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【26】出航 ② ー最後のプレゼントー
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パンツを履き、サラシを巻いて、ジャンパースカートを羽織る。
その上からコルセットの紐をとめ、ハイヒール片手に音をたてないよう忍び足で部屋をでた。
なんでこんな泥棒みたいな真似を!と思ったが、なんとなくこれ以上サニーと関りたくなかった。
彼のあのアイリスの花のような瞳を見たくない、見つめられたくない。
ダニエルは白み初めた空の下、高級ヴィラを抜け出した。
そこからは出航まで、体力と時間との勝負だ。
裸足で石畳の坂を下る。
途中、ダニエルに気づいた村の人達から、好奇の視線を向けられた。
明け方から、露出度高めの服着て裸足で歩くうら若き女性がいたら、なにかあったんじゃ?と怪しむよね。
しかし男性に絡まれずに済んだのは幸いだった。
安全に宿まで辿り着き、ほっと息をつく……間も無く水を汲みに行き、身体を清める。
この作業がまた辛かった。
水桶を担いで三階まで往復して、身体中がギシギシ痛む。
熱病にかかったかのように、身体が熱い。
だがやるしかない。
今風呂に入らなければ、今後、二日以上風呂に入るタイミングはなくなる。
ダニエルは歯を食いしばって風呂に入った。
それから用意してあったナップザックを背負い、チェックアウトに向かう。
「またきてね!必ず来ます!」的なお決まりのやり取りを交わし、村はずれの軍港へと急いだ。
時間が知らせる教会の鐘の音が、朝靄漂う村内に響き渡る。
「あぁぁ、乗り遅れるー」
ダニエルは再び自身に鞭をうち、なんとか出航に間に合った。
チケット代わりにドッグタグを提示し、帆船の看板に乗り込む。
ダニエルが乗船してしばらくすると、船はゆっくり風にのって動き始めた。
港とその背後に広がる家々、緑豊かな山が遠ざかっていく。
ありがとう、アリャーリャ村!
のんびりした、素敵な島だった。
反対側の看板へ行くと、陽が昇るの前の太陽が水平線を薄っすら橙色に染めいていた。
海風がダニエルの頬を通りすぎ、結わえた髪を靡かせる。
早起きの鴎(カモメ)達が、頭上でアゥアゥと鳴いていた。
気持ちのいい朝!いい出航日和だ!
開放感にダニエルは大きく深呼吸する。
ふいに天を見上げると、雲ひとつない澄んだ空を青紫色の光が包んでいた。
サニーの瞳の色だ。
懐かしいような、切ないような……恋しさがこみ上げてくる。
彼からの……最後のプレゼントだろうか。
そう思うと心が強く軋み、喉の奥からこみ上げてくるものがあった。
ダニエルは無意識に唇を噛み、感傷的になるのを堪えた。
その上からコルセットの紐をとめ、ハイヒール片手に音をたてないよう忍び足で部屋をでた。
なんでこんな泥棒みたいな真似を!と思ったが、なんとなくこれ以上サニーと関りたくなかった。
彼のあのアイリスの花のような瞳を見たくない、見つめられたくない。
ダニエルは白み初めた空の下、高級ヴィラを抜け出した。
そこからは出航まで、体力と時間との勝負だ。
裸足で石畳の坂を下る。
途中、ダニエルに気づいた村の人達から、好奇の視線を向けられた。
明け方から、露出度高めの服着て裸足で歩くうら若き女性がいたら、なにかあったんじゃ?と怪しむよね。
しかし男性に絡まれずに済んだのは幸いだった。
安全に宿まで辿り着き、ほっと息をつく……間も無く水を汲みに行き、身体を清める。
この作業がまた辛かった。
水桶を担いで三階まで往復して、身体中がギシギシ痛む。
熱病にかかったかのように、身体が熱い。
だがやるしかない。
今風呂に入らなければ、今後、二日以上風呂に入るタイミングはなくなる。
ダニエルは歯を食いしばって風呂に入った。
それから用意してあったナップザックを背負い、チェックアウトに向かう。
「またきてね!必ず来ます!」的なお決まりのやり取りを交わし、村はずれの軍港へと急いだ。
時間が知らせる教会の鐘の音が、朝靄漂う村内に響き渡る。
「あぁぁ、乗り遅れるー」
ダニエルは再び自身に鞭をうち、なんとか出航に間に合った。
チケット代わりにドッグタグを提示し、帆船の看板に乗り込む。
ダニエルが乗船してしばらくすると、船はゆっくり風にのって動き始めた。
港とその背後に広がる家々、緑豊かな山が遠ざかっていく。
ありがとう、アリャーリャ村!
のんびりした、素敵な島だった。
反対側の看板へ行くと、陽が昇るの前の太陽が水平線を薄っすら橙色に染めいていた。
海風がダニエルの頬を通りすぎ、結わえた髪を靡かせる。
早起きの鴎(カモメ)達が、頭上でアゥアゥと鳴いていた。
気持ちのいい朝!いい出航日和だ!
開放感にダニエルは大きく深呼吸する。
ふいに天を見上げると、雲ひとつない澄んだ空を青紫色の光が包んでいた。
サニーの瞳の色だ。
懐かしいような、切ないような……恋しさがこみ上げてくる。
彼からの……最後のプレゼントだろうか。
そう思うと心が強く軋み、喉の奥からこみ上げてくるものがあった。
ダニエルは無意識に唇を噛み、感傷的になるのを堪えた。
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