女王陛下、誤解です〜ヤリチン王子が一穴主義になったのはアタシのせいじゃありません!!〜

アムロナオ

文字の大きさ
上 下
73 / 97

【73】洗脳 〜内通者に仕立て上げる〜

しおりを挟む
この手管を繰り返し、愛人へとたどり着く。

勿論、鞍替えされた女達は怒り悲しみ責めてくる。

しかし「みんな素敵な女性だから選べない、全員愛してるんだ。だからみんなで一緒に私の領地へ行こう」と言えば、渋々口を噤む。


彼女達は知っているのだ、これが現状から抜け出す大きなチャンスだと。

大金を得る為、愛人でもいいから納まるのが得策だと。



「やっと会えましたわ、伯爵様」

サニーはしなだれかかってくるティアゴ・タロッチャの愛人を抱きしめ、彼女の耳元で「私も会いたかった」と囁いた。


埃くさく薄暗い物置で、人目を避けておこなわれる逢瀬。

腕に抱かれた女は、うっとりとサニーの胸に頬を寄せてくる。


「伯爵様に会えない時間が長くて……アタシ、辛くて辛くて仕方なかったわ」

「私も貴女があの男に尽してると思うと、気が狂いそうだったよ」


「あぁ、伯爵様。教祖様に抱かれても、愛しているのは貴方様だけですわ。信じて……」

「勿論、信じてるよ」

愛と嫉妬に狂う男を演じながら女の瞳を覗きこむと、彼女は目を瞑りキスを強請った。


しかしサニーは何もせず、ただじっと女の顔を眺める。

与えるのは、此方の欲しい物を得てからだ。



キスしてくれないサニーに、彼女は不満そうな目で見上げる。

サニーは笑顔を崩さず、「粉は手に入った?」と訊ねた。


「え、えぇ……教祖様が寝入った時に一つ貰ってきたわ」

女はローブのポケットから折りたたまれた薬紙を取り出し、サニーに渡した。

「ありがとう、マリナ」


サニーはそれを自分のジャケットに仕舞い、女の頬にキスをする。

望んでいた口へのキスをはぐらかされ、マリナは不安そうな顔になった。


「どうしたんだい?」

「伯爵様は愛してると言ってくれるのに、キスはしてくれないのですね。アタシ本当に愛されているか不安で……」


金髪にそばかすが愛らしいマリナは、悲しそうに目を伏せる。

サニーは彼女の頤をとり、しっかりと視線をあわせてから揺るぎない強さで言葉を紡いだ。



「それは貴女を大切にしたいからだ。女性の貞操を守るのが紳士の務め。私はそこらの男とは違う。貴女とのことを真剣に考えているからこそ、初めてのキスは特別にしたいんだ」

「そこまで考えてくれてるなんて、嬉しい……アタシったら恥ずかしいわ。そうとも知らず伯爵様を疑ったりして」


「そんな貴女も可愛いよ」

サニーはマリナを抱き締め、ほくそ笑んだ。


こんなのただの偽善、口から出まかせ。

しかし自信満々に言い切ることで相手に疑念を抱かせず、逆に彼女が悪いように、自分が常に正しいように、洗脳していくのだ。


元々、宗教にハマり身体を差し出すくらい精神力が弱い女性。

己を肯定し救ってくれる存在に傾倒し依存する体質がある。

そこを突いて、知らず知らずの間に内通者スパイに仕立て上げるのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

あの夏の日、私は確かに恋をした

田尾風香
恋愛
夏の祭礼の終盤、私は婚約者である王子のエーリスに婚約破棄を言い渡されて、私が"精霊の愛し子"であることも「嘘だ」と断じられた。 何も言えないまま、私は国に送り返されることになり、馬車に乗ろうとした時だった。 「見つけた、カリサ」 どこかで見たことがあるような気がする男性に、私は攫われたのだった。 ***全四話。毎日投稿予定。四話だけ視点が変わります。一話当たりの文字数は多めです。一話完結の予定が、思ったより長くなってしまったため、分けています。設定は深く考えていませんので、サラッとお読み頂けると嬉しいです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...