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【57】ガッカリ ② ーこれってヤり捨て!?ー
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ホセが銀の蓋(クローシュ)を開くと、中には手紙が。
「此方、開封してもよろしいでしょうか」
「あ……はい」
手を伸ばしかけて、ダニエルは慌てて引っ込める。
貴族だと手紙一つでも家令が開封するが、ダニエルは貧乏貴族令嬢。
家令など居たことなく、いつも自分で開けていたのだ。
ホセが銀のペーパーナイフでお上品に開封するのを横目に、ペーパーナイフなんか使ったことないよ!とダニエルは恐縮してしまう。
アリャーリャ村の高級ヴィラは田舎特有の緩さがあったが、ここは格式張っており、場違いであると嫌でも感じてしまう。
ダニエルは居心地悪く視線を彷徨わせた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
恭しく差し出された手紙を、ダニエルも小さくなって受け取る。
「『最高級の花風呂を楽しんで…愛をこめて。追伸、すぐに会えるよ、俺のお姫様』……って、なによ!」
たった二行の言葉にダニエルはガッカリし、それから怒りが湧いてきた。
ヤったら、翌朝は放置ですか。
また明日とか言っておきながら、いないじゃない!!
ムカムカしたらお腹が空いてきた。
それを察したホセが「朝食をどうぞ」とダイニングテーブルへ促す。
ダニエルは裾の長いガウンを引きずり、椅子に着いた。
「当ホテルの料理長自慢のパンでございます。前菜はニシンのマリネ、チーズとアボガドのピンチョス、オレンジと人参のラペでございます。メインは鹿肉ソテー赤ワイン煮込みとサーモンとムール貝のポワレでございます」
勤め人らしくホセは完璧な給仕と説明をするが、怒れるダニエルの頭には入ってこない。
ふーんだ!これだから遊び人は信用ならないのよ。
期待させるような言葉だけ吐いて、結局、口だけなんだから。
閨での言葉は本心じゃない、特にああいう遊び人にとっては。
理解していたはずなのに、期待してドキドキワクワクしていた自分にも腹がたつ。
此方は自分ルールを破って、抱かれてあげたのよ。
もうちょっと余韻とかあってもいいんじゃない!?
ダニエルの怒りのゲージが上昇する。
一人で目覚めるベッドの寒々しいこと。
一人で食べる朝食の腹立たしいこと。
勝手に睡眠薬で眠らせておいて、説明もなしに消えるとか……ないわー、本当にナイ!
セックスしたら、もう用済みってワケ!?
っていうか、これってヤり捨て!?
このあたしをヤリ捨てするなんて、許せないっ!!
自分だってアリャーリャ村では黙って彼の前から消えたことをすっかり忘れて、ダニエルは怒りをぶつけるように朝食を堪能した。
「此方、開封してもよろしいでしょうか」
「あ……はい」
手を伸ばしかけて、ダニエルは慌てて引っ込める。
貴族だと手紙一つでも家令が開封するが、ダニエルは貧乏貴族令嬢。
家令など居たことなく、いつも自分で開けていたのだ。
ホセが銀のペーパーナイフでお上品に開封するのを横目に、ペーパーナイフなんか使ったことないよ!とダニエルは恐縮してしまう。
アリャーリャ村の高級ヴィラは田舎特有の緩さがあったが、ここは格式張っており、場違いであると嫌でも感じてしまう。
ダニエルは居心地悪く視線を彷徨わせた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
恭しく差し出された手紙を、ダニエルも小さくなって受け取る。
「『最高級の花風呂を楽しんで…愛をこめて。追伸、すぐに会えるよ、俺のお姫様』……って、なによ!」
たった二行の言葉にダニエルはガッカリし、それから怒りが湧いてきた。
ヤったら、翌朝は放置ですか。
また明日とか言っておきながら、いないじゃない!!
ムカムカしたらお腹が空いてきた。
それを察したホセが「朝食をどうぞ」とダイニングテーブルへ促す。
ダニエルは裾の長いガウンを引きずり、椅子に着いた。
「当ホテルの料理長自慢のパンでございます。前菜はニシンのマリネ、チーズとアボガドのピンチョス、オレンジと人参のラペでございます。メインは鹿肉ソテー赤ワイン煮込みとサーモンとムール貝のポワレでございます」
勤め人らしくホセは完璧な給仕と説明をするが、怒れるダニエルの頭には入ってこない。
ふーんだ!これだから遊び人は信用ならないのよ。
期待させるような言葉だけ吐いて、結局、口だけなんだから。
閨での言葉は本心じゃない、特にああいう遊び人にとっては。
理解していたはずなのに、期待してドキドキワクワクしていた自分にも腹がたつ。
此方は自分ルールを破って、抱かれてあげたのよ。
もうちょっと余韻とかあってもいいんじゃない!?
ダニエルの怒りのゲージが上昇する。
一人で目覚めるベッドの寒々しいこと。
一人で食べる朝食の腹立たしいこと。
勝手に睡眠薬で眠らせておいて、説明もなしに消えるとか……ないわー、本当にナイ!
セックスしたら、もう用済みってワケ!?
っていうか、これってヤり捨て!?
このあたしをヤリ捨てするなんて、許せないっ!!
自分だってアリャーリャ村では黙って彼の前から消えたことをすっかり忘れて、ダニエルは怒りをぶつけるように朝食を堪能した。
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