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【54】感情の欠片 ① ー身体と心に鍵をかけてー

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 サニーはダニエルを持ち上げたままクルリと反転し、背中を壁に預け、腰を落とし地面に胡座をかいて座り込んだ。
 ダニエルは挿入はいったまま彼に跨り、膝を折り畳み地面につく。

「……っんぅ!、っ、っぁ」

 身体の中心に肉棒が深く入り込み、またもグン!と膣奥を突き上げて止まった。
 深い圧迫感と疼く快感に、ダニエルは男のシャツを掻きむしる。

 絶頂に行く手前で、ずっと止められている感じ。
 あと少し何かが加われば、きっとあっけなくダニエルは高みへ飛べるだろう。


「ディディ、俺のお姫様……大丈夫?痛くない?」

 サニーは下からへりくだるように訊ねてくる。
 ダニエルの身体を好き勝手しておきながら、クゥーンと鳴く犬のような顔をするのがズルい。

「この体勢、膣奥まではいってくる……」
「キツイ?……ごめんな。キミを土埃まみれにしたくないから。俺の尻なら全然いいんだけどさ」

 男の優しさに、キュンとする。
 ダニエルはサニーの肩に甘えるように額を埋めた。

「はぁぁ、やっぱりコッチがいいネ。駅弁もいいけど……」

 サニーは拒絶されなかった安堵を滲ませつつ、ダニエルをギュッと抱きしめる。

 箒みたいに膨らんだ髪が、彼の腕に潰されてモフっとしぼんだ。
 その爆発した毛量を楽しむように、サニーは指先で髪を梳いた。


髪に触れたかった」
 そう言ってこめかみに唇が触れる。

キミのそばに行きたかったよ」
 そう言って、サニーは鼻先をダニエルの頬や鼻に擦り合わせる。

キミを見ていた……キミは魅力的な女性だから、他の男にとられるんじゃないかって不安なんデス」

 ハッとして見上げと、サニーは真摯な眼差しでダニエルを見つめていた。

 コントロールを失った彼の心。
 その感情の欠片を手渡すように、気持ちを言葉にしてくれる。

 ふいに得体の知れないもので胸の奥深いところを揺さぶられたような切なさが、あふれてきた。


 ダニエルの感情の欠片は、涙となって流れ落ちる。
 サニーはその雫を唇で吸い取った。

 傷を舐め合う獣のように、舌で涙の跡を舐められる。
 フニ、フニと柔らかな唇が頬に当たり、トゲトゲになった心が丸くなる。

 サニーはダニエルの唇をそっと自分の唇で包んだ。
 チュッ、チュッとどちらからともなく音を立て、それぞれの唇を啄む。

 身体だけじゃなく、唇も、心までも抱き締められているみたいだ。
 荒ぶる感情が一転、激しい欲望へと変えられていく。
 愛しい者を求めるように、ダニエルは自ら首を傾け、そっと唇を吸い返した。
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