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【5】ポーラは無心する

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「貴女の下僕達はみな力を持っているでしょう。彼等が怖くて顔を出せなかったんですよ」

 パトロンの多くは公爵や侯爵などの上級貴族あっぱーくらす様だ。
 田舎の没落貴族であるポーラが勝てる相手ではない、もっとも競うつもりもないが。

「どうだか……本当は私よりもい人がいるんでなくて?」
「そんな女性いませんよ、私が人間不信なのはご存知でしょう」

「そうね、貴方は一人じゃ寝られないくせに、誰も信じない甘ったれだものね」
「手厳しいですね」

「それで?その甘えん坊が私になんの用かしら?」
 ずばり確信を訊ねられ、ポーラは苦笑いをこぼす。

「用なんてありませんよ、ただ貴女に逢いたくなって……」
「ポーラ坊や、私に嘘は通用しなくってよ」

 テレーザは婉然えんぜんと微笑むが目は狩る動物のそれで、追及の手を緩めはしない。
(本当は閨の最中に話したかったのだが……しかたない)

「実は借金をしてしまって……」

 ジャケットのポケットから出した督促状を、テレーザは奪い取る。
 そしてたったこれっぽちも払えないのかと呆れ顔になった。

「ふぅん、助けてほしいの?」
「えぇ、お願いします」

 ポーラは伏し目がちに、チラチラとテレーザを見上げる。
 子犬っぽいといわれるその表情に、母性本能をくすぐられない女性はいない。
 たとえ都一番の娼婦テレーザであってもだ。

「それなら、楽しませてもらわなくっちゃね」

 そう言うとテレーザは、手にしていたワインをポーラに浴びせかけた。
 真っ赤なワインが髪を伝い、首元のクラバットやシャツ、サマージャケットに染みを作る。

「ひどいな、僕の一張羅いっちょうらなのに」

 悲しみに顔を歪めるポーラに、今度は猫なで声で「あらあら、ごめんなさい」としなだれかかってくる。

「あとで私が新しい服を買ってあげる。だから……ね?」

 テレーザの指がシャツのボタンにかかり、真っ赤な唇が弧を描く。
 欲望に染まった毒々しい彼女の笑顔を、ポーラは愛らしい笑顔で受け止めた。


 テレーザに腕を引かれるまま、ポーラはSMルームのアイアンベッドに倒れこむ。
 彼女はポーラのトラヴァースからシャツの裾を抜き出し、胸元を露わにさせた。

 そして真っ平らの胸に舌を這わせる。
 彼女はポーラの乳首を舐めるのが好きだった。
 そこだけじゃない、美少年の全身を舐め回し自分好みに開発するのが好きな変態だ。

「……っ!」
「んふふふ、ちっちゃなおっぱい可愛い。相変わらず敏感なのね」

「誰のせいだと……」
「んふふふ、私?それなら責任とらなくちゃね」
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