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【57】ガッカリ ① ーこれってヤり捨て!?ー
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ベージュの髪をねかせた初老の男性が待ち構えており、ダニエルは目を瞬かせた。
「……ぁ、ぁの……」
「おはようございます」
「「おはようございます」」
執事らしき男性と、メイド服を着た二人の侍女が一斉に頭を下げる。
サニー以外の人がいるなんて予想外で、ダニエルは面食らった。
「お、おはようございます」
「この度は、当ホテルをご利用くださり、誠にありがとうございます。私はこの客室付きの執事ホセでございます」
「はぁ……」
「後ろの二人は客室付きの侍女。何かあれば、なんなりとお申し付けください」
「はぁ……」
彼等が何者かわかったところで、ダニエルは青ざめた。
寝室で寝こけておいて申し訳ないが、どうして自分がここにいるのか、全くわからない。
たぶんここは首都でも一、二を争う高級ホテルだろう。
宮殿には負けるが、ゴシック調で統一された豪奢な室内。
天井画、シャンデリア、壁紙にいたるまで、最高級の調度品で満たされている。
大人数で腰掛けても余りそうな巨大なソファに、真っ赤な絨毯。
同じ色の薔薇が飾られ、天然の黒色大理石でできた暖炉やダイニングテーブルは差し込む朝の陽射しを浴びてキラッと輝いている。
見たことも泊まったこともないような、豪華なスウィートルーム。
しがない貧乏軍人が泊まる場所じゃない。
それこそ貴族様が定宿にするような部屋。
それなのに、ダニエルは持ち金もほとんど持ってない。
「あの…あたし、すみません!!手持ちが少なくて……」
ダニエルはガウンを握り締め、頭を下げた。
恥ずかしくて顔から火が出そうだけれど、無線宿泊は罪。
なんとか事情を理解してもらわねば、衛兵隊に突き出されかねない。
「宿泊代はお幾らですか?友人に借りに行ってもいいですか?」
週末は銀行も開いてない。
足りないお金はアリとセレーナに貸してもらうしかないだろう。
二人からお金を借りることになるなんて……ダニエルは情けなさで拳を握った。
「いえ。宿代ならサニー様がお支払い済みですのでご安心ください」
「さ、サニーが?」
「はい」
ようやく彼の名前が出来てきて、ダニエルは少しホッとした。
……この部屋を借りれるって、本当にサニーは何者なの!?
それに当の本人の姿はない。
「あの、彼はどこに?」
「サニー様はご用事があるとのことで、先にお発ちになりました……お手紙を預かっております」
執事ホセがメイドに目配せをすると、銀のトレイが出てきた。
レストランでウェイターが目玉料理を運んでくる時に目にする、あれだ。
いつもならどんな料理が出てくるんだろうとワクワクするが、こんな状況だと身構えてしまう。
「……ぁ、ぁの……」
「おはようございます」
「「おはようございます」」
執事らしき男性と、メイド服を着た二人の侍女が一斉に頭を下げる。
サニー以外の人がいるなんて予想外で、ダニエルは面食らった。
「お、おはようございます」
「この度は、当ホテルをご利用くださり、誠にありがとうございます。私はこの客室付きの執事ホセでございます」
「はぁ……」
「後ろの二人は客室付きの侍女。何かあれば、なんなりとお申し付けください」
「はぁ……」
彼等が何者かわかったところで、ダニエルは青ざめた。
寝室で寝こけておいて申し訳ないが、どうして自分がここにいるのか、全くわからない。
たぶんここは首都でも一、二を争う高級ホテルだろう。
宮殿には負けるが、ゴシック調で統一された豪奢な室内。
天井画、シャンデリア、壁紙にいたるまで、最高級の調度品で満たされている。
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同じ色の薔薇が飾られ、天然の黒色大理石でできた暖炉やダイニングテーブルは差し込む朝の陽射しを浴びてキラッと輝いている。
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それなのに、ダニエルは持ち金もほとんど持ってない。
「あの…あたし、すみません!!手持ちが少なくて……」
ダニエルはガウンを握り締め、頭を下げた。
恥ずかしくて顔から火が出そうだけれど、無線宿泊は罪。
なんとか事情を理解してもらわねば、衛兵隊に突き出されかねない。
「宿泊代はお幾らですか?友人に借りに行ってもいいですか?」
週末は銀行も開いてない。
足りないお金はアリとセレーナに貸してもらうしかないだろう。
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「いえ。宿代ならサニー様がお支払い済みですのでご安心ください」
「さ、サニーが?」
「はい」
ようやく彼の名前が出来てきて、ダニエルは少しホッとした。
……この部屋を借りれるって、本当にサニーは何者なの!?
それに当の本人の姿はない。
「あの、彼はどこに?」
「サニー様はご用事があるとのことで、先にお発ちになりました……お手紙を預かっております」
執事ホセがメイドに目配せをすると、銀のトレイが出てきた。
レストランでウェイターが目玉料理を運んでくる時に目にする、あれだ。
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