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第2章★新・白騎士団長審査会開始!★
第10話☆川の字☆
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「酷とは?」
リョウマが身を乗り出して菫に尋ねる。菫はセージが撮ってきた写真と報告書をリョウマに見せた。
「うわ~うわ~うわ~」
カルラが顔を赤くしながら女性と剣矢の不倫写真を眺める。
色々な体位に驚いているんだろうな……とリョウマはカルラを見て思った。
「この女は昨日菫様の部屋で見た写真の女と同じですか?」
「はい。えっと、顔は良く見えませんがこの女性です」
菫は困ったようにリョウマを見上げる。
カルラは顔を真っ赤にしながら写真を見続けていた。
「カルラ、見すぎだろう」
「だ、だって……」
「フッ、菫様を抱くとき試してみたらどうだ?」
リョウマのからかいに、カルラは顔を上げてリョウマを見た。
「な、な、何言うんだよリョウマ……こんなの……できるかよ~」
「俺はやるぞ、これとかな」
リョウマは1枚の写真を取り出してカルラに見せた。
ベッドに剣矢が座り、女性も同じように座って1つになっている写真だった。
女性は剣矢の首に腕を回して反転しながらキスをしている。
菫は何か引っかかるようにリョウマを見る。
この写真は、セージが天井から撮った不透明な最初の写真だった。
「……あの、この格好リョウマ様もするんですか?」
「は?」
写真を見て呟いた菫に、リョウマとカルラが驚いたように目を丸くして菫を同事に弾けるように見てきた。
「この体位、リョウマ様もするの?」
もう1度はっきり言うと、カルラが慌てたように菫の肩を抱いた。
「すすす菫! な、なに想像してるんだよ~。リョウマに抱かれたいのか? わかるよ、わかる。カッコいいし、体格もいいし、上手いって白薔薇言ってたし、俺も女だったら絶対リョウマがいいけど……わかるけど想像するなよ~」
「落ち着け」
慌てるカルラを止めながら、リョウマは苦笑をする。
「何か気になることでもあるんですか?」
リョウマが菫を覗き込んで優しく聞いた。
「体位が……」
「体位が気になるんですか? フッ、俺がご指導しましょうか?」
リョウマがベッドにあぐらをかくように座り直し、菫の腰を引き寄せた。
体勢を崩した菫がリョウマの元に倒れ込むと、写真のような格好になる。
カルラはビクッとして2人を見たが、様子を眺めるように見ていた。
「こんな感じです。菫様は俺に後ろ向きで腕を回し、反転してキスを」
「こう?」
「はい。これで写真の体位ですね。何を気にしているんですか? カルラが泣く前に教えて下さい」
菫はリョウマの体にすっぽりと包まれている状態だった。菫はリョウマから手を離すと、自分のあごに手をあてて考える。
「この体位を剣矢様がしているとき、不思議だったの。白薔薇様と城門でお会いしたとき、リョウマ様に絡んだときの体位にそっくりじゃないですか?」
「……えっ?」
2人は菫の声に再び不倫写真を見る。
「……え? どういうこと?」
「女性の顔は見えませんが、この体位が気に入っているようでした。紫苑の塔に通っているとき、リョウマ様白薔薇様にこれをしていなかった?」
「は?」
さすがにリョウマが真っ赤になって菫に向き合いながら言った。
「……剣矢と不倫しているのは、白薔薇だと言いたいのか、菫?」
カルラが写真を見ながら静かに呟く。
「違うかな……リョウマ様にしてもらったのを気に入って、剣矢様にも要望しているように見えちゃって」
リョウマは菫の伏せた目にかかる長いまつげを眺めながら小さくため息をついた。
「白薔薇かもしれん。確かにあいつはこの体位を気に入っていた」
リョウマが言うと、菫は小さく頷いた。
「それなら、不倫とは少し違うかもしれませんね。ミラー様が許すかはまた別ですが。リョウマ様、どうしましょう……ミラー様に報告した方が良いですか?」
菫がリョウマと密着していたので、カルラはため息をついて菫の両脇を持って持ち上げ、抱っこをする。
「待てよ、まだ証拠が万全じゃない。調査続行にしよう。剣矢がただの遊びなら、リョウマから釘を刺せばおとなしくなるんじゃないか? 本気の不倫なら、証拠を集めてやった方がいい、ミラーのためにも」
カルラの冷静な声に、リョウマと菫は頷く。
「まだミラーには言わなくていい。ショックだろうからな」
リョウマは結婚していたとき、妻のアコヤが庭師の御剣と公開不倫していたため、裏切られたミラーの気持ちが痛いほどわかるのだろう。
菫とカルラは気遣うようにリョウマを見る。
「……わたし剣矢様に話を聞いてみようかな……」
「却下!!」
菫の言葉に、リョウマとカルラが同時に叫んだ。
「駄目です菫様! ふざけているんですか! あんな男に接触したら、食われてしまいますよ!」
「すすす菫のバカ~! 小悪魔~! 男泣かせ~!」
酔いも回ってきたためか、2人がテンション高めに叫ぶと、菫はおかしくなって笑ってしまった。
「ふふ、そんなに必死にならなくても……」
「……とにかくこの問題はセージに任せよう。今日は飲むぞ、菫、カルラ!」
「そうだそうだ~カンパーイ! 菫も、ほら」
「カンパーイ」
気の合う3人は、水竜殺しを飲みながら楽しい話へと移行していった。
差し込む陽の光に起こされたカルラは、むくりと体を起こす。
ガンガンと頭が響くように痛かった。
カルラは頭を押さえて隣を見る。
菫がベッドにスヤスヤと健やかに寝ており、カルラはホッと息をついた。
さらに隣にはリョウマも体を縮めながら横向きで寝ている。酔っ払って菫を真ん中に、本当に川の字になって寝てしまったようだ。
「まじか……子供じゃないんだから……」
カルラは1つのベッドで綺麗に3人川の字で寝たことに笑ってしまう。
カルラは静かに起き出すと、紅茶を淹れに部屋に併設された簡易キッチンへと向かった。
鼻歌を歌いながらお湯を沸かしていると、後ろからふわりと抱きつかれた。
「ん?」
後ろを振り向くと、菫が笑いながらカルラの背中にくっついていた。
「カルラ様、おはようございます」
「あ……おはよう菫。良く眠れたか?」
うなされなかっただろうか。カルラは酔ったまま眼鏡をかけて寝てしまったので、夜中に起きなかったのだ。
「大丈夫です。支度、してきても良い?」
「もちろん。シャワー浴びるか? ローブ、血が着いちゃったよな……2日間休みだし、買い物でも行く?」
「……えっ」
カルラの提案に、菫はきょとんとして大きな目を開ける。
「え……なに? そんなに驚く?」
「カルラ様、ショッピングとか行くんだ」
「行くさ! おい、バカにしてないか、俺のこと……」
「ふふ、してないわ」
クスクスと笑いながら菫はシャワールームへと向かった。
「バカにしてるな~あれは……」
カルラが紅茶を入れながら呟くと、隣に大きな影ができていた。
「バカにされているな、カルラ」
フッと笑いながらリョウマが歩いてきていた。
「おはよう、カルラ。結局3人で酔いつぶれたのか」
「うん。起きたら川の字で寝てた。まあ……菫がうなされなかったみたいでホッとしたよ」
「菫様、ラウンジや戦争の記憶で苦しんでいるようだからな……」
「リョウマ、一昨日一緒に寝たときは泣いていたか?」
「いや……うなされも泣きもしなかったぞ。俺は一睡も出来なかったがな……」
腕を組みながら言うリョウマに、カルラは笑いながら頷いた。
思った通り、リョウマが一緒に寝たらうなされないんだ……
ふと芽生えたカルラの小さな気持ちに、リョウマは全く気付いていないようだった。
☆終わり☆
リョウマが身を乗り出して菫に尋ねる。菫はセージが撮ってきた写真と報告書をリョウマに見せた。
「うわ~うわ~うわ~」
カルラが顔を赤くしながら女性と剣矢の不倫写真を眺める。
色々な体位に驚いているんだろうな……とリョウマはカルラを見て思った。
「この女は昨日菫様の部屋で見た写真の女と同じですか?」
「はい。えっと、顔は良く見えませんがこの女性です」
菫は困ったようにリョウマを見上げる。
カルラは顔を真っ赤にしながら写真を見続けていた。
「カルラ、見すぎだろう」
「だ、だって……」
「フッ、菫様を抱くとき試してみたらどうだ?」
リョウマのからかいに、カルラは顔を上げてリョウマを見た。
「な、な、何言うんだよリョウマ……こんなの……できるかよ~」
「俺はやるぞ、これとかな」
リョウマは1枚の写真を取り出してカルラに見せた。
ベッドに剣矢が座り、女性も同じように座って1つになっている写真だった。
女性は剣矢の首に腕を回して反転しながらキスをしている。
菫は何か引っかかるようにリョウマを見る。
この写真は、セージが天井から撮った不透明な最初の写真だった。
「……あの、この格好リョウマ様もするんですか?」
「は?」
写真を見て呟いた菫に、リョウマとカルラが驚いたように目を丸くして菫を同事に弾けるように見てきた。
「この体位、リョウマ様もするの?」
もう1度はっきり言うと、カルラが慌てたように菫の肩を抱いた。
「すすす菫! な、なに想像してるんだよ~。リョウマに抱かれたいのか? わかるよ、わかる。カッコいいし、体格もいいし、上手いって白薔薇言ってたし、俺も女だったら絶対リョウマがいいけど……わかるけど想像するなよ~」
「落ち着け」
慌てるカルラを止めながら、リョウマは苦笑をする。
「何か気になることでもあるんですか?」
リョウマが菫を覗き込んで優しく聞いた。
「体位が……」
「体位が気になるんですか? フッ、俺がご指導しましょうか?」
リョウマがベッドにあぐらをかくように座り直し、菫の腰を引き寄せた。
体勢を崩した菫がリョウマの元に倒れ込むと、写真のような格好になる。
カルラはビクッとして2人を見たが、様子を眺めるように見ていた。
「こんな感じです。菫様は俺に後ろ向きで腕を回し、反転してキスを」
「こう?」
「はい。これで写真の体位ですね。何を気にしているんですか? カルラが泣く前に教えて下さい」
菫はリョウマの体にすっぽりと包まれている状態だった。菫はリョウマから手を離すと、自分のあごに手をあてて考える。
「この体位を剣矢様がしているとき、不思議だったの。白薔薇様と城門でお会いしたとき、リョウマ様に絡んだときの体位にそっくりじゃないですか?」
「……えっ?」
2人は菫の声に再び不倫写真を見る。
「……え? どういうこと?」
「女性の顔は見えませんが、この体位が気に入っているようでした。紫苑の塔に通っているとき、リョウマ様白薔薇様にこれをしていなかった?」
「は?」
さすがにリョウマが真っ赤になって菫に向き合いながら言った。
「……剣矢と不倫しているのは、白薔薇だと言いたいのか、菫?」
カルラが写真を見ながら静かに呟く。
「違うかな……リョウマ様にしてもらったのを気に入って、剣矢様にも要望しているように見えちゃって」
リョウマは菫の伏せた目にかかる長いまつげを眺めながら小さくため息をついた。
「白薔薇かもしれん。確かにあいつはこの体位を気に入っていた」
リョウマが言うと、菫は小さく頷いた。
「それなら、不倫とは少し違うかもしれませんね。ミラー様が許すかはまた別ですが。リョウマ様、どうしましょう……ミラー様に報告した方が良いですか?」
菫がリョウマと密着していたので、カルラはため息をついて菫の両脇を持って持ち上げ、抱っこをする。
「待てよ、まだ証拠が万全じゃない。調査続行にしよう。剣矢がただの遊びなら、リョウマから釘を刺せばおとなしくなるんじゃないか? 本気の不倫なら、証拠を集めてやった方がいい、ミラーのためにも」
カルラの冷静な声に、リョウマと菫は頷く。
「まだミラーには言わなくていい。ショックだろうからな」
リョウマは結婚していたとき、妻のアコヤが庭師の御剣と公開不倫していたため、裏切られたミラーの気持ちが痛いほどわかるのだろう。
菫とカルラは気遣うようにリョウマを見る。
「……わたし剣矢様に話を聞いてみようかな……」
「却下!!」
菫の言葉に、リョウマとカルラが同時に叫んだ。
「駄目です菫様! ふざけているんですか! あんな男に接触したら、食われてしまいますよ!」
「すすす菫のバカ~! 小悪魔~! 男泣かせ~!」
酔いも回ってきたためか、2人がテンション高めに叫ぶと、菫はおかしくなって笑ってしまった。
「ふふ、そんなに必死にならなくても……」
「……とにかくこの問題はセージに任せよう。今日は飲むぞ、菫、カルラ!」
「そうだそうだ~カンパーイ! 菫も、ほら」
「カンパーイ」
気の合う3人は、水竜殺しを飲みながら楽しい話へと移行していった。
差し込む陽の光に起こされたカルラは、むくりと体を起こす。
ガンガンと頭が響くように痛かった。
カルラは頭を押さえて隣を見る。
菫がベッドにスヤスヤと健やかに寝ており、カルラはホッと息をついた。
さらに隣にはリョウマも体を縮めながら横向きで寝ている。酔っ払って菫を真ん中に、本当に川の字になって寝てしまったようだ。
「まじか……子供じゃないんだから……」
カルラは1つのベッドで綺麗に3人川の字で寝たことに笑ってしまう。
カルラは静かに起き出すと、紅茶を淹れに部屋に併設された簡易キッチンへと向かった。
鼻歌を歌いながらお湯を沸かしていると、後ろからふわりと抱きつかれた。
「ん?」
後ろを振り向くと、菫が笑いながらカルラの背中にくっついていた。
「カルラ様、おはようございます」
「あ……おはよう菫。良く眠れたか?」
うなされなかっただろうか。カルラは酔ったまま眼鏡をかけて寝てしまったので、夜中に起きなかったのだ。
「大丈夫です。支度、してきても良い?」
「もちろん。シャワー浴びるか? ローブ、血が着いちゃったよな……2日間休みだし、買い物でも行く?」
「……えっ」
カルラの提案に、菫はきょとんとして大きな目を開ける。
「え……なに? そんなに驚く?」
「カルラ様、ショッピングとか行くんだ」
「行くさ! おい、バカにしてないか、俺のこと……」
「ふふ、してないわ」
クスクスと笑いながら菫はシャワールームへと向かった。
「バカにしてるな~あれは……」
カルラが紅茶を入れながら呟くと、隣に大きな影ができていた。
「バカにされているな、カルラ」
フッと笑いながらリョウマが歩いてきていた。
「おはよう、カルラ。結局3人で酔いつぶれたのか」
「うん。起きたら川の字で寝てた。まあ……菫がうなされなかったみたいでホッとしたよ」
「菫様、ラウンジや戦争の記憶で苦しんでいるようだからな……」
「リョウマ、一昨日一緒に寝たときは泣いていたか?」
「いや……うなされも泣きもしなかったぞ。俺は一睡も出来なかったがな……」
腕を組みながら言うリョウマに、カルラは笑いながら頷いた。
思った通り、リョウマが一緒に寝たらうなされないんだ……
ふと芽生えたカルラの小さな気持ちに、リョウマは全く気付いていないようだった。
☆終わり☆
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