夢幻の花

喧騒の花婿

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FILE1『倶楽部』

9・発見

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 次の日、教室は歓声に包まれた。


「俺が発見したんだぜ!」


 得意気に胸を張る野球倶楽部の彼の名は、佐久間 龍夢というらしい。昨日殴り合いのけんかをした後、山岡の修学旅行費を発見したぼくたちは、一時休戦してすぐに職員室へと茶封筒を持って行った。



 川野先生は驚いて発見した場所を聞き、何故見つけたかという話になったときに、ぼくと佐久間の取っ組み合いのけんかを知り、結局ぼくたちは怒られた。



 お互いの親に連絡され、学校に呼び出され、経過を報告され、けんか両成敗という形でお互いが謝った。



 佐久間の母親はいつまでもぶつぶつと文句を言っていたが、佐久間本人はぼくに謝ってくれた。ぼくも暴力をふるったことは心底悪いと思っていたので、申し訳ない気持ちで謝った。



 ぼくの母はぼくを叱った後、先生と佐久間の母親に深く頭を下げていた。そして、「転校早々の呼び出しは、最短記録だわ」と皮肉を言われた。



 そしてすぐに山岡の家に電話をかけ、費用発見のことを伝えて、我々は解散となった。


 山岡 愛美はというと、女子数名に囲まれて慰められているようだった。今日もふわふわした洋服を着ていた山岡は、費用発見の朗報に笑顔を見せていた。


「結局、余計なことを続けていたわけね」


 ふと座っていたぼくの席に日がかげり、上を見た。高田がぼくの前に仁王立ちをして、冷たい目を向けていた。長い黒髪がさらりと前方に落ち、邪魔そうだった。



「おはよう、高田」


「……おはよう。山岡さんの修学旅行費を見つけたの、本当はあなたでしょう?」


 教卓の側でわいわいと騒いでいる佐久間を横目で見やり、高田が低い声で囁いた。ぼくは肩を竦めて首を振った。


「いや、おれは佐久間とけんかしただけ。一人で探していても見つからなかったけど、あいつのおかげで見つかったようなものだから、おれが見つけたわけじゃない」


「何でけんかをしたのよ?」


 高田の問いかけに、ぼくは余計なことを言ってしまったことに気付き、気まずいまま黙っていた。


「……まあ、言いたくないならいいけれど。あなたはあれね。馬鹿なのね」


 眉を潜めて低い声で続ける高田に、ぼくは再び肩を竦めた。面と向かってはっきりと言ってしまうこの性格が、クラスで孤立してしまう理由なのだろう。ぼくは嫌いではないけれど。



「でも、ありがとう」


 去る前に、ふいと横を向いてぶっきらぼうに呟いた言葉は、ぼくにしっかりと届いた。


「……難儀な奴」


 小さく呟くぼくの言葉は、彼女には届かなかったようだ。


9・続く
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