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【07】ワンナイト ① ーおあずけはナシでー

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 サニーが案内したのは山の頂上にある高級ヴィラだった。

 こんな高そうなホテル!?ダニエルの気分は高揚する。
 サニーは「キミとの初めての夜だから特別。明日から冷や飯で頑張る」とおどけてみせた。

「うっわ!バスタブがついてる。トイレも!石鹸も手作りの高級なやつ!」

 高級か否かは、浴室できまる。
 アニーの定宿にはシャワーもバスタブもなく、水桶しかない。
 しかも水は宿の中庭の井戸から自分で汲まなければならず、温かい湯が欲しい場合も、自分で沸かす。

 トイレも共用、且つ、おまる。
 便所には常にアンモニア臭が漂っている。
 これが辺鄙な島の庶民のスタイルだが、高級ホテルとなると違ってくる。

 部屋の屋根に水桶タンクがつき、従業員が定期的に水と湯を補充してくれるから、自分で準備しなくてもいい!
 トイレも水洗式で、流してしまえて清潔。
 便所特有のいやな匂いもない。

 それどころかバスタブには薔薇の花びらが浮いている。
 あぁ、なんて最高なんだ!高級ヴィラ!!


「ごめん、先に部屋でくつろいでて」
「ほーい!ごゆっくりー」

 浴室にこもるサニーの後ろ姿にそう声をかけ、室内を散策する。
 部屋にはいたるところにキャンドルが灯され、白壁にオレンジの光の影を映す。

 ダイニングテーブル、バーカウンターなどの調度品はダークブラウンに統一され、全体的に重厚感溢れた内装でかっこいい。
 ソファや机だけでなく、柱や天井に至るまでエスニックな木彫りのレリーフが施されていた。
 豪奢な寝台にはゴブラン織のクッションが沢山積まれ、薄布の天蓋に囲まれている。

「おぉぉぉ!」
 ダニエルはベッドにダイブして、ゴロゴロと転がった。
 スカートが捲れるのも御構い無しだ。
 横に二転三転しても余りあるくらい、寝台は広い。
 それにシーツはシルクで手触りが最高だった。

 お姫様みたい!なんて素敵なベッドのっ。
 ダニエルは子どものようにはしゃいだ。
 至る所に飾られた花が、夜風に混ざって香りを放つ。


 内装もさることながら、眺めも最高だ。
「うわぁぁぁ!」
 素晴らしい景観に感嘆の声をあげた。

 ホテルは島の一番高い場所にあり、アリャーリャ村の素晴らしい景色を一望できる。
 窓の外には境が曖昧になった空と海が広がり、波風が優しく頬をなでていく。
 空に星々がチラチラと輝き、海面では波がテラテラと濡れて光る。
 眼下には煌めく海を背景に、暖かなオレンジの光を宿した白壁の家々が軒を連ねている。

 故郷で行われる、灯籠とうろう流し祭りのようだと思った。
 ダニエルの故郷では年に一度、領地を流れる谷川に灯篭を流す祭りがあるのだ。
 オレンジの光を放つ灯篭が川を下る様子は、幻想的な気持ちにさせえてくれる。
 今、この場所から広がる景色も、言葉にできないくらい美しく幻想的だ。


「お気に召しましたか、お姫様」
 シャンパンを差し出され、景色に見惚れていたダニエルは我に返った。

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