爆弾魔の日記

藤白 圭次郎

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焦燥感

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「人間って嬉しいことよりも怖いことの方が覚えているんですよ」
スタジアムの裏手に売店を出している協力者は、仕切りにその話を口にした。
そうなのかと答える甲の興味は、完全にその話に移っていた。
「ええ、そうです。コミュニティの規範意識だとかで」
「子供の頃の思い出は嫌なことしか覚えてないのもそれなのか?」
「そうなんですよ!あれも生存のための本能だそうで」
成程いいことを聞いたと喜んでいる甲を押しのけ、
「早く確認に行け」
とせかした。
いいだろうが別に、と口を開くの予期し、
「よくないからな」と釘を刺す。
協力者は、気にしていないのか、気づいていないのか、何も言わずにそこに向かった。
「ないです」
と、程なくして協力者は、困り顔で戻ってきた。
「ないだと?」
取り除かれているとすればここ以外の二つ、階段かカメラスペースに仕掛けたものだと思っていた。そちらの方が圧倒的に合理的に見えるからだ。実際にはそれを見越して、売店に仕掛けたこの爆弾がメインで、他は解体されても問題ない構造にしてある。
「だから気遣いが足りてないと言っているんだ」
乙の呟きは甲には聞こえない。
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