13 / 42
FILE2『嘘で塗られた自分の体』
3・いじわるな大谷くん
しおりを挟む
「せんせー。呼びましたか」
ふと大きな声で私は目を覚ました。すぐに壁に掛かっている時計を見ると、十二時十五分だった。二時間目はおろか、四時間目が終わるまで寝てしまっていた。
「いないのかな」
大きな声の人がしばらく先生を探していたけれど、いないようだった。そのうち、私の寝ているカーテンが開けられた。背の高い猫目の人と目が合った。転校生だ。
「あ、ごめんなさい。寝ているとは思わなくて」
大谷くんはそう言うと、急いでカーテンを閉めた。私は閉められたカーテン越しに声をかける。
「あ、あの、大谷くん、中川先生は、多分職員室に食事を取りに行ったんだと思うよ」
身体が大きくて、あの佐久間くんとけんかをしたと聞いていたから、私は思わずビクビクして、語尾が小さくなってしまった。
大谷くんは、今度は静かにカーテンを開けてこちらを見た。
「あー、ええと、同じクラスの」
大谷くんは大きな猫目で上を見て、私のことを思い出そうとしているようだった。
「山岡 愛美です」
「ああ、そうそう。修学旅行費の山岡」
私はそれを聞いて、とても惨めな気持ちになってしまい、とうとう俯いてしまった。そんなことを無神経に言うなんて、酷い。涙が流れないように手に力を入れたけれど、どうやら駄目そうだ。
「うー……」
せめて大谷くんに涙を見られないようにと思って、膝を抱えてみたけれど、今度は声が出てしまう。
「えっ、な、何で泣いてるの」
大谷くんは慌てた声を出した。廊下から女子生徒の話し声が大きくなって聞こえてきた。大谷くんはその声にも慌てたのか、こちら側に入ってカーテンをサッと閉めてくれた。
私は涙声になりながら大谷くんに言った。
「そうやって……みんなで私のことをからかって……うー……」
「いや、からかっているつもりはなかった。ごめん、無神経だったな。もう言わない」
大谷くんはこちらに近づいてきて、ハンカチを突き出した。男の子は、こういうものを持っていないと思っていたのに、青いタータンチェックの綺麗に畳まれたハンカチを渡してくれた。
「おれ、まだ今日はハンカチ使ってないから」
「あ、ありがとう……」
思っていたよりずっと優しい。身体が大きくて、けんかが強い人は、もっと乱暴だと思っていたのに、大谷くんはそういう人とは違うのかもしれない。
「修学旅行費って言うだけで、みんな私を見てクスクス笑うの」
「笑ってねーよ」
「でも、誰かが悪戯したってことは、私のこと悪く思っている人がいるってことだもの」
「ネガティブ過ぎるだろ」
借りたハンカチで涙を拭っていたら、何だかわからなくなってしまって、私はまた泣いた。ハンカチはびしょびしょになってしまって、もう使い物にならなかったけれど、私はずっとそれで涙を拭い続けた。
3・続く
ふと大きな声で私は目を覚ました。すぐに壁に掛かっている時計を見ると、十二時十五分だった。二時間目はおろか、四時間目が終わるまで寝てしまっていた。
「いないのかな」
大きな声の人がしばらく先生を探していたけれど、いないようだった。そのうち、私の寝ているカーテンが開けられた。背の高い猫目の人と目が合った。転校生だ。
「あ、ごめんなさい。寝ているとは思わなくて」
大谷くんはそう言うと、急いでカーテンを閉めた。私は閉められたカーテン越しに声をかける。
「あ、あの、大谷くん、中川先生は、多分職員室に食事を取りに行ったんだと思うよ」
身体が大きくて、あの佐久間くんとけんかをしたと聞いていたから、私は思わずビクビクして、語尾が小さくなってしまった。
大谷くんは、今度は静かにカーテンを開けてこちらを見た。
「あー、ええと、同じクラスの」
大谷くんは大きな猫目で上を見て、私のことを思い出そうとしているようだった。
「山岡 愛美です」
「ああ、そうそう。修学旅行費の山岡」
私はそれを聞いて、とても惨めな気持ちになってしまい、とうとう俯いてしまった。そんなことを無神経に言うなんて、酷い。涙が流れないように手に力を入れたけれど、どうやら駄目そうだ。
「うー……」
せめて大谷くんに涙を見られないようにと思って、膝を抱えてみたけれど、今度は声が出てしまう。
「えっ、な、何で泣いてるの」
大谷くんは慌てた声を出した。廊下から女子生徒の話し声が大きくなって聞こえてきた。大谷くんはその声にも慌てたのか、こちら側に入ってカーテンをサッと閉めてくれた。
私は涙声になりながら大谷くんに言った。
「そうやって……みんなで私のことをからかって……うー……」
「いや、からかっているつもりはなかった。ごめん、無神経だったな。もう言わない」
大谷くんはこちらに近づいてきて、ハンカチを突き出した。男の子は、こういうものを持っていないと思っていたのに、青いタータンチェックの綺麗に畳まれたハンカチを渡してくれた。
「おれ、まだ今日はハンカチ使ってないから」
「あ、ありがとう……」
思っていたよりずっと優しい。身体が大きくて、けんかが強い人は、もっと乱暴だと思っていたのに、大谷くんはそういう人とは違うのかもしれない。
「修学旅行費って言うだけで、みんな私を見てクスクス笑うの」
「笑ってねーよ」
「でも、誰かが悪戯したってことは、私のこと悪く思っている人がいるってことだもの」
「ネガティブ過ぎるだろ」
借りたハンカチで涙を拭っていたら、何だかわからなくなってしまって、私はまた泣いた。ハンカチはびしょびしょになってしまって、もう使い物にならなかったけれど、私はずっとそれで涙を拭い続けた。
3・続く
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる