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【9】ポーラ・マッキニーの後悔
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その寂しそうな…悲しみの表情に、ポーラの胸は鋭く痛む。
放った言葉の矢が、跳ね返ってきた。
言ってはいけない言葉だったと、深い自己嫌悪に陥る。
「ごめん!!僕は……ねぇさんにも利点があるって言いたかったんだ」
「…………」
「本当にごめん、僕は最低な奴だよ。ねぇさんには何度も助けてもらったのに……」
肩を落とし謝罪する姿に、ダニエルは弟が哀れになった。
自分が助かる為に、なりふりかまってられないんだろう。
それほど追い詰められているのね。
マッキニー家嫡子として逃れられない鎖に縛られている彼は、どれほど窮屈だろう。
親に金をせびられていても、自由なダニエルのほうがまだマシなのかもしれない。
ダニエルはポーラが気にしすぎないように明るい声で、「謝ることないわよ!」と肩を叩いた。
「相手の望む物を交渉に使うのは、商談の手じゃない。あんたは正当な交渉をしただけ、謝ることなんてなにもないわ……ドルパ山のことは、少し考えてみる」
ダニエルは任務に戻るため、ポーラを残し客室を出た。
ドルパ山を手に入れるなら、名義はラスにしなきゃ。
ダニエルはムスッとした、岩みたいな顔の幼馴染ラスティー・マイトナーを脳裏に思い描く。
お金の問題もあるし……一度、ラスに手紙を書いておいたほうがよさそうね。
ポーラの提案はショックだけれど、冷静に考えれば悪い話ではない。
ダニエルはマイトナー家を守れ、両親に強く出れるようになる。
これまではあの土地のため、言いなりになるしかなかったのだから。
隣の客室へ戻ると、サニーは目でニコリと笑った後、すぐに仕事へ戻った。
何枚かの書類をデスクに広げ、何やら熟慮している。
真剣に仕事に打ち込む姿は初めて。
真面目にお仕事してるなんて、意外だ。
てっきりクライン執務官に任せっきりなのだと思っていた。
真一文字に唇を結んだ横顔に密かにトキメキながら、ダニエルは護衛として邪魔をしないようにしながらその場に佇み続けた。
一方、ダニエルが去った客室では、相も変わらずポーラが項垂れている。
寝たふりしながら二人の会話に耳をそば立たせていたユージンは、似た者の姉弟だと分析した。
都合よく搾取される姉、男爵家の期待を背負わされる弟。
姉弟は親から別々の毒を与えられ、正反対の悩みをもちながらも、”家”や”親”という呪縛に囚われ苦しんでいる。
そんなに家族が良いものでしょうか。
孤児で両親の温もりを知らないユージンには、ダニエルとポーラが囚われる理由が理解できない。
放った言葉の矢が、跳ね返ってきた。
言ってはいけない言葉だったと、深い自己嫌悪に陥る。
「ごめん!!僕は……ねぇさんにも利点があるって言いたかったんだ」
「…………」
「本当にごめん、僕は最低な奴だよ。ねぇさんには何度も助けてもらったのに……」
肩を落とし謝罪する姿に、ダニエルは弟が哀れになった。
自分が助かる為に、なりふりかまってられないんだろう。
それほど追い詰められているのね。
マッキニー家嫡子として逃れられない鎖に縛られている彼は、どれほど窮屈だろう。
親に金をせびられていても、自由なダニエルのほうがまだマシなのかもしれない。
ダニエルはポーラが気にしすぎないように明るい声で、「謝ることないわよ!」と肩を叩いた。
「相手の望む物を交渉に使うのは、商談の手じゃない。あんたは正当な交渉をしただけ、謝ることなんてなにもないわ……ドルパ山のことは、少し考えてみる」
ダニエルは任務に戻るため、ポーラを残し客室を出た。
ドルパ山を手に入れるなら、名義はラスにしなきゃ。
ダニエルはムスッとした、岩みたいな顔の幼馴染ラスティー・マイトナーを脳裏に思い描く。
お金の問題もあるし……一度、ラスに手紙を書いておいたほうがよさそうね。
ポーラの提案はショックだけれど、冷静に考えれば悪い話ではない。
ダニエルはマイトナー家を守れ、両親に強く出れるようになる。
これまではあの土地のため、言いなりになるしかなかったのだから。
隣の客室へ戻ると、サニーは目でニコリと笑った後、すぐに仕事へ戻った。
何枚かの書類をデスクに広げ、何やら熟慮している。
真剣に仕事に打ち込む姿は初めて。
真面目にお仕事してるなんて、意外だ。
てっきりクライン執務官に任せっきりなのだと思っていた。
真一文字に唇を結んだ横顔に密かにトキメキながら、ダニエルは護衛として邪魔をしないようにしながらその場に佇み続けた。
一方、ダニエルが去った客室では、相も変わらずポーラが項垂れている。
寝たふりしながら二人の会話に耳をそば立たせていたユージンは、似た者の姉弟だと分析した。
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姉弟は親から別々の毒を与えられ、正反対の悩みをもちながらも、”家”や”親”という呪縛に囚われ苦しんでいる。
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