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【68】ポーラの勘 〜テレーザの馴染み〜

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「へぇ、君もいけるクチか」

エドはニヤリと笑う。

娼館話が嫌いな男などいない、娯楽がすくないので下ネタは最高に面白い話しのネタだ。


「馴染みは?」

「馴染みってほどじゃありませんが、【ムーラン・ルージュ】のテレーザ嬢には…………可愛がってもらいました」


テレーザの名前を出した瞬間、ユージンが僅かに息を飲んだ気がした。

……なんだ?クライン執務官もテレーザ嬢を知っているのか?


ポーラは思考を巡らせた。

サバサバした性格のユージンなら隠すことなく、「私も彼女の客ですよ」と言ってきそうなものだが。


「さすがテレーザ嬢、都で一番と謳われるだけのことはありますね」

「まいったなぁ、クライン執務官と穴兄弟ですかぁ、アハハ」

なんて身も蓋もない、けれど楽しい会話できそうなのに。



……それとも言えない理由があるとか。

もしかして殿下がテレーザの馴染み?


ボロンゴ領に来る前、テレーザ嬢に金を無心に行った時。

彼女の使用人から、テレーザは本命にフラれたと教えてもらった事を思い出した。


ポーラの勘がピンときた。

ユージンの隣に腰掛けるサニーは全く表情を変えないが、間違いない。

テレーザの本命の彼は殿下に違いない。


男の自分からみても、サニーは背が高くマッチョで顔がいいと三拍子揃ってる。

おまけに財力もあり、公表はしていないが第三王子プリンスというアメージングでアンビリーバブルな肩書きつき。


それ故、女性も選り取り見取り。

あのテレーザほどの女性が本気になり、袖にされるのも頷ける。

ポーラは深く納得した。



ダニエルが殿下の目に留まったと聞いた時は素直に嬉しかったが、姉が彼に泣かされる未来は見たくない。

自然と彼女が彼にのめり込まないよう願い、互いに割り切った関係であることを望んだ。

ダニエルが彼に夢中になることはと予想できても、やはり心配である。


とはいえ彼女が誰とも真剣に交際しないのを良く思ってるわけではない。

過去に囚われずっと一人で生きていくつもりか、そろそろ姉さんも前を向くべきだ。


そう思っていた矢先に現れた王子様プリンス

彼は姉の真の王子様プリンスか、それとも彼女をボロボロにする悪魔ヤリチンか。

どっちなのか、まだポーラにはわからない。



けれど彼が姉に入れ込むのは話が別、大歓迎だ。

今回の内偵調査のように殿下の恩恵に預かれるし、爵位を変換し領地を失っても、彼の寵愛があれば食いっぱぐれないだろう。

テレーザの件を姉に口止めする代わりに、仕事や金銭援助を引き出す。

ポーラは内心ほくそ笑んだ。

おっと!そのためにも今は善いフォローをしなければ。


「でも姉さんは生真面目で誠実な面があるんですよ。約束は守るし」

「確かに」

サニーがウンウン頷いた。


「だからこそ、姉さんが残ると納得したことに驚きです。守れない約束はしない女性だから」

「へぇ、弟の貴方が言うならきっと間違いない。少しは安心できました」

ユージンは棘を引っ込め、ポーラのフォローは成功した。
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