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第1章★敵国潜入★
第1話☆パーティーへの誘い☆
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「ただいま。緑騎士団、ルクアの森のオロチ討伐から帰還しました」
柔らかい声につられ菫が顔をあげると、爽やかな笑顔を見せた緑の鎧が目に入った。
「騎士様、おかえりなさいませ。ご帰還おめでとうございます。すぐに執事長に知らせて参ります」
緑騎士団は主に諜報活動の部隊だったか、と思いながら菫が身を翻すと、その手をすかさず騎士が掴んだ。
「ねえ、俺がオロチの首を斬って討伐したんだ。功労賞は俺がもらえるんだけど、凱旋パーティーのパートナーになってくれない?」
えっ、と可愛く驚く場面だろうか。それとも顔を赤らめて恥じらう場面だろうか。
しかし菫は先の天界国と倭国の天倭戦争で戦災孤児となり、もうとうに少女のようなリアクションはできなくなってしまっていた。
「わたしはつい最近就職致しましたので、良くわからないのですが、格式高い騎士様の相手役が女中では、騎士様が笑われてしまいませんか?」
魔界の風習で伸ばしている長い髪を揺らして首を傾げた菫を、騎士は熱っぽい視線で見た。
「いいよ、俺は毎回パートナーを変えている。遊女を連れてくることもあるから」
敵国と言えこんな軽い騎士がいる国に自国が負けたと思うと虚しく思う。
「俺は緑騎士団長、風のコウキ。良い返事を待っているよ。君の名前は?」
ふわりと風のように舞う短髪に、爽やかな笑顔。優しそうな垂れ目は、笑ったときには目尻に烏の足跡が出て彼を幼く見せた。
風のコウキ、聞いたことがある。
代々騎士の家系で天界国に貢献してきたと聞く。
(倭国の宮廷陰陽師の首を取った男だ)
そう気付いた菫は憎しみを込めてコウキをそっと見た。
(倭国が誇る陰陽師、稲田一族を殲滅した男……こんな軟派そうな男に……さぞ無念だったでしょう……)
倭国の王女は死んだと伝えられているため、まさか菫が敵国の王女だとは気付かないはずだ。
(パートナーか、情報を得るには最適かも)
菫は瞬時にそう判断すると、とびきりの笑顔を見せてコウキに口を開いた。
「コウキ様、光栄です。わたしでよろしければよろこんで。名はスミレと申します」
白皙の肌に大きな目、長いまつげに通った鼻筋、厚ぼったい唇。
前々から異性に好まれる容姿のようだ、と薄々気付いていた菫は、自分の容姿が男性から好奇の目で見られることもあると知っていた。
男性のあからさまな誘いや下心には辟易していた。ならば逆手に取ってコウキを手籠にし、幽閉されている母親の情報を得てやろう、と思った。
こうしてコウキのパートナーとなった菫は、コウキの言われるがまま、今日の凱旋パーティーの相手役として、ドレスアップすることになった。
☆続く☆
柔らかい声につられ菫が顔をあげると、爽やかな笑顔を見せた緑の鎧が目に入った。
「騎士様、おかえりなさいませ。ご帰還おめでとうございます。すぐに執事長に知らせて参ります」
緑騎士団は主に諜報活動の部隊だったか、と思いながら菫が身を翻すと、その手をすかさず騎士が掴んだ。
「ねえ、俺がオロチの首を斬って討伐したんだ。功労賞は俺がもらえるんだけど、凱旋パーティーのパートナーになってくれない?」
えっ、と可愛く驚く場面だろうか。それとも顔を赤らめて恥じらう場面だろうか。
しかし菫は先の天界国と倭国の天倭戦争で戦災孤児となり、もうとうに少女のようなリアクションはできなくなってしまっていた。
「わたしはつい最近就職致しましたので、良くわからないのですが、格式高い騎士様の相手役が女中では、騎士様が笑われてしまいませんか?」
魔界の風習で伸ばしている長い髪を揺らして首を傾げた菫を、騎士は熱っぽい視線で見た。
「いいよ、俺は毎回パートナーを変えている。遊女を連れてくることもあるから」
敵国と言えこんな軽い騎士がいる国に自国が負けたと思うと虚しく思う。
「俺は緑騎士団長、風のコウキ。良い返事を待っているよ。君の名前は?」
ふわりと風のように舞う短髪に、爽やかな笑顔。優しそうな垂れ目は、笑ったときには目尻に烏の足跡が出て彼を幼く見せた。
風のコウキ、聞いたことがある。
代々騎士の家系で天界国に貢献してきたと聞く。
(倭国の宮廷陰陽師の首を取った男だ)
そう気付いた菫は憎しみを込めてコウキをそっと見た。
(倭国が誇る陰陽師、稲田一族を殲滅した男……こんな軟派そうな男に……さぞ無念だったでしょう……)
倭国の王女は死んだと伝えられているため、まさか菫が敵国の王女だとは気付かないはずだ。
(パートナーか、情報を得るには最適かも)
菫は瞬時にそう判断すると、とびきりの笑顔を見せてコウキに口を開いた。
「コウキ様、光栄です。わたしでよろしければよろこんで。名はスミレと申します」
白皙の肌に大きな目、長いまつげに通った鼻筋、厚ぼったい唇。
前々から異性に好まれる容姿のようだ、と薄々気付いていた菫は、自分の容姿が男性から好奇の目で見られることもあると知っていた。
男性のあからさまな誘いや下心には辟易していた。ならば逆手に取ってコウキを手籠にし、幽閉されている母親の情報を得てやろう、と思った。
こうしてコウキのパートナーとなった菫は、コウキの言われるがまま、今日の凱旋パーティーの相手役として、ドレスアップすることになった。
☆続く☆
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