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【46】狂気 ① ー骨の髄まで搾り尽くしてやろうー

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「あぁ、ヤダヤダ!これだから宮殿はさぁ。空気がよどんでんのよ!俺はどこで心を休めればいいんだ……ディディのおっぱいに顔を埋めてお尻を揉み揉みすれば、この荒んだ心が癒されるんだけどなぁ」

「いつまでもうじうじストーカーしているのがダメじゃないんですか?」
 ユージンは歯に衣着せず、ハッキリ物を言う。

「そろそろがつんとキメたほうがいいカネ?」
「何度か彼女の前に姿を現して、反応をみたんですよね。どうでしたか?」

「あぁ、俺を見つけたら飛んでくるよ。いつも隠し部屋に逃げるから、絶対にみつからないんだけどさ。幽霊でもみたかのように、青ざめて怯えるのが無茶苦茶かわいいんだ」

「彼女は殿下を見つけて喜んでいるんですか?」
「……いや、どっちかっつーと、嫌なもん見つけちまったって感じかな」

「それ望み薄いじゃないですか!」
「そうだよ、だからウジウジしてんじゃねーか」

「もう権力と金で攻めましょうよ。女王陛下に頼んで、一日だけ陛下付きにさせてやるとか、どうでしょうか。そのあと軍を辞めてもらう!ね、いい案でしょ」
「……あの人に頼み事したら、後が怖いじゃん?」

「そりゃあ倍返しで面倒事を吹っかけられるでしょうが、束の間の癒しが手に入るんだから、いいじゃないですか」
「……そうネー。そうだ、男の方は何かわかったか?」


「勿論です」とユージンは尖った鼻先を得意げに上下させる。
 彼がこのような表情をするのは、よほど自信がある時だ。

「彼女はある男のために、学資ローンを組んでおります。名前はラスティ・マイトナー。帝国海軍第三師団第五艦隊所属、階級は伍長です。彼の軍学校の学費をマッキニー准尉が払っています」

「なるほど、健気な事だな。愛する男のために学費を肩代わりか。二人の関係は?」
「幼馴染です。ラスティ・マイトナーの両親がマッキニー男爵家の使用人で、二人は幼少より一緒に育ったとか」

「家族は知っているのか?」
「いいえ。そもそもマッキニー准尉は帝国軍入団の際、家族の反対を受け勘当されてます。彼女が学費を肩代わりしていることは、マイトナー伍長と二人だけの秘密でしょう」

「ふぅん、勘当されたから一般応募の三等兵スタートだったのか」
「左様でございます」

「だが彼女の家族は金の無心にくるんだろう?」
「はい、父親のシシェック・マッキニー男爵がロンド教という新興宗教にはまり金を貢いでいるので、家計は火の車。債務も溜まる一方です」

「ロンド教……」

 サニーはこめかみをトントンと指で叩く。
 女王陛下はそれらの新興宗教に頭を悩ませている。

 奴等は神の名を語り、無知な民を洗脳し金品を搾取する。
 それだけではなく、思想に取り込まれた哀れな子羊は悪の使徒となり、次の犠牲者を生み出す。
 法を整備して取り締まらねば、被害を被る民は数知れず出てくるだろう。

「宗教もなかなかひどいですが、マッキニー准尉の家族も相当なものですね。家族にとって彼女は金蔓かねづる扱いです」
「所謂、金だけださせる搾取子さくしゅこってやつか」
「ですね」
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