【完結】女王陛下、クビだけはご勘弁を 〜「できちゃった。責任とって」って、ソイツはヤリチン王子。できるはずがありません!!〜

アムロナオ

文字の大きさ
上 下
10 / 102

【07】ワンナイト ① ーおあずけはナシでー

しおりを挟む
 サニーが案内したのは山の頂上にある高級ヴィラだった。

 こんな高そうなホテル!?ダニエルの気分は高揚する。
 サニーは「キミとの初めての夜だから特別。明日から冷や飯で頑張る」とおどけてみせた。

「うっわ!バスタブがついてる。トイレも!石鹸も手作りの高級なやつ!」

 高級か否かは、浴室できまる。
 アニーの定宿にはシャワーもバスタブもなく、水桶しかない。
 しかも水は宿の中庭の井戸から自分で汲まなければならず、温かい湯が欲しい場合も、自分で沸かす。

 トイレも共用、且つ、おまる。
 便所には常にアンモニア臭が漂っている。
 これが辺鄙な島の庶民のスタイルだが、高級ホテルとなると違ってくる。

 部屋の屋根に水桶タンクがつき、従業員が定期的に水と湯を補充してくれるから、自分で準備しなくてもいい!
 トイレも水洗式で、流してしまえて清潔。
 便所特有のいやな匂いもない。

 それどころかバスタブには薔薇の花びらが浮いている。
 あぁ、なんて最高なんだ!高級ヴィラ!!


「ごめん、先に部屋でくつろいでて」
「ほーい!ごゆっくりー」

 浴室にこもるサニーの後ろ姿にそう声をかけ、室内を散策する。
 部屋にはいたるところにキャンドルが灯され、白壁にオレンジの光の影を映す。

 ダイニングテーブル、バーカウンターなどの調度品はダークブラウンに統一され、全体的に重厚感溢れた内装でかっこいい。
 ソファや机だけでなく、柱や天井に至るまでエスニックな木彫りのレリーフが施されていた。
 豪奢な寝台にはゴブラン織のクッションが沢山積まれ、薄布の天蓋に囲まれている。

「おぉぉぉ!」
 ダニエルはベッドにダイブして、ゴロゴロと転がった。
 スカートが捲れるのも御構い無しだ。
 横に二転三転しても余りあるくらい、寝台は広い。
 それにシーツはシルクで手触りが最高だった。

 お姫様みたい!なんて素敵なベッドのっ。
 ダニエルは子どものようにはしゃいだ。
 至る所に飾られた花が、夜風に混ざって香りを放つ。


 内装もさることながら、眺めも最高だ。
「うわぁぁぁ!」
 素晴らしい景観に感嘆の声をあげた。

 ホテルは島の一番高い場所にあり、アリャーリャ村の素晴らしい景色を一望できる。
 窓の外には境が曖昧になった空と海が広がり、波風が優しく頬をなでていく。
 空に星々がチラチラと輝き、海面では波がテラテラと濡れて光る。
 眼下には煌めく海を背景に、暖かなオレンジの光を宿した白壁の家々が軒を連ねている。

 故郷で行われる、灯籠とうろう流し祭りのようだと思った。
 ダニエルの故郷では年に一度、領地を流れる谷川に灯篭を流す祭りがあるのだ。
 オレンジの光を放つ灯篭が川を下る様子は、幻想的な気持ちにさせえてくれる。
 今、この場所から広がる景色も、言葉にできないくらい美しく幻想的だ。


「お気に召しましたか、お姫様」
 シャンパンを差し出され、景色に見惚れていたダニエルは我に返った。

しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非! *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。

処理中です...