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【04】サニーという男 〜ベッドの中でおしゃべりしまショ〜

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「サニー!ちょ……なんでベッドに押し倒すのよ」

マットレスに腕をついたダニエルは咄嗟のことに目を白黒させたが、すぐに非難の声をあげた。

と同時に身体を捩り起き上がろうとしたが、男のほうが俊敏で、大きな身体がのしかかってくる。


「嘘つき、ポーラのこと教えてくれるって言ったのに」

抜け出そうと試みても、男の腕はアナコンダのようにダニエルの腰に絡みついて離れない。


「モチ教えます。ベッドの中でネ」

「なんでそうなるのよっ!」

「ディディが俺のお姫様だからデス」


「意味わかんない!」と、もがくダニエルを気にもとめず、サニーは我が物顔で尻を揉みしだく。

それどころか尻の谷間に頬を寄せ、「あぁ~、これこれ!この尻が恋しかった」と擦り擦りと頬ずりまで始めてしまった。


「変態っ!」

ダニエルは顔を赤くして、大声をあげた。

我がオリュンポス帝国の第三王子が尻フェチだなんて!

女性の尻に顔を埋めて悦ぶ変態だなんて、とてもじゃないが公にはできない。


「んん~、いい匂い」

それに臭いフェチでもあるなんて……。


「やぁん、サニーのバカ、あほ、マヌケ、ど変態、バカっ!」

ダニエルは男の頭を力の限り押し、幼稚な罵声を浴びせたが、顔をあげたサニーには全く効果ない。

逆に嬉しそうに唇の端をニヤッと引き上げた。



自信満々のワガママそうな……いや、実際ワガママなのだけれど、とにかくダニエルのモロ好みど真ん中の顔に、条件反射で胸がキュンとする。

アイリスの花を連想させる青紫の瞳に見つめられれば、脳が思考を停止し、魔法にかけられたように彼に従いたくなった。


親友でダメ男が好きなアリ・シュミットが”女は惚れた男には寛容になる”、好きな男にはどんどん許しを与えるのが女だって言っていたけれど。

その言葉の重みがしみじみわかってきた、今日この頃だ。


って、別に好きじゃないし!!と、ダニエルは自分につっこむ。

流されそうになる弱い心を叱咤し手足をバタつかせて抵抗するが、軍服のジャケットはあっという間に脱がされ、シャツのボタンに手を掛けられてしまう。

王子とは思えないほど手際よく、彼はダニエルのシャツのボタンを外し、小麦色の肌を露わにさせた。



「ったく、服を脱がせるのだけは上手いんだから」

愚痴ると、サニーはハタと手を止める。

そして至極真面目な顔で、「俺、エッチも上手でショ」と言った。


いや、うん……確かに上手いよ。

貴族にありがちな、「避妊用の蜂蜜を膣に塗り込んでおくのが令嬢の嗜み」とか言わず、毎回丁寧に膣内なかに蜂蜜を塗ってくれるし。


軍人にありがちな、「いつ死ぬかわからないから、一晩だけの関係だ。わかるよね?」とか言わず、なんならダニエルの方からそれを言いたかったが、そう言わせない無言の圧力あるし。


若い男にありがちな「セックスは二人で楽しむもの、気持ちよくなれるように努力して」、「もっとセックスに積極的になってくれ」とか言わず、前戯大好きで、いつもたっぷり全身を愛撫してくれるし。

男全般にありがちな「(愛撫はめんどくさいけど)フェラはして」とか頭腐ってんじゃね?って要求はしてこず、逆に自分がされるよりディディが気持ちよくなってるのを見るのが好きって、嬉々としてクンニしてくるし。


つまりまだまだ男性優位のこの国で、このサニーという男は客観的にみれば女性に優しく紳士的な部類に入る。

だがフェミニストかと聞かれると疑問が残る。

彼が生粋の博愛主義者で誰にでも分け隔てなく優しく冷たいのは、宮殿では有名な話だからだ。


彼の側近であるユージン・クライン執務官は、王子をこう評する。

ーー誰にでも心変わりする博愛主義者、おまけに快楽が三度の飯より大好きな享楽主義者ーー、と。
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