完全幸福論

のどか

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第2章~守るために強くなると誓いました~

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いつも以上にテキパキと仕事をこなし、何度も追加がない事を確認するリヒトにジオとニナは首を傾げる。

「休みとなればちい姫たちに捕まって潰されるっつーのに」
「どこかお出かけなさるんでしょうか?」

でもお茶会のお菓子はリヒト様が用意されてたような……。
ふたりの口に出てしまった疑問にリヒトは作業する手を止めて不思議そうに目を瞬いた。

「お菓子はお茶に参加できないお詫びだよ。言ってなかったっけ??」
「聞いていません!というか、リヒト様。」
「ちい姫たちにはもちろん言ってあるんだよな?」

縋るような視線にリヒトは小首を傾げながらどうだっただろうかと記憶を掘り起こす。

「どうかなぁ、ジオたちに言ってないならたぶんセイラたちにも」
「私、急に用事ができました!お菓子はとり置きお願いします!!」
「待て!街に行くなら荷物持ちが必要だろ!俺も行く!!
 そう言う訳で俺とステラの分も残しとけよ!!」

脱兎のごとく執務室から駆けだしたふたつの背中をリヒトは呆然と見送る。

「なに、この反応……」

ヒクリと頬を引き攣らせながらリヒトは自分がお茶会に参加しないだけで一体何が起こるというんだろうか、と少し不安になった。
リヒトにとってセイラとアルバはお転婆でも気が強くてもお腹がほんのり黒くても猫っ被りでも可愛い妹と弟だ。
あんな反応をされる覚えはない。
しかし、お見合いの一件で自分の影響力をほんの少し理解したリヒトは可愛い弟妹たちは時と場合によって暴走するということも理解した。
それでも、あのジオとニナの反応は大げさすぎる気がする。

「というかお菓子の確保を忘れないところが何とも言えない」

ジオが作る方が絶対おいしいのに。
リヒトのお菓子作りの腕は全てルナに付きあった結果だ。
家事から育児、戦闘までオールマイティーにこなすジオには程遠いと思う。
確認中の書類を放りだして飛びだしていった上司夫婦にリヒトは小さな溜息を零して、どうやらボスに見つかったらしいふたりを追いかけた。
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