夢幻の花

喧騒の花婿

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FILE1『倶楽部』

7・探偵倶楽部?

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「大谷だっけ。野次馬根性や好奇心での行動なら、やめておいた方がいいわよ。修学旅行費を無くしたのは山岡さんの落ち度。もう一度親に頼んでもらってくれば良いことよ」


「そんな問題でもないだろ。簡単にもう一度もらってくれば良いなんて、裕福な家の奴らしか言えない台詞だよ。おれの家なんて貧乏だから、もしおれの修学旅行費が無くなったとしたならば、必死になって探すけれどな」


「……そう」


 ふい、と横を向いた高田の表情からは、少し怒りが消えていた。


「私が山岡さんの費用を盗んだという噂が流れているの、知ってる。みんな、私のことを遠巻きに見て、噂をして、悪口を言って、馬鹿みたい。子供っぽい学校って、嫌い」


 自分も子供じゃないか、と言いそうになったけれど、それは『子供』を盾にした言い訳になってしまうと思って言わなかった。高田も恐らくそういうつもりで言った台詞だったのだろう。


「悪口言われるのが嫌だったら、自分から行動すればいいじゃん。私はやってない、って大声で叫べばいいじゃん」


「あなた馬鹿?」


 呆れたような声を出して高田がぼくを睨みつけた。


「そんなことしたら、余計ゴタゴタするだけ。言いたい人には言わせておけばいいの」


「そのわりには、冴えない表情してるよ。自分のせいにされて嫌なんじゃないの?」


「自分のせいにされて、嫌じゃない人なんているの?」


 お互いに感情的になりそうになってしまったのに気付いて、ぼくは落ち着くように口を閉ざした。高田も気付いたのか、ばつが悪そうに下を向いた。


「ごめん、言い過ぎたよ。気になるし、おれもうちょっと探してみてから帰るよ。それにしても、自分のせいにされていること、知っていたんだな」


「まあね。前にもあったから、私のせいにされたこと」


「ふうん。難儀な奴」


 肩を竦めたぼくに、高田も合わせるようにため息をついてランドセルを背負い直した。


「でも、探偵倶楽部みたいな真似、やめて頂戴。見ていてイライラするから」


「探偵倶楽部?」


「ええ。私、探偵倶楽部が大嫌いだから」


 そういえば前にも『倶楽部』という単語が出ていたような気がする。司が言っていた。


「探偵倶楽部って何なの? 小学校にも部活動みたいなもの、あるの?」


 気になって尋ねたぼくに、高田はきょとんとして首を傾げた。


「前の小学校には無かったの? 放課後に、五、六年生だけ決められた曜日に倶楽部があるのよ。大谷もいずれ入ることになるだろうから、今のうちに決めておいた方がいいわよ。因みに探偵倶楽部だけはお勧めできないわ。人の粗捜しをする最低の倶楽部だから」

7.続く
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