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第2章★閑話★

3☆キナセ暗躍☆

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キナセ「こんにちは」

菫「わっ、びっくりした……キナセ様、今日はどうしましたか? とうとう芍薬忍の方たちがわたしの眷属になってくれるの?」

キナセ「私は大賛成ですが、セージさんがなかなか警戒心が強くて。申し訳ないのですが、あと少し姫様のことを観察させて下さい」

菫「ふふ、いいですよ」

キナセ「……何拭いているんですか?」

菫「明日極楽京にスズシロ一味残党整理に行くのですが、その関連書類が水浸しになっちゃって。徹夜して書き上げたものだから、未練が……」

キナセ「なぜ水浸しに?」

菫「書類を抱えて執務室に向かう途中、うっかり池に落ちちゃったの」

キナセ(また大臣の嫌がらせで落とされたっすかね……)

キナセ「着物が濡れています。風邪をひきます。乾かしに行きましょう」

菫「待って、書類を乾かしてから……」

キナセ「後にしましょう。まずは姫様の体が最優先です」

菫「だってペンで書いたから滲んじゃう……」

キナセ(頑固なのはセージさんと良い勝負っすね……)

キナセ「失礼します」

菫「きゃー何よ急に」

キナセ「お姫様をお姫様抱っこしてます。風呂場まで抱っこします」

菫「えー……キナセ様って意外と強引なんですね……」

キナセ「そうですか? あなたほど頑固ではないですが」

菫「言うわね……わかりました、シャワー浴びるから下ろして下さい。重いでしょ」

キナセ「風呂場の外で誰も来ないよう見張っています」

菫「ありがとう」

☆☆☆☆☆

菫「おまたせしまし……なにこれ? 何で魔人が何人も倒れているの?」

キナセ「姫様の風呂中に執務室に忍び込んでいた者どもです。極楽京の重要書類を盗みに来たようです。全て殲滅しました。今縄で縛ります」

菫「え……この数を? 全員キナセ様が1人で倒したの?」

キナセ「はい。セージさんならもっと短時間で倒せます」

菫(……優秀過ぎない?)

菫「ありがとうございます……契約もしていないのに、わたしを助けて下さって」

キナセ「構いません。私も姫様に信頼して頂きたいので。それよりこいつら、吐かせます?」

菫「きゃー何取り出してるの!」

キナセ「……毒仕込んだ八方手裏剣です」

菫「物騒!」

キナセ(甘いっすね……これじゃ大臣にもナメられるわけっす)

キナセ「吐かせるために脅しをかけます。血が噴き出しますので、姫様は目を反らして下さい」

菫「待って待って! 物騒! その手裏剣、しまって下さい」

キナセ「お言葉ですが甘過ぎます。そんなんでは寝首を掻かれますよ」

菫「違うの、吐かせなくても大丈夫です、キナセ様」

キナセ「え?」

菫「彼らはスズシロ一味の残党です。そろそろ来ると思っていたの。わたしがスズシロ様を島流しにしたから、その報復で残党がわたしの命を狙っていたのよ」

キナセ「正体把握していたんですか」

菫「うーん、泳がせていたという方が正しいかしら。極楽京の関連書類が欲しかったんでしょう。わたしの弱みを握るには格好の餌ですから」

キナセ「泳がせる……? 書類を水浸しにされたのは……?」

菫「あの書類、国交旅行省の広報部長の方に池に落とされて水浸しになっちゃった。広報部長は黒幕とつながりがあるでしょうね。キナセ様が倒して下さった残党は、国交旅行省の大臣と繋がっている可能性があります。大物が釣れるわよ、フフフ……」

キナセ(まじか……泳がせていただけ……)

菫「ありがとうキナセ様、あなたのおかげで黒幕がわかったわ。今から国交旅行省大臣と話してきます」

キナセ(え……すごいっすね、このお姫様……)

キナセ「でも危ないですよ……自分が身の危険にさらされたら元も子もないのでは」

菫「……心配して下さるの? ありがとうございます」

キナセ「魔人として当たり前のことです……」

菫「じゃあ、わたしについてきて下さる? 今から黒幕と対峙してきますから、もし可能なら自分の次にわたしの身の安全を確保して下さいますか?」

キナセ「当たり前です。姫様優先で動きます」

☆☆☆☆☆

セージ「で? 国交旅行大臣が逮捕されたわけかよ」

キナセ「そうっす! あの姫様、虫も殺さぬ顔して!」

セージ「……虫なんか食われちまうぞ。毒蛇やサソリも素手で掴むからな……」

クラリ「素手? くノ一でもないのに……さらにまだ13歳でしょ……」

セージ「それで、逮捕された国交旅行大臣はどうなったんだ?」

キナセ「島流しの刑っす」

クラリ「スズシロ一味と同じ島?」

キナセ「そうっす。大臣のスキルを活かして子供も大人も楽しめる遊園地……島流しアイランドを作らせるらしいっす。大臣の家族全員移住させて、結構いい暮らししながら穏やかに仕事してるみたいっすね」

セージ(俺たち芍薬忍を観光業に就かせたいから、スズシロ一味と内通していた国交旅行大臣を島流しにして物理的に離したんだな……俺たちを守るためだ……)

キナセ「もう国交旅行大臣とその家族は、姫様に懐柔されいいなりっす。しかもメロメロっすよ。余程人たらしっす、あの姫様」

セージ(アホ、計算だよ、それも)

クラリ「それよりキナセ、あんた遅かったね。今回菫様に5日間くらい張り付いてたんじゃない?」

キナセ「あ、そうっす。他に任務も頼まれていたっす」

セージ「あ? おめぇ、ボンクラの任務なんて勝手に受けるんじゃねぇよ。まだ眷属になるって決めたわけじゃねえんだからよ」

キナセ「オイラにしか出来ない任務って言われたっす」

セージ「んだと?」

クラリ「キナセは臨機応変さが売りだからね、その辺菫様に見抜かれたんでしょ」

セージ「で、その任務ってなんだ?」

キナセ「……秘密っす」

セージ「あぁ? ふざけんなてめぇ。芍薬の里の奴らには情報共有しやがれ」

キナセ「しばらくオイラには任務を入れないで欲しいっす。別で動くっす」

クラリ「……ふうん。ねえキナセ、私には後で教えてね」

キナセ「だ、ダメっす。いくらクラリさんでも教えられないっす……」

クラリ「いいじゃない、あんた私のことが好きなんでしょ。教えてくれたら一緒に寝てあげる」

キナセ「……う……それは魅力的っすね……」

セージ「やめろや気持ち悪ぃ。体使うなってボンクラに言われてんだろうが、クラリ」

クラリ「別にいいじゃない、任務じゃないんだから。私が誰と寝ようが関係ないでしょ」

セージ「子供でも作ってみろ。俺に押し付けられるに決まってんだろうが」

キナセ「そうしたらセージさん、オイラのお義兄さんになるっすね」

セージ「あぁ? ふざけんじゃねぇよ」

クラリ「はあ……男は何歳になってもガキね……アホセージ」

セージ「クソが……」

キナセ「姉弟仲良くして下さいっす、お義兄さん」

セージ「俺は認めねぇからな!」

クラリ「やれやれ」

☆終わり☆
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