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【43】アルフォンゾ王子 ① ー雲の上の御方ー
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アリとセレーナとはなかなか休日が合わないが、それぞれが隊長におねだりして、なんとか今日という休みをもぎ取った。
自然と鼻歌がこぼれる。
久々の女子会!楽しみすぎる!!
朝までゆっくりしたくて、ハルボーン中佐からの宮殿バイトを午後からに変更してもらった。
中佐は快く応じてくれた。
心の広い中佐に、つくづく感謝ね。
ごきげんで、ダニエルは机を磨く。
気味が悪い視線を感じたって、気にならない。
だって何かされるわけじゃないもーーーん!
鼻先にぶら下げられたニンジンを追う馬車馬のように、ダニエルは働き続けた。
仕事が終わりロッカーに掃除用具を片付けていると、背後でノックがした。
すぐさま、ダニエルは直立不動になる。
「やぁ、マッキニー准尉」
入ってきたのは、以前カフスボタンを落としたと探しにきたクライン執務官だった。
「お久しぶりです、クライン執務官」
「敬礼はもういいよ。畏らないでくれ」
クライン執務官は涼しげな笑みを浮かべながら、掲げたダニエルの手をとり、下ろさせた。
彼の微笑みに気品のようなものを感じ、ダニエルは思わず見惚れた。
クライン執務官とは同じくらいの身長で、彼のダイアモンドのような瞳が近く感じる。
綺麗な瞳を堪能していると、腕にゾワゾワと鳥肌が立った。
またあの幽霊さんの視線だ。
だが、おかげでダニエルは我に返った。
いかん、いかん!魔性の男だからって見すぎだ!!
幸い、クライン執務官は挙動不審のダニエルを全く気にしてないようだった。
「これからハルボーン中佐と会議があるんだ。早く来すぎたみたい。待たせてもらってもいいかな?」
「はい、勿論です!清掃は終わりましたので」
「あ、それならお茶を淹れてもらえないかな?」
中佐から頼まれた仕事に給仕は入っていないけど、ゴマをすっておいて損はないだろう。
ダニエルは二つ返事で承知した。
といってもダニエルがする事は、使用人室でお茶の準備を申し入れ、メイド達が用意してくれたポットやティーカップをワゴンに設置して配膳するだけだ。
「湯が沸くまでお待ちください」と言われ、ダニエルはドアの側のベンチに腰掛けた。
使用人室は入ってすぐにカウンターがあり、中には厨房や茶器食器、食材などがズラズラーッと並ぶ。
「モントレー侯爵夫人の浮気相手って誰?」
「若い軍人さんだよ。女王陛下の側にいる!」
「うそぉ!陛下公認の逢瀬ってこと!?」
「わかんなけどさ、その軍人さんと部屋にこもってたって噂だよ」
「あんなよぼよぼ爺さんで我慢できるわけないよ!」
「そうよね~」
お団子髪に布頭巾をまきつけ、黒いドレスに白いエプロン姿のメイド達はみな、お喋りしながらのんびりとティーの準備を進めていた。
彼女達は商家出身で、貴族や騎士の目に留まれば爵位持ちの正妻の座をゲットできるかもしれない。
そんな一発逆転のチャンスを夢見て、宮殿奉公に上がってくる。
自然と鼻歌がこぼれる。
久々の女子会!楽しみすぎる!!
朝までゆっくりしたくて、ハルボーン中佐からの宮殿バイトを午後からに変更してもらった。
中佐は快く応じてくれた。
心の広い中佐に、つくづく感謝ね。
ごきげんで、ダニエルは机を磨く。
気味が悪い視線を感じたって、気にならない。
だって何かされるわけじゃないもーーーん!
鼻先にぶら下げられたニンジンを追う馬車馬のように、ダニエルは働き続けた。
仕事が終わりロッカーに掃除用具を片付けていると、背後でノックがした。
すぐさま、ダニエルは直立不動になる。
「やぁ、マッキニー准尉」
入ってきたのは、以前カフスボタンを落としたと探しにきたクライン執務官だった。
「お久しぶりです、クライン執務官」
「敬礼はもういいよ。畏らないでくれ」
クライン執務官は涼しげな笑みを浮かべながら、掲げたダニエルの手をとり、下ろさせた。
彼の微笑みに気品のようなものを感じ、ダニエルは思わず見惚れた。
クライン執務官とは同じくらいの身長で、彼のダイアモンドのような瞳が近く感じる。
綺麗な瞳を堪能していると、腕にゾワゾワと鳥肌が立った。
またあの幽霊さんの視線だ。
だが、おかげでダニエルは我に返った。
いかん、いかん!魔性の男だからって見すぎだ!!
幸い、クライン執務官は挙動不審のダニエルを全く気にしてないようだった。
「これからハルボーン中佐と会議があるんだ。早く来すぎたみたい。待たせてもらってもいいかな?」
「はい、勿論です!清掃は終わりましたので」
「あ、それならお茶を淹れてもらえないかな?」
中佐から頼まれた仕事に給仕は入っていないけど、ゴマをすっておいて損はないだろう。
ダニエルは二つ返事で承知した。
といってもダニエルがする事は、使用人室でお茶の準備を申し入れ、メイド達が用意してくれたポットやティーカップをワゴンに設置して配膳するだけだ。
「湯が沸くまでお待ちください」と言われ、ダニエルはドアの側のベンチに腰掛けた。
使用人室は入ってすぐにカウンターがあり、中には厨房や茶器食器、食材などがズラズラーッと並ぶ。
「モントレー侯爵夫人の浮気相手って誰?」
「若い軍人さんだよ。女王陛下の側にいる!」
「うそぉ!陛下公認の逢瀬ってこと!?」
「わかんなけどさ、その軍人さんと部屋にこもってたって噂だよ」
「あんなよぼよぼ爺さんで我慢できるわけないよ!」
「そうよね~」
お団子髪に布頭巾をまきつけ、黒いドレスに白いエプロン姿のメイド達はみな、お喋りしながらのんびりとティーの準備を進めていた。
彼女達は商家出身で、貴族や騎士の目に留まれば爵位持ちの正妻の座をゲットできるかもしれない。
そんな一発逆転のチャンスを夢見て、宮殿奉公に上がってくる。
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