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【62】誓い 〜それでも心だけは〜
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「どうしたの?」
「…………なんでも」
「なんでもないは、なし。我慢しないでディディの気持ちを聞かせてヨ。約束したでショ、もっとお互いのことを話すって」
「でも……ワガママは言いたくないわ」
「いいじゃん、我儘!俺、ディディのワガママ大好きだよ」
ダニエルは振り返りサニーを仰いだ。
夜明けの空みたいなブルーモメントの瞳が、星を散りばめたようにキラキラ輝いている。
リップサービスではなく、本当に彼はダニエルのワガママを楽しんでるようだった。
ーー優しいのね
ワガママを受け止めると言ってくれた人は、彼が初めてかもしれない。
入隊後、異性とは常に軽い関係しか築いてこなかった。
ダニエル自身の心の内を明かすことなく、また相手をよく知ろうともしなかった。
だから言葉にするのがちょっと怖いし、慣れてないし、苦手。
でもサニーに「お互いの事を話そう」と提案した手前、自分が壁を作るのは卑怯だ。
ダニエルはまとまらない感情をそのまま話始めた。
「不安なの……サニーは”浮気なんて、ない。そんなバカなこと”って思ってるかもしれないけど。変わらないものはないと思うの。聳え立つ山だって、毎年同じようにただそこに在るけど、雪解け水の小川が通る場所や草木の生える場所は変わってる。同じように、変わらない心なんてないわ」
かつて……ダニエルもあの人の墓前に永遠の愛を誓ったが、後悔や寂しさから一夜の快楽を求めるようになった。
それでも心だけはあの人のものだと。
サニーに出会う前なら言えたのに……。
「つまりディディは俺が浮気するんじゃないかと疑ってる、と。ん~、まぁどこから浮気になるかも人それぞれ違うしねェ……じゃあさ、こうしてジッと見つめて誘惑するのは?浮気?それとも許容範囲内?」
サニーは甘い笑顔でダニエルを見つめた。
天から射す光のような、明るく華やかな笑み。
けれど野獣の雰囲気も持ち合わせ、その瞳は燃える藍色の焔。
あんな目で見られたら、どんな女性だって一瞬で恋の炎に火がつき、コロっといってしまうだろう。
「浮気!」と言いかけて、ダニエルは冷静になるように自分に呼びかけた。
仕事で色目を使ったくらいで、「浮気だ、浮気ーーー!」とキィキィ起こるような女性ではこの先サニーとやっていけないだろう。
大人になるのよ、ダニエル・マッキニー!
「それくらいなら許容範囲だけど」
「それじゃあ……手を握る。手の甲に口付けるのは?」
グッと上がったハードルに、ダニエルは「ゔ……」と喉奥で唸った。
「…………なんでも」
「なんでもないは、なし。我慢しないでディディの気持ちを聞かせてヨ。約束したでショ、もっとお互いのことを話すって」
「でも……ワガママは言いたくないわ」
「いいじゃん、我儘!俺、ディディのワガママ大好きだよ」
ダニエルは振り返りサニーを仰いだ。
夜明けの空みたいなブルーモメントの瞳が、星を散りばめたようにキラキラ輝いている。
リップサービスではなく、本当に彼はダニエルのワガママを楽しんでるようだった。
ーー優しいのね
ワガママを受け止めると言ってくれた人は、彼が初めてかもしれない。
入隊後、異性とは常に軽い関係しか築いてこなかった。
ダニエル自身の心の内を明かすことなく、また相手をよく知ろうともしなかった。
だから言葉にするのがちょっと怖いし、慣れてないし、苦手。
でもサニーに「お互いの事を話そう」と提案した手前、自分が壁を作るのは卑怯だ。
ダニエルはまとまらない感情をそのまま話始めた。
「不安なの……サニーは”浮気なんて、ない。そんなバカなこと”って思ってるかもしれないけど。変わらないものはないと思うの。聳え立つ山だって、毎年同じようにただそこに在るけど、雪解け水の小川が通る場所や草木の生える場所は変わってる。同じように、変わらない心なんてないわ」
かつて……ダニエルもあの人の墓前に永遠の愛を誓ったが、後悔や寂しさから一夜の快楽を求めるようになった。
それでも心だけはあの人のものだと。
サニーに出会う前なら言えたのに……。
「つまりディディは俺が浮気するんじゃないかと疑ってる、と。ん~、まぁどこから浮気になるかも人それぞれ違うしねェ……じゃあさ、こうしてジッと見つめて誘惑するのは?浮気?それとも許容範囲内?」
サニーは甘い笑顔でダニエルを見つめた。
天から射す光のような、明るく華やかな笑み。
けれど野獣の雰囲気も持ち合わせ、その瞳は燃える藍色の焔。
あんな目で見られたら、どんな女性だって一瞬で恋の炎に火がつき、コロっといってしまうだろう。
「浮気!」と言いかけて、ダニエルは冷静になるように自分に呼びかけた。
仕事で色目を使ったくらいで、「浮気だ、浮気ーーー!」とキィキィ起こるような女性ではこの先サニーとやっていけないだろう。
大人になるのよ、ダニエル・マッキニー!
「それくらいなら許容範囲だけど」
「それじゃあ……手を握る。手の甲に口付けるのは?」
グッと上がったハードルに、ダニエルは「ゔ……」と喉奥で唸った。
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