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第1章★敵国潜入★

第3話☆天満納言☆

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 煌びやかなホールは戦勝の喜びで賑わっていた。


 菫はコウキにエスコートされていた。緑騎士団のカラーのためか、コウキも若草色のスーツを着て気取っているように見えた。


 背が高くひょろりとしているので、他の人よりも頭一つ分大きかった。


「やはり、映えるね。俺の選んだパートナーはこの会場の誰よりも美しい」


「……ありがとうございます。コウキ様も精悍でいらっしゃいます」


 菫はコウキの賛辞に柔らかく微笑んでお礼を言った。倭国宮廷陰陽師の稲田一族、取り分け当主の八雲の首を取った男だ。八雲は生前倭国に忠義を尽くしてくれた。


 菫はコウキを見上げる。まだ若そうな風貌をしていた。八雲が五十代とすると二十代だろうか。こんなヘラヘラした男に自国の重鎮を殺されたのか、と菫は背の高いコウキをそっと見ていた。


「コウキ様、オロチの首を跳ねた功労賞、おめでとうございます」


「さすがコウキ様ですね」


「うん、ありがとう」


 コウキの傍にお祝いの挨拶をしにくる者が後を絶たなかった。全て緑色のスーツをそれぞれ着ており、恐らくはコウキの直属の部下であることが伺われた。 


「コウキ様、今宵の相手は女中と聞きましたが……」


 ふとそのうちの一人で小声で話しかけてきた。コウキは爽やかな笑顔を見せる。
 

「綺麗だろ、菫と言う」
「それはもう」
「美しいですね。団長のコレクションになれそう」
「俺にも見せろ」
「団長、俺にも」
「こんな綺麗な女、初めて見ました」
   

 たちまち菫を舐めるような視線が襲う。ゾワリと背筋が凍った。
 不快感はあるが、それを表には出せない。


「天界国の女中にしておくのはもったいないのでは? そのうち例の職に転職させるのも手ではないですか」


 例の職? と菫が訝しんでいると、コウキは大きく頷いた。
  

「まあ、それは追々かな。天満納言様にお伺いを立ててからになるだろうからな」


 天満納言……菫はその名を聞くとギリッと歯を食いしばった。


 天倭戦争で母である竜神女王を攫った男の名だ。天界国軍師、つまり騎士団を率いて倭国に攻め入った張本人だ。


 そのとき対峙した稲田一族の一人に片眼を潰されたようだが、未だのうのうと天界国のトップ2の座に就いている。


☆続く☆
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