勧善懲悪のルール

藤白 圭次郎

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勧善懲悪のルール

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「時々考えるんだけどね」
 私の前に座る友人は、そう言った。
「なにを?」
「神がいればさ、世の中の悪事が完全になくなるだろうなってことを」
「あー、どうだろうね」
「思わない?きっと大量の悪人が裁かれるよ」
「どうかな」
 私はペットボトルの水を飲み干す。
 少し、体がよろける。

 二階堂氏は目を覚ます。
 顔を洗い、朝食を済ますと会社に向かう。
 半年前世界に大きな衝撃が走ったが、今となってはなにも変わらない。
 通勤に使う電車は混んでいるというほどではなく、立っている人がちらほらといる程度だ。
 一人の、立っている老人に目が止まる。
 気の毒だと思いながら、席を譲る気にもならない。仕方ないだろう。
 と思っていると、頭をつままれる感触を覚える。
 突如正体のわからないリングに吸われた。
 リングの先は、真っ暗な、この世のものとは思えない空間が広がっていた。
 頭がついていかない。
 目の前にいるのが半年前、悪を裁くと宣言した神だからだ。罪状が読み上げられる。
 二階堂氏は、絶望する。


「俺はなにを聞かされてるの?」
「この後、悪人を裁いて退屈した神が道徳的な悪を裁き続けて、人類は反乱し大幅に数が減るんだ」
「なるほどね」
 そう言ったきり黙り込む。
 彼の空想が実現すれば、現在進行形で、例えば目の前の老人に席を譲らない彼のことを、神は遅かれ早かれ裁くだろう。
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