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魔法使いと妖精と

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 ランドマークとクイーンズスクエアの間にある階段で座り込む少年は、すっかり夜が明けたにも拘わらず今でも空を仰ぎ見ている。
 横浜とここ桜木町の近辺はグリゴリ襲撃を境に、ガラリと様変わりをすることになる。
 何故ならこの街に住み着いて居た者達の殆どが、井上四朗達に依って集められた慧の監視員の様な物だったからだ。
 四朗亡き後この街に流れて来ていた様々な物資が全て止まった為に、暮らす事が困難になった者達は皆この街を出て行くしか無くなったのである、今現在横浜桜木町近辺はほぼゴーストタウンになってしまっていた。
 何故ほぼ?なのか。
 それはこの街に順応したが為に神国の社会に今更戻れなくなってしまった者達と、それら以外にも新たな住人がここ桜木町に集まり始めていたからに他ならない。
 その新たな者達は皆共通点を持ち合わせていた、それは本来人類が持ち合わせていない特殊と言える力を各々持っていたのだ。
 一見その力は使徒のそれに似て居たが、使徒と呼ぶにはその力は余りに微弱で些細な力、比べる事すら烏滸がましく自分を使徒だと思った者は誰一人として居ない、ただ普通の人間では無いと言い切れる不思議な力を発現した者達なのである。
 使徒の誰かがこの場に居て、その者が第十二世界の記憶を持っていれば、すぐさま答えてあげることが出来たであろうその力は、第十二世界でこう呼ばれていた「魔法使い」或いは「妖精」と。
 第十二世界で産まれた魔法使いや妖精と言う存在は、この地球上で人類の中から純粋に産まれた初めての特異能力者なのだ。
 神が与えた訳でも無く使徒が与えた訳でも無い、正真正銘人類の進化がもたらした力の持ち主達と言えるだろう。
 他の人とは違う力を持ったこの者達は、誰に聞くでも無く不思議とこの街に集い始めているのである。
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