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【32】慟哭 〜終わらせたいなら〜

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「他の男のもとへ行くだって?俺は寝室を共にする女性を他所の男と共有する気はないヨ」

サニーは嫉妬に駆られた表情で言った。


その様にダニエルはくらい歓びを感じる。

嫉妬束縛……そこから産まれる怒りや苦しみは、愛情がある証拠。


彼の本心はいつだって見えないけれど、熱の籠った視線や言葉、苦しむ様に嘘偽りはないんじゃないかって……期待してしまう。

明確な愛の言葉がなくとも、曖昧な関係でも、私達の想いは一緒だって。


それなのに、どうして自分は彼を攻撃して歓びを見出してるんだろう。

……羨ましかったのだ。

求められ、認められている彼に嫉妬してた。

仕事に呼ばれないのも、仲間に溶け込めないのも自分の所為なのに、サニーの所為にして八つ当たりした。


謝らなくちゃ……早く、早く。

素直に謝罪すれば、きっと許してくれる。



「はぁ……終わらせたいなら、そう言ってくれ」

しかしサニーは面倒くさそうな口調に冷酷な横顔で、無情な言葉を吐いた。


その言葉に、ダニエルは息が止まった。

心臓にナイフを突き立てられたような痛みが走り、「そんなわけない」と、咄嗟に叫びそうになる。

けど喉からは木枯らしのような掠れた呼吸音がもれるだけで、言葉が出てこなかった。


ダニエルは瞳を大きく見開き、男を凝視した。

いつかは捨てられると理解わかっているが、まだまだ先のことだと思ってた。

追いかけてくるのはいつもサニーのほうで、恋の駆け引きは自分が有利だと思い込んでいただけに、それは衝撃を通り越し慟哭どうこくだった。



先ほどとは全く違う涙が溢れ、ショックでダニエルは膝から崩れ落ちた。

「……っ、っ”、……っ、っゔ……」


それだけの価値しかないと言われたようなもの。

既に劣等感でボロボロになってるダニエルのプライドを叩き折るには十分だった。


「っく、……っ、ゔぅ……、っ、っく……」

魂が抜けた表情でさめざめと涙を流すダニエルに、サニーは慌てて駆け寄った。


「ディッ…、ディ!!ごめん、俺がそうしたいってワケじゃないヨ!浮気するって言うからサ、離れたいのかなーって」

噂通り、来るもの拒まず去る者追わず……冷たいのね。

あたしは一夜限りの関係で良かったのに、強引に関係を迫ってきたのはサニーなのに、邪魔者はアッサリ手放すんだ。


「ホントに、ホントにっ!!ディディの気持ちを確認したかっただけで、そんな真面目シリアスなやつじゃないから」

「なに……それ、っ、本気、じゃないなら、なんなの」


「ん、ごめん……俺が悪かったヨ。本当にごめん」

サニーはいつもしているようにダニエルを抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
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