【完結】ポーラ・マッキニーの華麗なる借金返済

【11】ポーラ・マッキニーは華麗に？借金返済する

　数日後ーーー、ポーラは赤いパラソルの下で優雅に珈琲を飲んでいた。

　テレーザに搾り取られたおかげで、懐は潤った。
　彼女は気前よく宝石をくれたのだ。
　質屋に持ち込むと、三ヶ月は遊んで暮らせる額になった。

　そのお金で借金を返し、余ったぶんは姉に渡そう。
　きっとねぇさんは母の借金で大変だろうから。



　……しかしポーラは些細な事で姉を責め、金を渡す前に席を立ってしまった。

（ねぇさんが、悪いんだ。僕が祓魔師の類を嫌いと知っていて、馬鹿なこと言いだすから……）

　神も幽霊も祓魔師も、全て詐欺の類だと思っているポーラは、その手の話が大嫌いだ。
　てっきり姉もそうだと思っていたのに、「幽霊に取り憑かれてる、お祓いが必要かな？」なんて言い出したもんだから、腹がたった。
　まさか姉までその手の話に騙されるなんて……馬鹿馬鹿しいやら、情けないやら、腹立たしいやら。

　そもそもポーラがその手の話を嫌っているのは、父が原因だ。
　父は新興宗教・ロンド教に執心で、父を洗脳した奴等は最初、祓魔師と名乗って近づいてきた。
　不眠に悩む父に、眠れないのは悪霊が憑いているからだと。

　なにやら薬を処方して眠れるようになったが、それは霊を祓った神のおかげだと説いた。
　ロンド教の教えを守り神を信じれば、もう悪霊はこない。
　信じなければ、今後も悪霊に取り憑かれるだろうと脅した。

　それが全ての始まりだった。
　ポーラの心の傷も、誰にも言・え・な・い・秘・密・も全て……。


「チェッ！嫌なこと思い出しちゃったなぁ！お金も渡しそびれたし」

　ポーラは夏の日差しに目を眇すがめ、道端の石ころを蹴った。
　石はコロ、コロ、コロと三回転して止まる。

（さん、……三？、…………三番！！）

　胸ポケットから新聞を取り出すと、今日のレースでテディントンは三番ゲートから出走すると書いてある。

「これだぁっ！！これは神の啓示だ、テディントンが勝つっていうね！！よぉし！このお金を全額つっこめば……三倍になって返ってくるじゃないか。間違いない、ラッキーナンバー3だぁ！これで母上の借金を全額返せるぞ」

　ポーラはスキップして競馬場へと向かった。

　ポーラはまだ知らない。
　数週間後にあ・ん・な・事・が起きるなんてーーーー。


「初めまして、ユージン・クラインと申します。ポーラ・マッキニー氏ですね？」

　アパルトマンを訪ねてきた銀髪の男はポーラをも魅了する魔性の笑顔を浮かべて、そう言った。





【了】

◆2022/4 安室成桜◆