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第4章★閑話★

3☆ファーストキス☆※

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コウキ「なんだよその格好! 背中出しすぎじゃないの?」

菫「ですよね」

コウキ「ですよねって……女中の制服って、そんなだったっけ? スカートも短くない?」

菫「短い」

コウキ「何でいつもの制服着てないの」

菫「天満納言様が、わたしをサポート役として隣に置くから、他の女中と区別するためにこれを着ろって」

コウキ「趣味全開じゃん……」

菫「……」

コウキ「サポート役になってから、日が経ってるじゃん」

菫「日が経って、女中と同じ制服は判別面で不便と気付いて作って下さったようです」

コウキ「待て待て、この格好で仕事するの?」

菫「いいえ、まさか。この上に白いローブを羽織るんです」

コウキ「白いローブで他の女中と区別するなら、こんな際どい制服着なくていいじゃん。いつもの制服でいいのにな」

菫「本当ですよね……」

コウキ「え? こんな短いスカートなのにザックリとスリット入ってるじゃん」

菫「そうですね……寒くて嫌だな」

コウキ「いやいや違う、そうじゃないだろ……見えちゃうじゃん!」

菫「下着?」

コウキ「そ、そうだよ」

菫「ずっとローブ着ているから大丈夫ですよ」

コウキ「あと何で肩とか出てるの? 屈んだら見えちゃうじゃん!」

菫「胸?」

コウキ「そ、そうだよ」

菫「コウキ様みたいに背が高かったら、屈まなくても見えそうね」

コウキ「なんで落ち着いてるの!? そんなこと言われたら意識しちゃうじゃん! ほらローブ羽織って」

菫「ありがとう」

コウキ「全く……俺はともかく火輪がどうかなりそうだから」

菫「火輪様、お元気ですか?」

コウキ「ん? うん、まあね。でも最近、あまり出て来ないな、そういえば……」

菫「そうなの?」

コウキ「うん……昔は良く出てきたんだけどな」

菫「わたしが対立姿勢を見せたからかな……」

コウキ「はは、蘇らせないって啖呵切ってたからな。菫のこと怖がって出てこないのかもね」

菫「そのうち火輪様に会いにコウキ様のお部屋遊びに行ってもいいですか?」

コウキ「ん? いいよ。いつでもきなよ」

菫「ありがとうございます。美味しいお酒を持って行きますね」

コウキ「え? いらない。体1つでおいで。俺、アルコールあんまり強くないんだ」

菫「え……水竜殺し頂いたとき、飲まないって言っていましたけれど……弱いから?」

コウキ「まあね。俺、飲むとずいぶん周りに迷惑かけるからさ」

菫「そういえば酔っていたとき、部屋のドアの前で座り込んでいましたね……」

コウキ「菫は飲むと朗らかになったり、楽しそうなテンションになるから、いいよな」

菫「え、わたしの酔い方ご存知でしたっけ?」 

コウキ「そりゃ……ラウンジの個室で良く飲んでいる君とおしゃべりしたし……」

菫「そっか……ラウンジの個室で飲んでるの見られていますね。そういえばわたしの癒やしの彼……」

コウキ「俺な」

菫「……あなたがラウンジで飲みすぎちゃって、大変なことになったのを思い出した」

コウキ「えっ! なんだっけ?」

菫「いつもは後方で離れて見るのに、その日は前方でわたしの踊りを見ていて、珍しいなと思いながらあなたに向かって下着を投げたの」

コウキ「……お、おお」

菫「そうしたら、いつもみたいに取らないで、奪取するようにして取ったのよ」

コウキ「……よし菫、この話はやめよう」

菫「その後すぐに癒やしの彼はわたしを連れて個室に駆け込んだの」

コウキ「菫さん、聞いてました?」

菫「コウキ様、酔っていたみたい。わたしのこと個室に入った瞬間、抱きしめてきて……」

コウキ「嘘だろ!?」

菫「本当ですよ。その後『あの男は絶対に許さない。声は覚えた、覚悟しろ』って言っていたわ」

コウキ「あー……はいはい。俺が八雲の声を覚えた日だ。俺が19歳のときだ。誕生日だったから良く覚えてる。ラウンジで八雲に声を掛けられたあと、イライラして飲んだんだ。その後記憶がない……かも……」

菫(八雲様やっぱりラウンジに来ていたんだ! じゃあ太一様も来ていたのかな……)

菫「あー……」

コウキ「どうしたどうした? 急に頭抱えて……俺も頭抱えたいんだけど……」

菫「……そのときの癒やしの彼、いつもはおしゃべりだけだったのに、その日はわたしにくっついて離れなかったの」

コウキ「ごめん!」

菫「ふふ、大丈夫。本当は参加者はわたしに触っちゃいけない決まりがあったけど、癒やしの彼は特別だったから、触られても秘密にしていたわ」

コウキ「お、俺他に変なことしなかった? 菫が傷つくことしなかったか?」

菫「していませんよ、大丈夫。ただ……」

コウキ「うん?」

菫「コウキ様は初めてって言ってたけど、すごい慣れた感じだったんですよね……わたしにキスしてきて……」

コウキ「嘘だろ!?」

菫「ね。体温苦手って聞いた今では、嘘みたいですよね。唇、あったかいし」

コウキ「そういう問題じゃない!」

菫「信じられないかもしれませんけど、わたしもファーストキスだったの」

コウキ「まじで言ってる!?」

菫「おかしいですよね。何百もの男を咥えておいて、キスは初めてだったのよ」

コウキ「ひどい!」

菫「え?」

コウキ「君の思い出になりそうな……大切なものを、酔っ払った俺がムードもなく奪ったっていうのか」

菫「えっ、どうしたの急に……」

コウキ「しかも俺記憶にもないんだ。最低じゃん!」

菫「あなたも初めてって言ってましたよ」

コウキ「いやいや、俺未だにファーストキスはまだしたことないと思ってたよ!」

菫(えっ、そうなんだ!)

菫「わたしも初めてだったから、何か記念にしたいなと思って、そのあとその日投げてあなたが拾った下着と同じものを発注したの」

コウキ「なんの話!?」

菫「それ以来、新しいことを始めたり、勝負事だったりするときは、その下着を履いて気合を入れたり、ゲン担ぎしているんです」

コウキ「えっ、ほんとになんの話?」

菫「偶然にも、今日からこの制服を着てから初めての仕事なので、気合い入れてその下着を履いているんです。ほら、ね」

コウキ「そう繋がるの!? 短いスカートにスリット入ってるから、見せやすいもんな! だとしても見せるな! 俺に! 見える! やめろ!」

菫「癒やしの彼との大切な思い出だから、何か記念が欲しかったの……多分わたし癒やしの彼のこと、好きだったから」

コウキ「まじか、両思いだったね!」

菫「……目を反らしながら言わないで下さいよ」

コウキ「……見える」

菫「すごいでしょ。倭国跡地のわたしの隠し部屋に保管していたの、焼けてなくて綺麗に残っていたんです。着物も残ってたの!」

コウキ「あーはいはい。それで嬉しくて履いてきたわけね。はいはいはい」

菫「覚えてないかな……この桃色の下着。紐の部分がレースになっててフリフリしていて可愛いの」

コウキ「覚えてるよ! 君の下着は全部……忘れるはずないだろ」

菫「もう、照れちゃって……時間だわ。天満納言様の仕事に行ってきます」

コウキ「菫、天満納言様には見せるなよ!」

菫「……癒しの彼だから見せたかったの! 他の人には見せないもん」

コウキ(可愛すぎかよ……)

☆終わり☆
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