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【65】結局 ② ー首の皮一枚で、繋がった?ー

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「マッキニー准尉は貴方が王子だって、今知ったんでしょう?現実と夢を混同するくらいパニックになっていたし、今の彼女には冷静な判断はできないと思うの。だから護衛として貴方の側に仕え、考える時間を与えるのがいいんじゃない?」

 床には頭を擦り付け土下座していたダニエルが、二人を交互に見上げた。
 大きな眸の中にタコイズグリーンの宝石が潤んでいる。

 追い詰められた仔ウサギのような表情に、サニーはグッときた。
 無垢な庇護欲をかき立てられる可憐な姿。

 それ以上に、彼女が心の底から近衛隊クビになるのを嫌がっているのがヒシヒシと伝わる。
 強引にコトを進めれば、彼女に生涯恨まれる可能性がある。
 ここが落としどころだとサニーは折り合いをつけた。

「彼女をそばに置きたいという、貴方の要望も満たすし……ね?」
「そうですね、わかりました」

 無理やりダニエルを辞めさせても意味はない。
 彼女のほうから辞めたいと言わせなければ。

 サニーの一世一代の宣言(プロポーズ)は、混乱した彼女には伝わらなかった。
 焦って強引に進めたのが失敗の原因だ。

 今度は二人きりで、とびきりゴージャスにロマンティクに。
 一世一代の告白(プロポーズ)を伝えよう。


「次の任務は西方の内部調査だったわねぇ」
「はい。昨夜提出した法案が通り次第、首都を立つ予定です」

 内部調査とは、女王の目を逃れ法を犯す貴族や、彼等に癒着し私服を肥やす商家やマフィア、衛兵隊の手に負えない重犯罪者などを内偵調査し検挙する仕事だ。

「今回は新興宗教・ロンド教にターゲットを当て、調べるつもりです」
「最近、西部では勢いをつけているものねぇ」

 昨夜サニーが提案したのは、ダニエルの参内だけではない。
 新興宗教を取り締まる法案も同時に出した。

 内容は信者からの過度な寄付を禁止し、同時に宗教家への増税を課すというもの。
 もともと商家に比べ宗教家の税率は低く設定されており、前者から不公平を是正してくれと嘆願があがっていたのだ。

 女王もサニーの発案に賛成してくれ、明日、議会にかけて法改正を目指す運びとなっている。

 最近、詐欺師とも宗教家ともわからぬ怪しい輩が増えたので、これが一つの抑止力になればよいのだが。
 そして内部調査で、苦しむ民を一人でも多く救わなければ。

「既に幾つかの領主はロンド教に取り込まれ、小作人達は厳しい暮らしを余儀なくされているとの報告が上がってきてます。まずは適正な領地運営がなされているか、確認いたします」

 飄々としたまま使命感に燃えるサニーに、女王陛下は淡い笑みを向けた。
 マッキニー准尉の存在が彼の癒しになることを望み、そして無事に帰えってくることを願って、「頼みますよ」と力強く言葉をかけた。
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