【完結】女王陛下、クビだけはご勘弁を 〜「できちゃった。責任とって」って、ソイツはヤリチン王子。できるはずがありません!!〜

アムロナオ

文字の大きさ
上 下
42 / 102

【27】帰宅 ① ー我が家が一番ー

しおりを挟む
 ダニエルはほぼ丸一日を船室で寝て過ごし、夜には港町ロッペンに辿り着いた。


 ロッペンはアリャーリャ村に比べると、大都市だ。
 蒸気機関車の駅があるし、街灯も上下水道も整備されている。

 観光したい気持ちをぐっと抑えダニエルは駅へと向かう。
 窓口で首都セーラスまでの切符を買った。
 ここからは二日間、列車の旅だ。
 ダニエルはウキウキと一等車の扉を開いた。

 もともと二等車の切符を購入したのだが、席が空いているそうで、無料で一等車にアップグレードしてもらえた。
 なんてラッキーなのっ!


 そういえば、船でも似たようなことがあったなぁ。

 雑魚寝用の船室しかないと聞いていたが、親切な軍医さんが医務室のベッドを貸してくれたのだ。
 腰と股関節、それに股がひりひりして痛かったので、ベッドに横になれたのは、本当にありがたかった。

 おかげで寝すぎてしまい、楽しみにしていた船上からの景色を見逃したが。


 一等車の個室は木製のベンチに薄いマットレス、カーテンで区切っただけの簡易なもの。
 しかし丸々ひとつ木製ベンチを使えるのは嬉しい。

 二等車だと二人で一つ、座ったまま数日過ごさねばならないので、今のこの身体にはキツかっただろう。
 幸運って続くものね。
 ダニエルはアップグレードしてくれた親切な駅員さんに、深く感謝した。


 シーツを敷いてベッドメイキングを終え横になると、睡魔が襲ってくる。
 やはりまだ身体のダメージが抜けていないのだろう。

 どれだけヤッたんだよ、サニーの絶倫野郎。
 もうしばらく、おちんちんはいいや。

 機関車が発車する前に、ダニエルは眠りへと落ちていった。


 ーーーディディ、俺のお姫様


「ーーーっ!!」
 名前を呼ばれた気がして、ダニエルは目を覚ます。

 飛び起きたと言った方が正しいかもしれない。
 心臓がバクバク動悸し、背筋にヒンヤリ汗が滲む。

 寝静まった暗い室内。
 カーテンが蒸気機関車に合わせて揺れている。

 眠る前となんら変わらない様子に、ダニエルは止めた息を吐き出した。


 サニーの声がハッキリ聞こえた気がした。
 耳に毒を流し込まれるような、艶っぽい生々しい声。
 それがリアルに脳内で再生され、二の腕に鳥肌が立つ。

 まさか……そんなまさか!
 彼が近くにいるなんてこと、あるわけない。

 ダニエルは馬鹿な考えを持った自分を一蹴した。
 最高のセックスだったから、強烈に記憶に焼き付いているだけだ。

 ダニエルは頭を両膝に埋め、抱き締めるように強く自分の肩を握った。





 定刻通り、蒸気機関車は翌日の夕方、首都セーレスに到着した。

 駅の構内、駅前の噴水広場は人で溢れ、赤と黄色のパラソルを開いた露天売り、靴磨きの少年、花籠を手にした少女など、色んな事情を抱えた様々さまざまな人々が行き交う。

 ダニエルは人波を抜け、停留所で馬車をつかまえヴァリカレー宮殿まで走らせた。

 馬車の車窓から、見慣れた首都セーレスの街並みをぼんやり眺める。
 十年前、ダニエルが上京してきた時は、それはそれはすごい場所に来てしまったと感動したものだ。


しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

読心令嬢が地の底で吐露する真実

リコピン
恋愛
※改題しました 旧題『【修正版】ダンジョン☆サバイバル【リメイク投稿中】』 転移魔法の暴走で、自身を裏切った元婚約者達と共に地下ダンジョンへと飛ばされてしまったレジーナ。命の危機を救ってくれたのは、訳ありの元英雄クロードだった。 元婚約者や婚約者を奪った相手、その仲間と共に地上を目指す中、それぞれが抱えていた「嘘」が徐々に明らかになり、レジーナの「秘密」も暴かれる。 生まれた関係の変化に、レジーナが選ぶ結末は―

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...