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神暦と神国
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2072年2月22日神が目撃されてから僅か半年、日本国は今までの天皇を国の象徴として和暦等の変更を続けて来たがこの日それを廃止。新しく和暦を神暦と定め、あろうことか国名まで変更する。新国名には神の降り立った国、神国とすると世界中に報じた。
日本がこんなにも急な国名変更に至った訳は、世界中からの様々な圧力から逃れる為また宗教戦争を回避したいと言う思惑でもあったのだ。
2071年8月14日のあの日以降、世界は宗教戦争と言っても過言ではない冷戦状態に突入する。
行方の解らないとされる神を、実は日本が保護し隠しているのではないか?日本が神を独占し自国だけが貧窮する国家情勢を変えようと目論んでいるのでは?
実際神を保護出来ていたならば、日本の政治家たちは有りとあらゆる事を神にお願いしていた事だろう。
だが事実神は今現在居ないのである、正直に各国首脳に伝えた所で日本の立場が変わることなど無かった。それ程までに世界中が神を欲していた。
世界の陸地が3分の1近く海に飲まれ人口も減少の一途を辿り、人類はいずれ滅びるかもしれないと思っていた矢先の神降臨である。誰もが救われたと、救われるものだと確信してしまったもんだから尚更歯止めが効かない。
日本政府の言う事を信じる国はもはや存在しない。日本から神を救い出さなければ世界は滅びる!高まる反日感情は増すばかりで遂には実力行使に出る国が後を絶たない状態へとエスカレートして行く事となる。
自国の人間を大量に入国させ大規模デモや暴動を行い、それを隠れ蓑にスパイ活動や特殊任務部隊が裏で好き勝手をやって行く。神さえ手に入れれば後はどうにでもなる、それが他国全てに共通した理念となってしまっていた。
自国を守る事が、何よりも正義と思わざる得ない程に世界は苦しいのだ。
治安が荒れる国内で最早日本国家としての威厳などどこ吹く風、一時的に鎖国の様な制度を取り入れ入出国を極端に制限したが島国日本はいざとなれば外からの入国に対してザルである事が露呈、しかも不法侵入者達は入国審査が無いので武器等を持ち込み放題で現状の悪化を招く最大の要因にしかならなかった。
現状の打開策も無いまま他国に好き勝手され続けて、ひと月あまり過ぎた在る日のこと。「神の使徒」を名乗る男が国会議事堂に押し入ろうと、暴徒化した他国のデモ隊の前に現れたのだ。
「我は神の使徒、神の御心を騒がすお前たちに天罰を与える」
千人規模の暴徒達も思わず足を止めたが、そんな事を言う輩は今の世界にまさしく五万と居る。なんちゃって神はいらないのだ。皆テレビで見たあの少女以外は求めていない。
野次の様な罵声に似た怒号が直ぐにその場を支配し、暴徒の群れが動き出したその時であった。
「愚かな者共め」
使徒を名乗る男が頭上に飛び上がると、なんと空中で止まったのだ。
「民衆を惑わせ影でこそこそしている連中が居るようだ」
そう言って右手を振り上げた刹那、稲妻が暴徒に降り注いだ。悲鳴と叫び声がその場を包んだが、稲妻をその身で受けた者は50人程で後の暴徒達は全くの無傷である。倒れた者達は皆各国の陽動部隊で、民衆を意識操作で暴徒化して誘導していたのだろう。
「どこの国のスパイなのかは後で調べるとして、皆の者よく聞くが良い。」
知らぬ間に辺り一面静まり返っていた。それもそのはず目の前に空に浮かびながら「神の使徒」を名乗る人物が居るのだ。本物だ!本物が居るぞ!神の使徒だ!
生唾を飲み込む音が聞こえそうなほど静まり返った中で神の使徒は静かに言った。
「神は今眠りに付いておいでだ。お目覚めになり御言葉を頂くまで、我も現状を見守るつもりで居たが騒がしくて堪らん」
そう言って少し俯き考えた素振りを見せた後、凄みを効かせた声色でこう言った。
「神の眠りを妨げる者達全てに告げる!神の眠るこの地は神聖なものとしれ。厄災を運び込みし者の国は、我が直接出向き滅ぼしてくれよう。何ならこの世の全てを浄化し尽くしても良いのだぞ。な~に7日も有れば充分だ」
神の使徒を名のる男はどちらかと言えば優男だが、この時はとてつもなく冷徹に凄みを効かせた言い回しをしてみせた。
いつの間にか暴徒は全てその場でひれ伏し、使徒に対して祈りを捧げるものまで居た。
「忘れるな神の御子らよ。神は何処にでも居るし何処にも居ない、望むなかれ奪うなかれ安息も絶望も神の御心次第だと知るが良い」
そう言い残すと神の使徒は光に包まれながら消えてしまったが、その場で祈りを続ける者が後を立たなかった為に、議事堂前が平常を取り戻すのに半日以上掛かる事となった。
この日の出来事は映像として残ってはいなかったが、千人近くの民衆、議事堂を守る警官隊及び議事堂に集まっていた政府関係者が目撃した事により真実の出来事としてニュースで使徒の言葉が伝えられる事となった。
神の機嫌を損ねたら世界は滅亡する!
国の名前が変わると言う事がどれだけ重大な事かは誰でも知っている、だが神が眠る神聖な大地とされた事により神国と名を変えるのなら喜ばしい事だ!と国民に反対する勢力は生まれなかった。
他国はまさしく「触らぬ神に祟り無し」的な態度にうってかわり、傍観を決め込む姿勢のようだった。
日本がこんなにも急な国名変更に至った訳は、世界中からの様々な圧力から逃れる為また宗教戦争を回避したいと言う思惑でもあったのだ。
2071年8月14日のあの日以降、世界は宗教戦争と言っても過言ではない冷戦状態に突入する。
行方の解らないとされる神を、実は日本が保護し隠しているのではないか?日本が神を独占し自国だけが貧窮する国家情勢を変えようと目論んでいるのでは?
実際神を保護出来ていたならば、日本の政治家たちは有りとあらゆる事を神にお願いしていた事だろう。
だが事実神は今現在居ないのである、正直に各国首脳に伝えた所で日本の立場が変わることなど無かった。それ程までに世界中が神を欲していた。
世界の陸地が3分の1近く海に飲まれ人口も減少の一途を辿り、人類はいずれ滅びるかもしれないと思っていた矢先の神降臨である。誰もが救われたと、救われるものだと確信してしまったもんだから尚更歯止めが効かない。
日本政府の言う事を信じる国はもはや存在しない。日本から神を救い出さなければ世界は滅びる!高まる反日感情は増すばかりで遂には実力行使に出る国が後を絶たない状態へとエスカレートして行く事となる。
自国の人間を大量に入国させ大規模デモや暴動を行い、それを隠れ蓑にスパイ活動や特殊任務部隊が裏で好き勝手をやって行く。神さえ手に入れれば後はどうにでもなる、それが他国全てに共通した理念となってしまっていた。
自国を守る事が、何よりも正義と思わざる得ない程に世界は苦しいのだ。
治安が荒れる国内で最早日本国家としての威厳などどこ吹く風、一時的に鎖国の様な制度を取り入れ入出国を極端に制限したが島国日本はいざとなれば外からの入国に対してザルである事が露呈、しかも不法侵入者達は入国審査が無いので武器等を持ち込み放題で現状の悪化を招く最大の要因にしかならなかった。
現状の打開策も無いまま他国に好き勝手され続けて、ひと月あまり過ぎた在る日のこと。「神の使徒」を名乗る男が国会議事堂に押し入ろうと、暴徒化した他国のデモ隊の前に現れたのだ。
「我は神の使徒、神の御心を騒がすお前たちに天罰を与える」
千人規模の暴徒達も思わず足を止めたが、そんな事を言う輩は今の世界にまさしく五万と居る。なんちゃって神はいらないのだ。皆テレビで見たあの少女以外は求めていない。
野次の様な罵声に似た怒号が直ぐにその場を支配し、暴徒の群れが動き出したその時であった。
「愚かな者共め」
使徒を名乗る男が頭上に飛び上がると、なんと空中で止まったのだ。
「民衆を惑わせ影でこそこそしている連中が居るようだ」
そう言って右手を振り上げた刹那、稲妻が暴徒に降り注いだ。悲鳴と叫び声がその場を包んだが、稲妻をその身で受けた者は50人程で後の暴徒達は全くの無傷である。倒れた者達は皆各国の陽動部隊で、民衆を意識操作で暴徒化して誘導していたのだろう。
「どこの国のスパイなのかは後で調べるとして、皆の者よく聞くが良い。」
知らぬ間に辺り一面静まり返っていた。それもそのはず目の前に空に浮かびながら「神の使徒」を名乗る人物が居るのだ。本物だ!本物が居るぞ!神の使徒だ!
生唾を飲み込む音が聞こえそうなほど静まり返った中で神の使徒は静かに言った。
「神は今眠りに付いておいでだ。お目覚めになり御言葉を頂くまで、我も現状を見守るつもりで居たが騒がしくて堪らん」
そう言って少し俯き考えた素振りを見せた後、凄みを効かせた声色でこう言った。
「神の眠りを妨げる者達全てに告げる!神の眠るこの地は神聖なものとしれ。厄災を運び込みし者の国は、我が直接出向き滅ぼしてくれよう。何ならこの世の全てを浄化し尽くしても良いのだぞ。な~に7日も有れば充分だ」
神の使徒を名のる男はどちらかと言えば優男だが、この時はとてつもなく冷徹に凄みを効かせた言い回しをしてみせた。
いつの間にか暴徒は全てその場でひれ伏し、使徒に対して祈りを捧げるものまで居た。
「忘れるな神の御子らよ。神は何処にでも居るし何処にも居ない、望むなかれ奪うなかれ安息も絶望も神の御心次第だと知るが良い」
そう言い残すと神の使徒は光に包まれながら消えてしまったが、その場で祈りを続ける者が後を立たなかった為に、議事堂前が平常を取り戻すのに半日以上掛かる事となった。
この日の出来事は映像として残ってはいなかったが、千人近くの民衆、議事堂を守る警官隊及び議事堂に集まっていた政府関係者が目撃した事により真実の出来事としてニュースで使徒の言葉が伝えられる事となった。
神の機嫌を損ねたら世界は滅亡する!
国の名前が変わると言う事がどれだけ重大な事かは誰でも知っている、だが神が眠る神聖な大地とされた事により神国と名を変えるのなら喜ばしい事だ!と国民に反対する勢力は生まれなかった。
他国はまさしく「触らぬ神に祟り無し」的な態度にうってかわり、傍観を決め込む姿勢のようだった。
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