【完結】ポーラ・マッキニーの華麗なる借金返済

【4】ポーラは再会する

「奥さまはポーラ様もいたくお気に入りでございます。ポーラ様がいらっしゃった翌日は、いつもより機嫌がいいんです。あたくし、奥さまに知らせてきますね」

　ポーラを逃がしてはならぬと、メイドは大急ぎで主人に知らせに走り去る。
　その後ろ姿を見送って、ポーラは「エヘヘ」と舌を出して笑った。



「上のお部屋で、お会いになるそうです」

　戻ってきたメイドは、ポーラを三階の寝室へと案内する。
　話が早くて助かる、寂しい身体を慰めてとあからさまに言われてるようなものだ。

　フロア全体が性交するためのプレイルームとなってる彼女の寝室は、何処どこでも繋がれるようにベッドが三つ、ソファーも四つ設置されており、それぞれのスペースにはテーマ毎の小物が揃えられている。

　例えば奥は普段彼女が寝起きに使ってる寝台で、四つの柱に囲まれレースのカーテンがついた、眠り心地のよさそうな場所。

　その手前はベットの周辺を鏡がついた衝立で囲んだ、鏡の間。
　天井から鏡つきのシャンデリアをさげる凝りようで、ヴァリカレー宮殿にも同様の間があるとか、ないとか。

　どの角度からも繋がる様さまが拝めて、興奮できる。
　ポーラはこのテーマが最も好みだった。

　ドアに一番近い場所はSMルーム。
　壁には拷問具の鞭が立てかけられ、その隣には壁に拘束すための鎖が垂れている。
　鉄格子を模したベッドフレームには同じく拘束具の鎖がジャラジャラとつけられ、異様さを物語っていた。

　彼女の元へ通ってくる紳士の約八割は、このSMルームの大ファンで、殴られ虐げられて喜ぶ趣向らしい。

　彼女はこの部屋の女王様。
　以前ここへきた時は、彼女とその変態紳士のプレイに無理やり参加させられ、鞭で男を殴ったり、その客の前で彼女を抱いたりしてみせた。

（敬愛する女王様が他の男に抱かれてるのを我慢して眺めて、興奮するってどんな性癖よ！？）
　ついていけなくて逃げ出して以来、ここへ来るのは随分と久しぶりだった。


「こんばんは、テレーザ。今夜も綺麗だね」
「あらあら、ポーラ・マッキニーじゃないの。お久しぶりね」

　ワイングラス片手にスケスケのランジェリー姿で現れたテレーザは、都一番の高級娼婦と言われるだけあって、息をのむほど美しい。

　薄桃の肌に添うような、漆黒の艶やかな髪。
　黒曜石色の瞳、真っ赤な唇は艶やかで、まるで黒薔薇のようだ。

　細い首に、陶器のような真っ白な肌。
　左右に膨らんだ大きな乳房、でもくびれはほそく華奢きゃしゃだ。

　男なら誰もが釘付けになるような、顔良し身体よしのいい女。
　若く瑞々しい彼女を貴族達が放っておくわけない。