【完結】女王陛下、クビだけはご勘弁を 〜「できちゃった。責任とって」って、ソイツはヤリチン王子。できるはずがありません!!〜

アムロナオ

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【27】帰宅 ② ー我が家が一番ー

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 女王陛下のお膝元、首都セーレスは大帝国の名に恥じぬ活気溢れた街だ。
 ヴァリカレー宮殿から一直線に続く凱旋門、市民広場。
 それらを中心に議事堂や市庁舎軍庁舎が続き、帝国銀行、帝国病院など公共機関が立ち並ぶ。

 その周囲を東西南北、蜘蛛の巣を張り巡らせたように大通りが走り、隙間を背の高い家々アパルトメントが積み木のようにはめ込まれている。

 昼間は途切れることなく馬車と人が行き交い、夜は街灯の灯りの下、眠ることなく饗宴にふける。

 領民全て顔見知りで、噂が風のように広がるド田舎から出てきたダニエルにとっては、日々刹那的に過ぎていくこの街が心地よく感じたものだ。


 金貨を渡して馬車を降り、裏門で仲間の衛兵達にチェックを受ける。
 大勢に「休暇はあと一週間あるだろ?」と言われ、ダニエルは苦笑いするしかなかった。
 軍内部は田舎と大差ない、つまりプライベートが筒抜け。


 近衛隊の宿舎は二箇所あり、男性用は宮殿の外れ、裏門から五分の場所にあるが、女性用は宮殿と裏門の中間地点、徒歩十五分の場所にある。
 そこまでは等間隔に銀杏が植えられた並木道が続く。
 その通りは、秋には黄色い紅葉のカーテンを織り成し、それは美しいのだ。

 秋の紅葉もいいが、夏のこの時期、銀杏の木々は青葉を陽に輝かせ生命力に溢れている。
 ダニエルは瑞々しい若葉の匂いを胸いっぱいに吸い込み、心地よい鳥の囀りに耳を傾けた。

 その並木道を抜けると、使用人用の宿舎が見えてくる。
 五階建ての屋敷が三棟並び、ここは宮殿に勤める侍女、料理人、使用人達が一同に共同生活を送る女子寮となっている。


 ダニエルはその中の一棟のエントランスをくぐり、最上階までかけ登った。
 丸二日、寝て過ごしたので体力はかなり回復している。
 丈夫な自分に感謝ね。

 五階の廊下に辿りつくと、角部屋に鍵を差し込む。
 ドアノブを回すと、住み慣れた我が家が広がりホッとした。

 ベッドと勉強机、椅子、ハンガーラックが、其々それぞれ二組。
 左右対称になるように並べられ、間には間仕切りの衝立ついたて

 キッチン、トイレ、シャワーは共同だが、それでも毎日寝起きしていた部屋は、少し離れただけで懐かしく感じる。

「んあぁぁ!やっぱり我が家が一番だなぁ」

 自分のベッドにダイブすると、仄かに洗剤の香りがした。
 セレーナが気を利かせて、帰ってくるダニエルのためにシーツを洗ってくれたのだろう。

 彼女も仕事で大変だったはずなのに……セレーナたん、優しい!結婚したい!

「よっし!セレーナのために夕飯でも用意するか!」

 このままだと、ゴロゴロ時間を浪費してしまう。
 ダニエルは掃除洗濯を済ませ、手早くポトフを作った。

 貴族令嬢と言っても、十五歳から家を出て軍に入れば、身の回りの事は完璧にこなせるようになる。
 レストランに出てくるような豪華な料理は出せないけど、スープくらいならお手のものだ。
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