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【60】謁見 ーまだ夢の中?ー
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中佐に導かれ、ダニエルは女王が待つ応接室の金の扉をくぐった。
女王陛下のプライベートな空間に入れただけでも恐悦至極なのに、直接お会いできるなんて!
その場にいるだけで、ダニエルは身体が震えた。
不安と重圧まじりの緊張よりも、純粋な喜びが勝った。
走ってきたわけでもないのに、心拍数が一気に上がる。
それほど女王陛下とは尊い御方で、国民の良き母であり、偉大な王なのだ。
「おぉカイル、待っておりましたよ」
嫋やかな美声が聞こえてきた。
声を柔らかさで表現するとしたら、陛下のお声は鳥の羽のように軽やかで美しい。
まるで純白の白鳥のようで、まだ顔も上げてないのにその声だけでジーンときちゃう。
中佐が片膝をつく礼法をとったので、ダニエルも追従した。
恐れ多くて顔をあげられない。
何を聞かれるんだろう。
ちゃんとお返事できるかな……あぁ、ムリだよ、どうしたらいいのぉ~!
喉がカラカラで、口の中が乾いて仕方ない。
ダニエルは床の絨毯の模様を眺めて、なんとか正気を保った。
「で……そちらのお嬢さんがダニエル・マッキニー准尉ね」
あぁぁぁぁぁ!おっ、嬢ぉ、さぁ、んん!!
女王陛下にお嬢さんと呼んでもらえるなんてっ!
ダニエルは幸せで胸がいっぱいになり、泣きそうになった。
「マッキニー准尉、頭をあげよ。その可愛い顔をお見せなさいな」
「…………は、はい!」
夢見心地と緊張のあまり、反応が遅れてしまう。
隣の中佐が「なにしてるんだ」という雰囲気を発したので、ダニエルは我に返って顔をあげた。
子どもの頃から憧れ続けた、女王陛下は微笑みを浮かべダニエルを見下ろしていた。
国民の前では金髪のカツラと輝く王冠を装着しているが、プライベートの彼女はシンプルな装いだった。
とはいえ、首元のレースはエリマキトカゲのように盛り上がり、頭にはユニコーンの角のような髪飾りがついてる。
その先には薄紫のレースベールが縫い付けられており、首を傾けるとレースが華やかに揺れた。
ベールと同じ色のドレス。
胸元の刺繍こそ精緻なれど、全体的にシンプルで無駄がない。
彼女の思想信念を表すようだ。
目元口元に刻まれた皺は深く、栄光と闇が混在している。
しかしとても五十代とは思えないような肌艶で、優艶な面立ちをしていた。
菫色の瞳には溢れんばかりの生命力が満ち、眼差しは大空を羽ばたく鷹のように鋭い。
それでいて慈愛に満ちた雰囲気も持ち合わせており、想像通り、それ以上に神々しさを感じさせる御方だった。
「ーーーーっ!?」
だがその隣で負けず劣らずオーラを放つ色男を視界にとらえ、恐れ多くも陛下の前でダニエルは腰を抜かした。
女王陛下の存在を吹き飛ばす爆弾が、そこに在ったのだ。
さっ、さ、ささ、サニーーーー!?!?!?
ダニエルは目と顎をこれでもかというほど開いた。
昨夜、都会の遊び人風だったサニーは今や式典に参加する王子様みたいだ。
親衛隊の紺の軍服、だが前身頃は王族しか許されていないナポレオンジャケット仕様になっている。
長い足を組む白いトラヴァースが、大海を進む帆船の帆のように眩しい。
見間違いかと、ダニエルは高速で瞬きを繰り返す。
そっくりさん!?いや、でもサニーだよね。
顔も髪も身体もそっくり……仕草だけはいつもと違うけど。
でもあの我儘で自信たっぷりなムカつく笑顔は、絶対彼だ!
記憶の中のサニーと目の前の男性は、容姿に寸分の違いもない。
頭がおかしくなったのかと、ダニエルは自分を疑った。
だって、彼がここにいるわけない。
女王陛下と優雅にお茶を飲んでるはずないじゃない。
まだ夢を見ているんだろうか。
そもそもダニエルが女王陛下に呼び出されるなんてあり得ない。
これが全て夢なら、納得がいく。
でも、なんて精巧な夢なの。
背後には軍事演習で遠目に見た、帝国軍大将ダウニー・コーカス閣下が鮮明なお姿で佇んでいる。
閣下だけでなく、視覚に入ってくる情報すべてが夢とは思えないほどリアルだ。
室内には穏やかなハープの音色が響き、臨む庭園からは薔薇の香りと鳥の囀りが聞こえてくる。
聴覚も嗅覚も……床についた手に感じる絨毯の感触も全てがおそろしいほど鮮明なのに、これが夢だなんて。
女王陛下のプライベートな空間に入れただけでも恐悦至極なのに、直接お会いできるなんて!
その場にいるだけで、ダニエルは身体が震えた。
不安と重圧まじりの緊張よりも、純粋な喜びが勝った。
走ってきたわけでもないのに、心拍数が一気に上がる。
それほど女王陛下とは尊い御方で、国民の良き母であり、偉大な王なのだ。
「おぉカイル、待っておりましたよ」
嫋やかな美声が聞こえてきた。
声を柔らかさで表現するとしたら、陛下のお声は鳥の羽のように軽やかで美しい。
まるで純白の白鳥のようで、まだ顔も上げてないのにその声だけでジーンときちゃう。
中佐が片膝をつく礼法をとったので、ダニエルも追従した。
恐れ多くて顔をあげられない。
何を聞かれるんだろう。
ちゃんとお返事できるかな……あぁ、ムリだよ、どうしたらいいのぉ~!
喉がカラカラで、口の中が乾いて仕方ない。
ダニエルは床の絨毯の模様を眺めて、なんとか正気を保った。
「で……そちらのお嬢さんがダニエル・マッキニー准尉ね」
あぁぁぁぁぁ!おっ、嬢ぉ、さぁ、んん!!
女王陛下にお嬢さんと呼んでもらえるなんてっ!
ダニエルは幸せで胸がいっぱいになり、泣きそうになった。
「マッキニー准尉、頭をあげよ。その可愛い顔をお見せなさいな」
「…………は、はい!」
夢見心地と緊張のあまり、反応が遅れてしまう。
隣の中佐が「なにしてるんだ」という雰囲気を発したので、ダニエルは我に返って顔をあげた。
子どもの頃から憧れ続けた、女王陛下は微笑みを浮かべダニエルを見下ろしていた。
国民の前では金髪のカツラと輝く王冠を装着しているが、プライベートの彼女はシンプルな装いだった。
とはいえ、首元のレースはエリマキトカゲのように盛り上がり、頭にはユニコーンの角のような髪飾りがついてる。
その先には薄紫のレースベールが縫い付けられており、首を傾けるとレースが華やかに揺れた。
ベールと同じ色のドレス。
胸元の刺繍こそ精緻なれど、全体的にシンプルで無駄がない。
彼女の思想信念を表すようだ。
目元口元に刻まれた皺は深く、栄光と闇が混在している。
しかしとても五十代とは思えないような肌艶で、優艶な面立ちをしていた。
菫色の瞳には溢れんばかりの生命力が満ち、眼差しは大空を羽ばたく鷹のように鋭い。
それでいて慈愛に満ちた雰囲気も持ち合わせており、想像通り、それ以上に神々しさを感じさせる御方だった。
「ーーーーっ!?」
だがその隣で負けず劣らずオーラを放つ色男を視界にとらえ、恐れ多くも陛下の前でダニエルは腰を抜かした。
女王陛下の存在を吹き飛ばす爆弾が、そこに在ったのだ。
さっ、さ、ささ、サニーーーー!?!?!?
ダニエルは目と顎をこれでもかというほど開いた。
昨夜、都会の遊び人風だったサニーは今や式典に参加する王子様みたいだ。
親衛隊の紺の軍服、だが前身頃は王族しか許されていないナポレオンジャケット仕様になっている。
長い足を組む白いトラヴァースが、大海を進む帆船の帆のように眩しい。
見間違いかと、ダニエルは高速で瞬きを繰り返す。
そっくりさん!?いや、でもサニーだよね。
顔も髪も身体もそっくり……仕草だけはいつもと違うけど。
でもあの我儘で自信たっぷりなムカつく笑顔は、絶対彼だ!
記憶の中のサニーと目の前の男性は、容姿に寸分の違いもない。
頭がおかしくなったのかと、ダニエルは自分を疑った。
だって、彼がここにいるわけない。
女王陛下と優雅にお茶を飲んでるはずないじゃない。
まだ夢を見ているんだろうか。
そもそもダニエルが女王陛下に呼び出されるなんてあり得ない。
これが全て夢なら、納得がいく。
でも、なんて精巧な夢なの。
背後には軍事演習で遠目に見た、帝国軍大将ダウニー・コーカス閣下が鮮明なお姿で佇んでいる。
閣下だけでなく、視覚に入ってくる情報すべてが夢とは思えないほどリアルだ。
室内には穏やかなハープの音色が響き、臨む庭園からは薔薇の香りと鳥の囀りが聞こえてくる。
聴覚も嗅覚も……床についた手に感じる絨毯の感触も全てがおそろしいほど鮮明なのに、これが夢だなんて。
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