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【01】プロローグ ー女王陛下!クビだけはご勘弁をー
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タマヒュンという言葉をご存知だろうか。
恐怖で男の股間がヒュンとなる現象である。
さて、ここで問題である。
どれだけ沢山の女とヤれるかしか考えてない男。
数多の女性と浮名を流す節操のない男。
色欲に溺れ自堕落な生活を送る軽薄な男。
一般的にヤリチンと呼ばれるこれらの男が、最も恐れることはなにか?
それはこんなシチュエーションである。
「できちゃった。責任とって」
ヒュン!と心の中でタマが縮んだ。
タマは器の大きさに比例するときく。
きっとでっかいだろう心のタマが、そりゃあもう盛大に萎びましたとも。
心臓までギュッと縮こまり、破裂しそうなほど強く音をたてている。
背中には冷たい汗が流れ、握った拳の中が手汗でぐっしょり濡れる。
っで、できたって、何が!?
驚愕で目を見開き固まるダニエルに、「まさか二人がそんな関係だったなんてねぇ」と、のんびりした口調で女王陛下が仰る。
いやいやいや!関係なんてありません。
私達、初対面です!……といえないのが、悲しいかな。
白状します、一夜だけ関係を持ちました。
女王の背後には帝国軍大将のダウニー・コーカス閣下と、部下の陸軍大佐、そのまた部下である近衛隊大尉と並び、最後尾に直属の上司であるリック分隊長がいた。
全員、恐ろしいほど厳しい表情をしている。
リック分隊長に至っては今にも吐きそうになっていて、ダニエルは自身の置かれたやばい状況、もとい最大の危機をひしひしと感じた。
「二人は、どこで出会ったの?」
「南都シスペンナでバカンス中に出会ったんです。目が合った瞬間に恋が燃え上がり、真夏の太陽より激しく、ウフン!アハン!ズコズコ、バッコン!やりまくりましたよ…………いうなれば、私達は真実の愛に目覚めたんです」
なにが真実の愛よ!笑わせる。
目覚めたどころか、はじまってもいません。
全て嘘っぱちです。
……っていうか、ダウニー閣下の顔が、猿みたいにヤリまくっただけじゃねぇかよって言ってるんですけど!
めっちゃ睨まれてるんですけど!!
王の騎士なら色欲に狂うなど言語道断って、お怒りなんですけど!!!
「まぁ、素敵ねぇ。若いっていいわねぇ」
「そういうわけで母上、ダニエルを私にください」
ダニエルは沸き起こる怒りで、頭が真っ白になった。
全身の血が逆流してるんじゃないかってくらい、熱い。
きっと顔は赤鬼みたいになってるだろう。
今なら確実に憤死できる。
こんなに腹が立ったのは久しぶりだ。
コイツまじで、なんなのっ!!
後腐れない軽そうな人だと思ったから、手を出したのに。
とんだメンヘラ地雷ストーカー野郎だよ。
それにくださいって、近衛隊をクビになるって事!?
無理無理無理無理無理無理!
絶対いや、死んでもいや!
辛い訓練に耐え、やっと女王陛下の近衛隊に入れたのにっ!!
冗談じゃないわっ!!!
女王陛下の盾となる者。
近衛隊の中でも選抜された一部の人しかなれない。
その特別な職務を負う者を、騎士と呼ぶ。
深紅の軍服に身を包み、銀の剣を構える。
女王陛下の背後で一糸乱れず凛々しく佇む。
そんな騎士になろう、お揃いの騎士服を着よう。
そう、あの人と誓った。
二人の子ども頃からの夢だった。
その苦労を水の泡にする気!?
「うーん、困ったわねぇ。貴方にはもう少し頑張ってほしかったんだけれど」
優しい表情、おっとりした雰囲気の女王陛下だが、瞳は冴え冴えとしている。
ダニエルなどは恐れ多くて、その視線だけで失禁しそうなる。
だが話しかけられたサニーは、輝くような笑顔でそれをいなした。
「母上!私にはもう無理です。なぜなら、私達はできてしまったから」
いや、だから何が!?……とは叫べない。
「あらあら、まぁまぁ。できちゃうなんてねぇ」
「そうです!できてるんです!!ですからダニエルには責任を取ってもらわねばなりません」
はぁぁぁ、ぶん殴りたい。
これ見よがしに平たい腹をサスサス撫でるアイツを、ダニエルは奥歯を噛んで睨んだ。
えぇい!腹をなでるな。頬を染めるな!!
睨まれて嬉しそうなのが、解せぬ。
あの夜にいやというほど知ったけど、やっぱりヤツはサドのド変態。
でもきっと大丈夫!
賢王として名高い女王陛下がこんな茶番に付き合うわけ……。
「お願いします、母上」
「仕方ありませんねぇ」
……って、付き合っちゃったぁぁぁぁ!
あぁあっぁぁ、女王陛下!
アレクサンドラ・ケイト・デヴォンシャー様!!
どうか!どうかそんなわざとらしい芝居に、ひっかからないでください。
ダニエルは最悪な方向へと流れていく会話に、小さく震えだした。
「でも残念だわぁ。せっかくいい人材が入ってくれたのに」
「えぇ、ダニエルは優秀ですよ。しかし母上!これは神の御意志です。天も私達二人の愛の結晶(ベイビー)を祝福しているのです」
んなぁぁわけ、あるかぁぁぁぁ!
愛の結晶なんて、できるわけないじゃん!!
だってソイツ!
ヤリチン王子(♂)じゃん!!
こっちが妊娠する事はあっても、そっちができるわけがないんだよぉぉっぉぉぉぉ!
責任とれって?
ふっざけんなっっっ!
それは女♀側のセリフだっつーの。
っつーか王子様、自分は散々女性を弄んできたくせに、責任とれとか図々しいにもほどがあるでしょ!?
ヤリチンならわかるよね!?
そういうメンヘラ女が一番面倒で萎えるって!!
「では女王陛下」
ダウニー閣下が女王陛下とアイコンタクトをとる。
や、やばい!あたし、本当に近衛隊を外されちゃう。
これは陰謀よ!!
あたし、腹黒メンヘラヤリチン皇子に嵌められたのよっ!!
堪えられなくなったダニエルは、とうとう女王の前に両膝をつき、頭を垂れて叫んだ。
「女王陛下!何卒、何卒、クビだけはご勘弁をっ」
恐怖で男の股間がヒュンとなる現象である。
さて、ここで問題である。
どれだけ沢山の女とヤれるかしか考えてない男。
数多の女性と浮名を流す節操のない男。
色欲に溺れ自堕落な生活を送る軽薄な男。
一般的にヤリチンと呼ばれるこれらの男が、最も恐れることはなにか?
それはこんなシチュエーションである。
「できちゃった。責任とって」
ヒュン!と心の中でタマが縮んだ。
タマは器の大きさに比例するときく。
きっとでっかいだろう心のタマが、そりゃあもう盛大に萎びましたとも。
心臓までギュッと縮こまり、破裂しそうなほど強く音をたてている。
背中には冷たい汗が流れ、握った拳の中が手汗でぐっしょり濡れる。
っで、できたって、何が!?
驚愕で目を見開き固まるダニエルに、「まさか二人がそんな関係だったなんてねぇ」と、のんびりした口調で女王陛下が仰る。
いやいやいや!関係なんてありません。
私達、初対面です!……といえないのが、悲しいかな。
白状します、一夜だけ関係を持ちました。
女王の背後には帝国軍大将のダウニー・コーカス閣下と、部下の陸軍大佐、そのまた部下である近衛隊大尉と並び、最後尾に直属の上司であるリック分隊長がいた。
全員、恐ろしいほど厳しい表情をしている。
リック分隊長に至っては今にも吐きそうになっていて、ダニエルは自身の置かれたやばい状況、もとい最大の危機をひしひしと感じた。
「二人は、どこで出会ったの?」
「南都シスペンナでバカンス中に出会ったんです。目が合った瞬間に恋が燃え上がり、真夏の太陽より激しく、ウフン!アハン!ズコズコ、バッコン!やりまくりましたよ…………いうなれば、私達は真実の愛に目覚めたんです」
なにが真実の愛よ!笑わせる。
目覚めたどころか、はじまってもいません。
全て嘘っぱちです。
……っていうか、ダウニー閣下の顔が、猿みたいにヤリまくっただけじゃねぇかよって言ってるんですけど!
めっちゃ睨まれてるんですけど!!
王の騎士なら色欲に狂うなど言語道断って、お怒りなんですけど!!!
「まぁ、素敵ねぇ。若いっていいわねぇ」
「そういうわけで母上、ダニエルを私にください」
ダニエルは沸き起こる怒りで、頭が真っ白になった。
全身の血が逆流してるんじゃないかってくらい、熱い。
きっと顔は赤鬼みたいになってるだろう。
今なら確実に憤死できる。
こんなに腹が立ったのは久しぶりだ。
コイツまじで、なんなのっ!!
後腐れない軽そうな人だと思ったから、手を出したのに。
とんだメンヘラ地雷ストーカー野郎だよ。
それにくださいって、近衛隊をクビになるって事!?
無理無理無理無理無理無理!
絶対いや、死んでもいや!
辛い訓練に耐え、やっと女王陛下の近衛隊に入れたのにっ!!
冗談じゃないわっ!!!
女王陛下の盾となる者。
近衛隊の中でも選抜された一部の人しかなれない。
その特別な職務を負う者を、騎士と呼ぶ。
深紅の軍服に身を包み、銀の剣を構える。
女王陛下の背後で一糸乱れず凛々しく佇む。
そんな騎士になろう、お揃いの騎士服を着よう。
そう、あの人と誓った。
二人の子ども頃からの夢だった。
その苦労を水の泡にする気!?
「うーん、困ったわねぇ。貴方にはもう少し頑張ってほしかったんだけれど」
優しい表情、おっとりした雰囲気の女王陛下だが、瞳は冴え冴えとしている。
ダニエルなどは恐れ多くて、その視線だけで失禁しそうなる。
だが話しかけられたサニーは、輝くような笑顔でそれをいなした。
「母上!私にはもう無理です。なぜなら、私達はできてしまったから」
いや、だから何が!?……とは叫べない。
「あらあら、まぁまぁ。できちゃうなんてねぇ」
「そうです!できてるんです!!ですからダニエルには責任を取ってもらわねばなりません」
はぁぁぁ、ぶん殴りたい。
これ見よがしに平たい腹をサスサス撫でるアイツを、ダニエルは奥歯を噛んで睨んだ。
えぇい!腹をなでるな。頬を染めるな!!
睨まれて嬉しそうなのが、解せぬ。
あの夜にいやというほど知ったけど、やっぱりヤツはサドのド変態。
でもきっと大丈夫!
賢王として名高い女王陛下がこんな茶番に付き合うわけ……。
「お願いします、母上」
「仕方ありませんねぇ」
……って、付き合っちゃったぁぁぁぁ!
あぁあっぁぁ、女王陛下!
アレクサンドラ・ケイト・デヴォンシャー様!!
どうか!どうかそんなわざとらしい芝居に、ひっかからないでください。
ダニエルは最悪な方向へと流れていく会話に、小さく震えだした。
「でも残念だわぁ。せっかくいい人材が入ってくれたのに」
「えぇ、ダニエルは優秀ですよ。しかし母上!これは神の御意志です。天も私達二人の愛の結晶(ベイビー)を祝福しているのです」
んなぁぁわけ、あるかぁぁぁぁ!
愛の結晶なんて、できるわけないじゃん!!
だってソイツ!
ヤリチン王子(♂)じゃん!!
こっちが妊娠する事はあっても、そっちができるわけがないんだよぉぉっぉぉぉぉ!
責任とれって?
ふっざけんなっっっ!
それは女♀側のセリフだっつーの。
っつーか王子様、自分は散々女性を弄んできたくせに、責任とれとか図々しいにもほどがあるでしょ!?
ヤリチンならわかるよね!?
そういうメンヘラ女が一番面倒で萎えるって!!
「では女王陛下」
ダウニー閣下が女王陛下とアイコンタクトをとる。
や、やばい!あたし、本当に近衛隊を外されちゃう。
これは陰謀よ!!
あたし、腹黒メンヘラヤリチン皇子に嵌められたのよっ!!
堪えられなくなったダニエルは、とうとう女王の前に両膝をつき、頭を垂れて叫んだ。
「女王陛下!何卒、何卒、クビだけはご勘弁をっ」
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