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【25】執着 ーヤリ捨ては許しません!ー
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「ユーリ、彼女の素性を報告してくれ」
サニーのことは何でもお見通しのユージンでも、この質問は予想外だったようだ。
細い目を僅かに大きくさせ、一瞬、ポカンと口が開いた。
驚かれるのも、無理はない。
いつもなら、遊びの女の情報など気にも留めない。
大事なことは、身体の相性がいいか。
そして面倒臭くないこと、それだけだ。
女の素性はユージンがチェックして、問題が起きそうなら金で手を打つ。
昨日まではそうやって過ごしてきたが、彼女が気になるのだから仕方がない。
欲しいものは、欲しい。
彼女の肉体を貪った今、手放すなんて考えられない。
「彼女はダニエル・マッキニー准尉、二十五歳。陸軍近衛団近衛隊第二分隊所属、三等兵からのスタートです」
「軍属だとは思っていたが、近衛隊か……」
「出身は北西のマッキニー男爵領で、シシェック・マッキニー男爵家のご令嬢でございます」
「マッキニー男爵家?聞いたことないな、下級貴族か」
「男爵家は三百を下りませんから。没落しかけた下級貴族の噂は、殿下のお耳に入らないないかと」
「なるほどね」
没落しているなら、きっと金銭的に困窮しているだろう。
しかし貴族令嬢なら結婚という手もある。
なんでわざわざ危険でキツイ軍属に入ったんだか。
しかもキャリアは下級士官の三等兵スタート。
曲がりなりにも貴族なら、一等兵から始まるのが一般的なのに。
「もう少し、ダニエル・マッキニーに関して調べますか?」
「あぁ、頼む」
サニーの疑問に気づいたユージンは、先回りして主人の要望に応える。
痒いところに手が届くとはこの事で、これだから彼を手放せない。
ちょっとばかし正直者で、女性に対して小姑のように口煩く、時々はくのが猛毒だったとしても、だ。
「それにしても珍しいですね。殿下が素性を知りたがるなんて」
「あぁ……」
後腐れない関係を好むサニーの、初めての執着。
女に請われて愛妾に召し抱えることはあったが、サニーのほうからというのは初めてだ。
盛り上がった勢いでうっかり孕ませようとしたことは、ユージンには黙っておいた。
流石に呆れられそうだし、母に報告されたらややこしいことになる。
顔には出さないが、ユージンも戸惑っているようで、それはサニーだって同じだ。
今だって、彼女をどうしたいのか、自分がどうしたいのか、曖昧なまま。
わかっているのは、目覚めたら一発ヤりたいってこと。
そして彼女を逃したくないってことだけ。
「それほど気に入ったのですか」
「あぁ」
「囲うおつもりで?」
「もちろんだ。その様に動いてくれ」
ユージンは、今度は軍人ですかと小言をいう。
愛人を管理させられる彼としては、仕事が増えるのが面白くないんだろう。
「その代わり、エマをきってくれ」
南都きっての悪女と名高い、舞台女優けん高級娼婦のエマ。
彼女は金使いも荒くヒステリックで、ユージンが嫌っていたのは承知している。
請われるままズルズルと愛人関係を続けてきたが、そろそろ潮時だと思っていたのだ。
「かしこまりました」
気を良くしたユージンは、綺麗な角度で頭を下げた。
よし、これで朝までゆっくり眠れそうだ。
サニーは満足して、口元をにやつかせた。
「今から彼女のお尻を揉み揉みしながら眠るんだ。いやぁ、眠れるかなぁ。そして朝はおっぱいを丸出しにしたディディに起こしてもらう!あぁ、なんて最高なんだ」
だが、現実は甘くない。
「…………しかし彼女は明朝の軍船でこの島を去りますが」
「なにぃっ、くっそ!やっぱりディディの奴、俺をヤり捨てるつもりだったんだな!!」
「いえ、それはいつも殿下が女性達にしていることで……」
「うるさい!こうなったら監禁して、快楽調教漬けにしてやる!!」
「それは犯罪ですよ、殿下」
「うるせー!!そんなもん、どうとでもなるだろう」
「それじゃあ暴君じゃないですか」
「うるせー、うるせー、うるせー!!」
ユージンの冷静なツッコミに、サニーは声を荒げた。
サニーのことは何でもお見通しのユージンでも、この質問は予想外だったようだ。
細い目を僅かに大きくさせ、一瞬、ポカンと口が開いた。
驚かれるのも、無理はない。
いつもなら、遊びの女の情報など気にも留めない。
大事なことは、身体の相性がいいか。
そして面倒臭くないこと、それだけだ。
女の素性はユージンがチェックして、問題が起きそうなら金で手を打つ。
昨日まではそうやって過ごしてきたが、彼女が気になるのだから仕方がない。
欲しいものは、欲しい。
彼女の肉体を貪った今、手放すなんて考えられない。
「彼女はダニエル・マッキニー准尉、二十五歳。陸軍近衛団近衛隊第二分隊所属、三等兵からのスタートです」
「軍属だとは思っていたが、近衛隊か……」
「出身は北西のマッキニー男爵領で、シシェック・マッキニー男爵家のご令嬢でございます」
「マッキニー男爵家?聞いたことないな、下級貴族か」
「男爵家は三百を下りませんから。没落しかけた下級貴族の噂は、殿下のお耳に入らないないかと」
「なるほどね」
没落しているなら、きっと金銭的に困窮しているだろう。
しかし貴族令嬢なら結婚という手もある。
なんでわざわざ危険でキツイ軍属に入ったんだか。
しかもキャリアは下級士官の三等兵スタート。
曲がりなりにも貴族なら、一等兵から始まるのが一般的なのに。
「もう少し、ダニエル・マッキニーに関して調べますか?」
「あぁ、頼む」
サニーの疑問に気づいたユージンは、先回りして主人の要望に応える。
痒いところに手が届くとはこの事で、これだから彼を手放せない。
ちょっとばかし正直者で、女性に対して小姑のように口煩く、時々はくのが猛毒だったとしても、だ。
「それにしても珍しいですね。殿下が素性を知りたがるなんて」
「あぁ……」
後腐れない関係を好むサニーの、初めての執着。
女に請われて愛妾に召し抱えることはあったが、サニーのほうからというのは初めてだ。
盛り上がった勢いでうっかり孕ませようとしたことは、ユージンには黙っておいた。
流石に呆れられそうだし、母に報告されたらややこしいことになる。
顔には出さないが、ユージンも戸惑っているようで、それはサニーだって同じだ。
今だって、彼女をどうしたいのか、自分がどうしたいのか、曖昧なまま。
わかっているのは、目覚めたら一発ヤりたいってこと。
そして彼女を逃したくないってことだけ。
「それほど気に入ったのですか」
「あぁ」
「囲うおつもりで?」
「もちろんだ。その様に動いてくれ」
ユージンは、今度は軍人ですかと小言をいう。
愛人を管理させられる彼としては、仕事が増えるのが面白くないんだろう。
「その代わり、エマをきってくれ」
南都きっての悪女と名高い、舞台女優けん高級娼婦のエマ。
彼女は金使いも荒くヒステリックで、ユージンが嫌っていたのは承知している。
請われるままズルズルと愛人関係を続けてきたが、そろそろ潮時だと思っていたのだ。
「かしこまりました」
気を良くしたユージンは、綺麗な角度で頭を下げた。
よし、これで朝までゆっくり眠れそうだ。
サニーは満足して、口元をにやつかせた。
「今から彼女のお尻を揉み揉みしながら眠るんだ。いやぁ、眠れるかなぁ。そして朝はおっぱいを丸出しにしたディディに起こしてもらう!あぁ、なんて最高なんだ」
だが、現実は甘くない。
「…………しかし彼女は明朝の軍船でこの島を去りますが」
「なにぃっ、くっそ!やっぱりディディの奴、俺をヤり捨てるつもりだったんだな!!」
「いえ、それはいつも殿下が女性達にしていることで……」
「うるさい!こうなったら監禁して、快楽調教漬けにしてやる!!」
「それは犯罪ですよ、殿下」
「うるせー!!そんなもん、どうとでもなるだろう」
「それじゃあ暴君じゃないですか」
「うるせー、うるせー、うるせー!!」
ユージンの冷静なツッコミに、サニーは声を荒げた。
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