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【06】タイムリミット ② ー休暇終了のお知らせですー

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  アリャーリャ村での最後の夜も、いつものようにあの酒場へ足を運んだ。
 明日の早朝、軍船でこの島を出る手筈になっている。
 つまりサニーを落とすには、今夜しかチャンスはないのである。

 気合を入れ、持っている服の中で一番露出が高い、胸元が大きく開いたすけすけのブラウスを着た。
 谷間が強調され、ダニエルのロケットのようなおっぱいに誰もが鼻の下を伸ばす。

 それらを無視して、早く口説いて!とサニーへ視線を送る。
 通じたのか、いつもよりもずっと早くサニーが話しかけてきた。

「コンバンワ。何飲んでるの?」

 彼は今日も息をのむほどかっこいい。

「……ブランデー」
「へぇ、ブランデーが好きならあの銘柄も美味しいよ。一杯ご馳走させて」

 酒、音楽、料理、近くの遊び場など、彼との会話は実に面白い。
 どこで学んだのか博識で、色んな事を教えてくれる。

 でも決して彼自身の事を明かさない。
 そのずる賢さと、微妙なラインでプライベートに踏み込んでこないバランス感覚に、ダニエルは舌を巻いた。

 ちゃんと一夜の遊びだってわきまえてるのよね。
 遊びの線引きをする姿勢に好感度ばくあがり。
 お互い本気じゃありません、ってね。


「……なんかあった?」
「え?」
「んー、なんかいつもより元気ないように見えるから」

 ゔ~ん!ダニエルは心の中で快感に震えた。
 こういうところが、この男の憎いところだ。

 遊びの関係でも、僅かな心の機微きびに気づいてくれる。
 決して粗雑に扱ったりしない。
 優しい言葉をかけ、自分が特別な女の子だと思わせてくれる。
 この洞察力と見せかけの優しさで、どれほどの女性を堕としたのだろう。


 よし、逆にメロメロにしてやる!
 ダニエルがニッコリ微笑めば、男は野獣のような欲望を秘めた眼差しを返す。
 二人の間に、濃密な情欲の火花が散った。

 もういいよね?食べちゃっても。
 ダニエルは会話の途中にも関わらず、奢ってもらったグラスを飲み干した。
 そしてコツコツとハイヒールを鳴らして出口へと歩き出す。

 背後から「え…」と戸惑うサニーの声が聞こえた。
 いつもならこれでバイバイだが、今日は振り返り”追って来い”というように再度微笑む。

 サニーは僅かに目を見開き、すぐに口角をひきあげ、悪い男の顔でニヤッと笑った。


追ってきたサニーは、磁石みたいにダニエルの背後へくっつく。
そして「どこへ行くの?」と妖しく囁いた。

ダニエルは振り返るように顔を上げ、彼の顎へと指先を伸ばす。
顎髭に触りながら「二人きりになれる場所へ連れてって」と囁き返す。

するとサニーの瞳の奥は蒼炎が如く燃え上がる。
冷静さを保ったまま欲望で心を燃やす様に、ダニエルの身も心も焦げてしまいそうだ。

ようやく彼を手に入れられた!!
ダニエルは嬉しくて、歓喜で舞い上がった。
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