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【76】虫の知らせ 〜潜む溝〜
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「准尉はご家族のことになると情緒不安定且つ支離滅裂ですよね。距離を置いてるかと思えば、言いなりになってお金を運び続けてるし」
ユージンはいつも大袈裟な物言いをする。
「言いなりになってるわけじゃないだろ。それに実家を援助するのが、何か問題か?彼女の優しさだろ」
「後ろめたさを感じてなければね。距離を置く罪滅ぼしに、金を渡し続けてるのは優しさとは言えないのでは?それにマッキニー男爵夫人が末娘との結婚を望んでいると知れば、マッキニー准尉の事だから、可愛い妹のため涙を忍んで身を引くとか糞にもならない偽善を言い出しそうですよ」
「流石にそれは……」
”ない”と言いかけて、サニーの脳裏に困ったような表情を浮かべるダニエルの姿が思い出された。
「そもそも!准尉との関係をどう説明するんですか?」
「うーーん、確かになぁ。女王陛下にまで紹介したのに、未だにディディは俺達の関係をあやふやなままにしたいみたいだし」
上司と部下。
セフレ以上、恋人未満。
未来の婚約者候補。
二人の関係を言葉にするとこの三つが妥当だが、最後のが一番いい。
マッキニー男爵夫人には是非とも“婚約者候補”として紹介してもらいたいものだ。
「それにしても、マッキニー准尉って変わってますよね。なんで殿下との関係をあやふやにしておきたいんでしょう。世間体を極度に気にするタイプでもないし、図太そうなのに」
「ディディはそんなに強くないよ。男爵と男爵夫人に“良い娘”でいる事を強制されて育ったからね。自己肯定感が低いのサ」
「その自己肯定感の低さが殿下とマッキニー准尉の間に潜む溝なんでしょうか」
「どう……だろうな」
それだけじゃない気がする。
やっぱりラスティー・マイトナーにまだ未練があるだろうか?
ボロンゴ領にいた間、ダニエルがラスティー・マイトナーに手紙を書いたのは一度きり。
隠れて会っているとの報告もない。
しかし今、彼女は独り寝の続く日々。
「……ラスティー・マイトナーが丘に上がるのは来週だったか?」
海軍人は巡視や領海護衛の目的で海上で過ごす事が多いが、半年に一度は任務が明け休暇に入る。
それを揶揄して“丘にあがる”と言うのだ。
「はい。ちょうどボロンゴ領に寄港しますよ」
「それはまた嫌ーーーーなタイミングだね」
なにやら虫の知らせがする。
「ディディの監視は続けてるよな?」
「勿論です」
「報告は毎日するように伝えてくれ。いつもと違う動きがあればすぐに知らるよう命じろ」
ユージンはちょっと呆れたような表情をしたが、すんなり「畏まりました」と承諾した。
ユージンはいつも大袈裟な物言いをする。
「言いなりになってるわけじゃないだろ。それに実家を援助するのが、何か問題か?彼女の優しさだろ」
「後ろめたさを感じてなければね。距離を置く罪滅ぼしに、金を渡し続けてるのは優しさとは言えないのでは?それにマッキニー男爵夫人が末娘との結婚を望んでいると知れば、マッキニー准尉の事だから、可愛い妹のため涙を忍んで身を引くとか糞にもならない偽善を言い出しそうですよ」
「流石にそれは……」
”ない”と言いかけて、サニーの脳裏に困ったような表情を浮かべるダニエルの姿が思い出された。
「そもそも!准尉との関係をどう説明するんですか?」
「うーーん、確かになぁ。女王陛下にまで紹介したのに、未だにディディは俺達の関係をあやふやなままにしたいみたいだし」
上司と部下。
セフレ以上、恋人未満。
未来の婚約者候補。
二人の関係を言葉にするとこの三つが妥当だが、最後のが一番いい。
マッキニー男爵夫人には是非とも“婚約者候補”として紹介してもらいたいものだ。
「それにしても、マッキニー准尉って変わってますよね。なんで殿下との関係をあやふやにしておきたいんでしょう。世間体を極度に気にするタイプでもないし、図太そうなのに」
「ディディはそんなに強くないよ。男爵と男爵夫人に“良い娘”でいる事を強制されて育ったからね。自己肯定感が低いのサ」
「その自己肯定感の低さが殿下とマッキニー准尉の間に潜む溝なんでしょうか」
「どう……だろうな」
それだけじゃない気がする。
やっぱりラスティー・マイトナーにまだ未練があるだろうか?
ボロンゴ領にいた間、ダニエルがラスティー・マイトナーに手紙を書いたのは一度きり。
隠れて会っているとの報告もない。
しかし今、彼女は独り寝の続く日々。
「……ラスティー・マイトナーが丘に上がるのは来週だったか?」
海軍人は巡視や領海護衛の目的で海上で過ごす事が多いが、半年に一度は任務が明け休暇に入る。
それを揶揄して“丘にあがる”と言うのだ。
「はい。ちょうどボロンゴ領に寄港しますよ」
「それはまた嫌ーーーーなタイミングだね」
なにやら虫の知らせがする。
「ディディの監視は続けてるよな?」
「勿論です」
「報告は毎日するように伝えてくれ。いつもと違う動きがあればすぐに知らるよう命じろ」
ユージンはちょっと呆れたような表情をしたが、すんなり「畏まりました」と承諾した。
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