黎明が紡ぐ夜の物語

のどか

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~後日談・番外編~

君と歩き始めた日

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与えられた領地はトンデモナイ場所だった。
王都から遥か離れたこの国の最果てにある土地。
国からはなにも与えられず搾取され続け、挙げ句の果てには内乱に巻き込まれ、外からの甘い毒に隠された侵略に怯える内憂外患が絶えない土地。
望まぬ領主の就任に不信を持つ者、ようやく現れた国から派遣された領主に希望を抱くもの、それぞれの反応に手を焼かされながらの仕事。
領地と領民の把握、今まで国の目をかいくぐり好き勝手やってきたであろう領主たちの残した負の遺産の整理。
ここに居を落ちつけてからずっと朝から晩まで仕事漬けの日々だった。
屋敷に帰るとナハトを迎えるのは大抵、待ちつかれて眠るディアナの姿だった。
机に突っ伏して寝息を立てるディアナの姿に何度も後悔して、ねぼけまなこで「おかえり」と笑う姿に何度も癒やされる。
最低限の生活ができる程度には整えてから移り住んだが、それでもディアナの苦労は計り知れない。
おまけのこのだだっ広い屋敷にひとりきりだ。
ひとりきりで、無駄にある部屋の掃除をして、食事を作って、ナハトの帰りを待つ。
そんな生活しかさせてやれない自分が情けない。だけど、それもあと少しで終わる。
町のことを任せられる人間が増えてきた。
きっとこれからは外回りより、屋敷でできる仕事が増えるだろう。
なによりも、少しずつ、この土地が、人が、自分たちを受け入れ始めた。
サラサラと指先から零れる髪を何度も掬っては指に絡めて遊びながら無防備な顔で寝入るディアナを見つめる。

「悪いな」

髪で遊んでいた指を頬に滑らせて労わるように撫でるとふるりと睫が震えてうっすらと瞼が持ちあげられた。

「ぅん、ナハト??」
「あぁ」

まだ覚醒しきっていない声に小さく笑えばつられるように花のような顔がふにゃりと弛んだ。

「おかえり」
「ただいま」

この笑顔を、守ろうと思う。
自分の手でディアナを幸せにしてやりたいと強くそう思う。
もう、その役目を他の誰かに譲ろうだなんて思えないくらいに愛しくて堪らなかった。




君と歩きはじめた日
(ぎゃ!歩ける!自分で歩けるからおろせ!!)
(色気のねぇ悲鳴だな)
(悪かったな!じゃなくてホントにおろして!怖い!恥ずかしい!!)
(うるせぇ。耳元で喚くな。落すぞ)
(~~~っ!?)
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