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FILE1『倶楽部』
6・高田と山岡
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第一印象では、高田は読書好きの真面目な女子、山岡はふわふわした格好が好きなおとなしい女子、というイメージを受ける。
クラスの雰囲気としては、男子はうるさそうなガキ大将が一人いて、その周辺を賑やかな男子が囲んでおり、おとなしめの男子たちは教室の隅で穏やかに話している。
女子はグループがいくつか出来ており、固まって話をしている感じだ。こちらもやはりかしましそうなグループが数組、おとなしそうなグループが数組となっている。その中で高田という生徒は一人で読書をしているので、多少浮いてしまってはいた。
けれど、ぼくは高田のことを一目置いている。誰かと一緒にいないと不安になってしまうのに、ぴんと背筋を伸ばして周りの喧騒を気にせずに黙々と読書をしているのだ。周囲からの自分の評価や噂話など、恐らく彼女は気にしないタイプなのだと推測する。
山岡は、女子数名に囲まれて何やら慰められていた。恐らく修学旅行費が無くなったことに対しての慰めだと思うが、涙を流しているのが見えた。
そういう様子を見ると、嘘をついている様子には思えない。正直、もしかしたら山岡の狂言かもしれないと一瞬思ったのだが、あの涙が演技だとしたら相当だ。ということで、ぼくの中で狂言の可能性は消滅している。
こういう事件がクラス内で起こってしまうと、得てして雰囲気がギクシャクしてしまう。前の学校でも似たような事件はあったが、そのときもお互いに疑心暗鬼になってしまっていた。
転校早々そういう雰囲気になってしまったら、さすがに気が滅入ってしまいそうだ。ぼくは高田をぼんやりと眺めながらそう思った。
授業が終わり、何の進展もないまま放課後になった。ぼくは少し気になって、クラスメイトが帰った後、教室の隅々まで探してみた。さすがに個人の机の中は見なかったけれど、教卓の机の中は調べてみた。先生が入れたことを忘れてしまっているかもしれないからだ。まだ校内に生徒が少し残っているようだったが、ぼくは構わず教卓を覗き込む。書類や教材道具などがあったが、お金を入れる封筒は見つからなかった。
「何やってるの?」
背後から訝しげな声をかけられて、ぼくはビクリと肩を竦ませた。誰もいないと思っていたからだ。恐る恐る振り返ると、眼鏡をかけた少女がぼくを軽蔑したような目で見下ろしていた。高田だった。
「あ、ええと」
「勝手に先生の机を覗くなんて、最低。どれだけ非常識な男なの? それとも、都会っ子はみんなそうなのかしら」
例えて言うなら、キンとした氷のような鋭い声の持ち主だ。ぼくは立ち上がると、高田を見下ろした。背は女子にしては高い方だろうか。眼鏡の奥から、ぼくのことを凍てつく氷のような目で見上げていた。
ぼくは高田と向き合うと、肩を竦めた。
「山岡っていう女子の修学旅行費が無くなったと言っていたから、気になったところを探していたんだ。でも勝手に先生の机を探したら駄目だよな」
高田はじろりとぼくを睨み付ける。気が強いようだ。
「あの子もきちんと管理しておかないからよ。すぐ先生に渡さないから、こういう事態になったときに大きな問題になるのよ。とばっちりを受ける私たちの身にもなってほしいわね」
かなりきつい言い方だ。頷ける部分もあるけれど、許せる心というのも必要ではないだろうか。おっちょこちょいなぼくは、失敗は誰にでもあるという前提に基づいて行動しているため、このように自分にも他人にも厳しそうな人を見ると、ストレスが溜まってしまうのではないかと心配してしまう。
6.続く
クラスの雰囲気としては、男子はうるさそうなガキ大将が一人いて、その周辺を賑やかな男子が囲んでおり、おとなしめの男子たちは教室の隅で穏やかに話している。
女子はグループがいくつか出来ており、固まって話をしている感じだ。こちらもやはりかしましそうなグループが数組、おとなしそうなグループが数組となっている。その中で高田という生徒は一人で読書をしているので、多少浮いてしまってはいた。
けれど、ぼくは高田のことを一目置いている。誰かと一緒にいないと不安になってしまうのに、ぴんと背筋を伸ばして周りの喧騒を気にせずに黙々と読書をしているのだ。周囲からの自分の評価や噂話など、恐らく彼女は気にしないタイプなのだと推測する。
山岡は、女子数名に囲まれて何やら慰められていた。恐らく修学旅行費が無くなったことに対しての慰めだと思うが、涙を流しているのが見えた。
そういう様子を見ると、嘘をついている様子には思えない。正直、もしかしたら山岡の狂言かもしれないと一瞬思ったのだが、あの涙が演技だとしたら相当だ。ということで、ぼくの中で狂言の可能性は消滅している。
こういう事件がクラス内で起こってしまうと、得てして雰囲気がギクシャクしてしまう。前の学校でも似たような事件はあったが、そのときもお互いに疑心暗鬼になってしまっていた。
転校早々そういう雰囲気になってしまったら、さすがに気が滅入ってしまいそうだ。ぼくは高田をぼんやりと眺めながらそう思った。
授業が終わり、何の進展もないまま放課後になった。ぼくは少し気になって、クラスメイトが帰った後、教室の隅々まで探してみた。さすがに個人の机の中は見なかったけれど、教卓の机の中は調べてみた。先生が入れたことを忘れてしまっているかもしれないからだ。まだ校内に生徒が少し残っているようだったが、ぼくは構わず教卓を覗き込む。書類や教材道具などがあったが、お金を入れる封筒は見つからなかった。
「何やってるの?」
背後から訝しげな声をかけられて、ぼくはビクリと肩を竦ませた。誰もいないと思っていたからだ。恐る恐る振り返ると、眼鏡をかけた少女がぼくを軽蔑したような目で見下ろしていた。高田だった。
「あ、ええと」
「勝手に先生の机を覗くなんて、最低。どれだけ非常識な男なの? それとも、都会っ子はみんなそうなのかしら」
例えて言うなら、キンとした氷のような鋭い声の持ち主だ。ぼくは立ち上がると、高田を見下ろした。背は女子にしては高い方だろうか。眼鏡の奥から、ぼくのことを凍てつく氷のような目で見上げていた。
ぼくは高田と向き合うと、肩を竦めた。
「山岡っていう女子の修学旅行費が無くなったと言っていたから、気になったところを探していたんだ。でも勝手に先生の机を探したら駄目だよな」
高田はじろりとぼくを睨み付ける。気が強いようだ。
「あの子もきちんと管理しておかないからよ。すぐ先生に渡さないから、こういう事態になったときに大きな問題になるのよ。とばっちりを受ける私たちの身にもなってほしいわね」
かなりきつい言い方だ。頷ける部分もあるけれど、許せる心というのも必要ではないだろうか。おっちょこちょいなぼくは、失敗は誰にでもあるという前提に基づいて行動しているため、このように自分にも他人にも厳しそうな人を見ると、ストレスが溜まってしまうのではないかと心配してしまう。
6.続く
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