸いです。

処理中です...