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第1章★敵国潜入★
第6話☆紫苑の塔の謎☆
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「そんなことよりワタル様。パーティーが終わったら私の屋敷にいらっしゃいません?」
「は?」
考えている隣でワタルとルージュがうるさかった。ワタルは突拍子もない声を出して慌てているので、少しおかしくなって菫も笑ってしまった。
「行きません。明日も朝早いので、城で寝泊まりするのが一番ですからね」
「そんなこと言って、紫苑の塔で遊んでいらっしゃるのでしょ? お兄様も騎士団長はみんな適度に遊んでいるとおっしゃっていましたわ」
ふと菫が『紫苑の塔』という名に気を取られ思わず二人を見ると、ワタルが頬を赤らめて困惑しているところだった。
「おれは遊んでないです。リョウマと一緒にしないで下さい」
「それなら是非いらして。お兄様も家に帰るとおっしゃってたから、大丈夫でしょ? ねえワタル様」
長く艶やかな髪を靡かせたルージュがワタルを見る。
それから間もなくして壇上で挨拶していたコウキが戻って来て菫の隣に立った。
菫は慌てて笑顔を作ると、コウキに向かって微笑んだ。
紫苑の塔のことを聞かなければ、と思った。
「いやあ、結構飲んだな」
機嫌良くほろ酔いになりながら、コウキは広い天界国の廊下を歩く。隣で支えながら菫も歩いていた。
「楽しかったな。菫は?」
「はい、コウキ様の武勇伝を聞けて良かったです。素敵でした」
「はは、そう? 嬉しいな」
西にある立派な塔は天界国騎士団たちの部屋があるらしい。
騎士団長はそれぞれ立派な部屋を用意されていて、そこで各々暮らしているようだった。
コウキの部屋は塔の最上階、一番角の部屋だった。
扉を開け、コウキを中に入れると菫はほっと息をつく。
「ではコウキ様、おやすみなさいませ。良い夢を」
女中に戻ったように、菫は深くお辞儀をした。コウキは菫の手をパシッと掴むと、顔を上げさせる。
「もう戻るの? 夜はこれからだろ?」
コウキの目に妖しい光が宿った。
☆続く☆
「は?」
考えている隣でワタルとルージュがうるさかった。ワタルは突拍子もない声を出して慌てているので、少しおかしくなって菫も笑ってしまった。
「行きません。明日も朝早いので、城で寝泊まりするのが一番ですからね」
「そんなこと言って、紫苑の塔で遊んでいらっしゃるのでしょ? お兄様も騎士団長はみんな適度に遊んでいるとおっしゃっていましたわ」
ふと菫が『紫苑の塔』という名に気を取られ思わず二人を見ると、ワタルが頬を赤らめて困惑しているところだった。
「おれは遊んでないです。リョウマと一緒にしないで下さい」
「それなら是非いらして。お兄様も家に帰るとおっしゃってたから、大丈夫でしょ? ねえワタル様」
長く艶やかな髪を靡かせたルージュがワタルを見る。
それから間もなくして壇上で挨拶していたコウキが戻って来て菫の隣に立った。
菫は慌てて笑顔を作ると、コウキに向かって微笑んだ。
紫苑の塔のことを聞かなければ、と思った。
「いやあ、結構飲んだな」
機嫌良くほろ酔いになりながら、コウキは広い天界国の廊下を歩く。隣で支えながら菫も歩いていた。
「楽しかったな。菫は?」
「はい、コウキ様の武勇伝を聞けて良かったです。素敵でした」
「はは、そう? 嬉しいな」
西にある立派な塔は天界国騎士団たちの部屋があるらしい。
騎士団長はそれぞれ立派な部屋を用意されていて、そこで各々暮らしているようだった。
コウキの部屋は塔の最上階、一番角の部屋だった。
扉を開け、コウキを中に入れると菫はほっと息をつく。
「ではコウキ様、おやすみなさいませ。良い夢を」
女中に戻ったように、菫は深くお辞儀をした。コウキは菫の手をパシッと掴むと、顔を上げさせる。
「もう戻るの? 夜はこれからだろ?」
コウキの目に妖しい光が宿った。
☆続く☆
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