7 / 45
~本編~
大好きな姉ちゃんまであと少し!
しおりを挟む
ボスとジオと一緒に闇を駆ける。
俺は子どもだからもっぱらボスに抱えられての移動だけど、そのおかげで冷え切った夜の空気も月が顔を隠してしまった真っ暗闇もへっちゃらだった。
ボスが怖いことから俺を隠してその間にジオが悪いやつらをやっつける。
何度かそんなことを繰り返した時、ボスが苛立ったように舌を打つと同時に大きく身体が揺れた。
―ズカン―
すぐ側で誰かの命を奪う音を聞いた。
今までへっちゃらだった気配が急に怖くて仕方なくなった。
むせかえる血と硝煙の匂いも大きな銃声も誰かが地面に倒れる音も全部が全部怖かった。
だけど、これがボスたちが今まで俺に見せないように隠してきたボスたちの生きる世界で、俺がボスたちの側にいるためにはいつか必ず知らなければならない世界なんだ。
いつか知るはずだったそれが予定よりちょっとだけ早まっただけ。
俺はボスの身体に押し付けていた顔をゆっくりあげた。
ぐっと眉間にしわを寄せて俺を抱えていない方の手で銃を構えるボスは今まで見たどんな時のボスより怖くてカッコよかった。
なによりもお腹に怪我をしてることなんて忘れちゃうくらいに圧倒的に強くて、なんだかすごく安心した。
少し離れたところでジオがニヤリと笑う。
「誰のモンに手ェだしたのか、誰に喧嘩売ったのか、後悔しながら死にやがれ」
キラリと白刃が闇に滑る。
怖いはずなのに、その光景はとても綺麗だった。
「リヒト」
「だいじょうぶ!」
静かなボスの声に元気いっぱいに答える。怖くない。怖いけど、怖くないよ。
だってボスたちはいつだって俺を守ってくれるヒーローだもん。
それにコイツらは姉ちゃんを攫った悪いやつでしょう?
だから、大丈夫。
「無理はすんな。怖かったら目をつぶって耳を塞いでろ」
「ほんとに大丈夫だよ。ボスとジオが一緒だもん。
それに俺、姉ちゃんほど泣き虫でも怖がりでもないし!!」
俺の精一杯の強がりにボスはきょとんとしてジオは盛大に吹きだした。
「ぶはっ!!この前姫と一緒に談話室でビービー泣いてたのは誰だ?」
「あ、あれは違うもん!!べつにゾンビが怖かったんじゃないもん…!!」
「ふぅん?ゾンビねぇ?」
「ジオのばかーーーー!!」
ニヤニヤするジオに俺はなんだかすごく恥ずかしくなって叫んだ。
だって俺まだ6つだもん、怖くて何が悪い!怖かったけど、怖かったけど、ホントはがまんできたもん。
でも姉ちゃんがわんわん泣くから俺もつられちゃっただけだもん!!
そ、そりゃ、ひとりで寝るのが怖くてボスのベッドに潜り込んだけど、それは姉ちゃんも一緒だもん!!
「耳元で喚くな。テメェも喋ってねぇでキリキリ働け。次が来たぞ」
悠然とジオに命令するボスは姉ちゃんがお話してくれた物語の王様みたいだった。
だから、ジオは姉ちゃんのことを姫って呼ぶのかなぁ?
そんなどうでもいいことを考えながら俺はボスたちと一緒に闇の世界を突き進む。
血と硝煙の臭いが濃くなる程に、身体を揺する振動が大きくなるほどに、姉ちゃんに近づいている気がして俺は興奮を抑えつけるようにボスにしがみついた。
大好きな姉ちゃんまであと少し!
(もうちょっと、もうちょっとで会えるよ!)
(すぐに迎えに行くから早くぎゅってして!!)
俺は子どもだからもっぱらボスに抱えられての移動だけど、そのおかげで冷え切った夜の空気も月が顔を隠してしまった真っ暗闇もへっちゃらだった。
ボスが怖いことから俺を隠してその間にジオが悪いやつらをやっつける。
何度かそんなことを繰り返した時、ボスが苛立ったように舌を打つと同時に大きく身体が揺れた。
―ズカン―
すぐ側で誰かの命を奪う音を聞いた。
今までへっちゃらだった気配が急に怖くて仕方なくなった。
むせかえる血と硝煙の匂いも大きな銃声も誰かが地面に倒れる音も全部が全部怖かった。
だけど、これがボスたちが今まで俺に見せないように隠してきたボスたちの生きる世界で、俺がボスたちの側にいるためにはいつか必ず知らなければならない世界なんだ。
いつか知るはずだったそれが予定よりちょっとだけ早まっただけ。
俺はボスの身体に押し付けていた顔をゆっくりあげた。
ぐっと眉間にしわを寄せて俺を抱えていない方の手で銃を構えるボスは今まで見たどんな時のボスより怖くてカッコよかった。
なによりもお腹に怪我をしてることなんて忘れちゃうくらいに圧倒的に強くて、なんだかすごく安心した。
少し離れたところでジオがニヤリと笑う。
「誰のモンに手ェだしたのか、誰に喧嘩売ったのか、後悔しながら死にやがれ」
キラリと白刃が闇に滑る。
怖いはずなのに、その光景はとても綺麗だった。
「リヒト」
「だいじょうぶ!」
静かなボスの声に元気いっぱいに答える。怖くない。怖いけど、怖くないよ。
だってボスたちはいつだって俺を守ってくれるヒーローだもん。
それにコイツらは姉ちゃんを攫った悪いやつでしょう?
だから、大丈夫。
「無理はすんな。怖かったら目をつぶって耳を塞いでろ」
「ほんとに大丈夫だよ。ボスとジオが一緒だもん。
それに俺、姉ちゃんほど泣き虫でも怖がりでもないし!!」
俺の精一杯の強がりにボスはきょとんとしてジオは盛大に吹きだした。
「ぶはっ!!この前姫と一緒に談話室でビービー泣いてたのは誰だ?」
「あ、あれは違うもん!!べつにゾンビが怖かったんじゃないもん…!!」
「ふぅん?ゾンビねぇ?」
「ジオのばかーーーー!!」
ニヤニヤするジオに俺はなんだかすごく恥ずかしくなって叫んだ。
だって俺まだ6つだもん、怖くて何が悪い!怖かったけど、怖かったけど、ホントはがまんできたもん。
でも姉ちゃんがわんわん泣くから俺もつられちゃっただけだもん!!
そ、そりゃ、ひとりで寝るのが怖くてボスのベッドに潜り込んだけど、それは姉ちゃんも一緒だもん!!
「耳元で喚くな。テメェも喋ってねぇでキリキリ働け。次が来たぞ」
悠然とジオに命令するボスは姉ちゃんがお話してくれた物語の王様みたいだった。
だから、ジオは姉ちゃんのことを姫って呼ぶのかなぁ?
そんなどうでもいいことを考えながら俺はボスたちと一緒に闇の世界を突き進む。
血と硝煙の臭いが濃くなる程に、身体を揺する振動が大きくなるほどに、姉ちゃんに近づいている気がして俺は興奮を抑えつけるようにボスにしがみついた。
大好きな姉ちゃんまであと少し!
(もうちょっと、もうちょっとで会えるよ!)
(すぐに迎えに行くから早くぎゅってして!!)
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる