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【26】出禁〜大人しく待ってなさい〜

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「殿下、絆されないでください。マッキニー准尉を執務室に入れるのはダメだって言ったでしょう」

一度は此方に流れかけた空気が、裏ボスの一言で霧散してしまう。

逆に畳み掛けられ、一瞬で勝負はついてしまった。


丸め込まれそうになっていたサニーもすっかりいつもの鷹揚としたペースに戻り、「いやぁ、あんな可愛い顔で”お願い、サニ~”とか言われたら、グラッとくるでしょ」、なんてぼやいてる。


「クライン執務官、どうしてあたしは執務室に入っちゃダメなんですか?」

諦めきれず、ダニエルはユージンにくってかかった。

実力不足は認めるが、出禁にされる理由がわからない。

サニーが警護をつける気がないなら尚更、任せてくれても良いはずだ。



「慎みのない貴女には妥当な判断だと思いますけど?」

「……え」


「ホクトベガ号内で席を外すよう指示した際!眉を顰めたり、野次馬根性丸出しで盗み聞きしようとしていたでしょう」

「それは……」


羞恥でダニエルの顔に赤みがさした。

上官の話を盗み聞きするのは、軍人としてマナー違反。


「ポーラと話し込んでいたから、マッキニー領に関することなのかと。それならあたしも関係者だから……」

「だから?」


ユージンのシルバーの睫毛がキラリと光る。

美しい顔に睨まれると凄みがあり、背筋に鳥肌が走った。



言い訳は逆効果だ。

「申し訳ありません!」

ダニエルは九十度の角度で頭を下げた。

「二度と致しませんので、お許しを!!」


親衛隊の業務が秘匿性高いこと、加えてサニーの立場から国家機密に関わる話も多く、下っ端ダニエルの耳に入れられない話が多いのは理解してる。

それを盗み聞きするなんて、内部に内通者スパイがいるようなもの。

これでは信用してもらえないのも、無理はない。


「だいたい貴女は好奇心が強すぎるんです。なんにでも興味を示して。”見ざる、聞かざる、言わざる”ができなければ、近衛隊でやってはいけませんよ」

「はい。気をつけます」


くどくど説教するユージンを、サニーが「まぁまぁ」ととりなす。

「その辺にしておけよ、ユーリ。宮殿では誰もが聞き耳たててるじゃないか。ディディも悪気があってしたことじゃないし。反省してるようだからもういいじゃない」

「ったく、殿下はマッキニー准尉に甘すぎるんだら」


サニーのフォローに、ダニエルは期待混じりで顔を上げた。

「じゃあ……」

「それとこれは別です。内偵は初期調査が最も肝心。初動を誤ると、潜入してる親衛隊のメンバーや内通者を危険に晒します。事態を把握するまでは全て極秘!大人しく待機していなさい。わかりましたか、マッキニー准尉」


「……」

「マッキニー准尉?」

「はい、承知しました」


親衛隊の任務を邪魔するわけにはいかない。

ダニエルは肩を落とし頷いた。
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