日常も友となら

緋色

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【第七話】デートについて行くのも友となら 後編

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視点: 阿佐美 徹也

 僕は今2人と離れ、単独行動をしている。すぐに2人と連絡が取れるようにスマホは取り出したまま移動し、目標を見つける。
徹:『目標発見。いつでも接触できる』
充:『了解。タイミング合わせて動こう』
徹:『うっす!』
 目標の女子三人組は、先程と同じように龍がいる店舗の隣の店で龍の様子を伺っている。龍の様子を見るのに必死で、僕がストーキングしてるのなんて気づく様子も無さそうだ。
徹:「女の人を付きまとう趣味はないけど許してね……」
 僕は少しだけある罪悪感を拭うようにつぶやく。
充:『GO』
徹:『OK』
 充の指示に簡単に返事をしながら、三人組へ近づいていく……。
徹:「さっきはどうも」
 僕がそう声をかけると3人は不信そうにこちらを見てきた。僕を見るなり、眉をひそめる。
女A:「……どうも」
徹:「龍のこと、追ってるんですか?」
女A:「別に……あなたには関係ないですよね?」
徹:「うーん。どうなんでしょうね。龍の友人としては関係ないことはないと思うんですけど」
女A:「……」
徹:「あはは、そんな敵意を込めた目線向けないでください。僕は一応協力しようと思って来たんです」
 僕がそう言うと、三人組は予想外の発言だったようで目を丸くし、顔を見合せた。
女A:「……どういうことですか?」
 僕はこの三人組に興味がないので名前を聞くつもりはないのだが、1人の女しか会話をしてこない辺り、この女性がリーダー的立ち位置なのだろうか。それともただ一番他人と話せるだけなのか。
徹:「僕も龍と仲良くしてはいますけど、一ヶ月もせずにすぐに彼女ができてる感じには少なからず不満があってですね……。もっと人選ぶとか、まずは友達として仲良くなってからとかにした方がいいんじゃないかとか思ってるんです。だからあなたたちがこれから何をするかによって協力したいなと。もちろん龍にも、さっきいた2人にも言ってません。僕個人的な考えで動いてます」
女A:「……。ちょっと待ってください」
 そう言うと3人は円になり相談を始めた。それを確認し、僕は持ってたスマホに『今だ。移動して』と素早くメッセージを入力し、送信する。
 3人はこちらの様子をチラチラ見ながら、話してる。僕は待っている間、3人の方をあまり見ないように腕を組みながら、今いる店をボーッと見回していた。
女A:「あの……」
徹:「ん、なんでしょ?」
女A:「協力ってなにをしてくれるんですか?」
徹:「そちらが何をするかによるんですけど……まぁいいや。この後、僕らは龍にドッキリとして接触するつもりです。その時に得た情報をそちらに教えたり、もしこのままついて行って、何かのタイミングで龍を見失ったとき、龍の位置を教えるなどの協力をしようかと」
女A:「……」
徹:「ちなみに、あなた達が相談してる間に龍たちは移動しちゃったみたいですね」
女A:「えっ……!?」
 三人組が龍がいた店の方を見に行く。辺りをキョロキョロ見渡したあと、こちらに戻ってくる。
徹:「どうしますぅ?僕としてはどっちでもいいんですけどね。ただそろそろ戻らないと不審がられるので、早めに決断してもらえるとありがたいんですけど」
 僕は挑戦的な視線を向ける。Aは少し考えたあと、「大丈夫です」とだけ僕に伝え、3人で龍を探しに行った。
 僕は3人を見送ると、『誘導は無理そうだ。プランBでいこう』とメッセージを送信した。
充:『了解。こっちの仕込みは完了したよ』
徹:『さっすが。合流する』
充:『フードコートで合流しよう。お腹空いた』
徹:『おっけー!』
 僕はメッセージを送信すると、軽やかな足取りでフードコートに向かった。

 …………。

 フードコートで充と将太朗と合流し、早めの昼食を済ませ、今後の動きをまとめることにした。
徹:「これからどうする?言ってもそんなにやることないよね」
充:「そうだね。龍たちは映画見に行って、あの三人組に追いかけられる心配はなくなったから、映画が終わる前に仕上げをして終わりだね」
将:「それまでちょっと時間あるよね」
充:「うん。そうだね。ただ映画が終わる直前くらいに仕上げをしたいから、先に三人組見つけておきたいなぁ」
将:「あーはん。確かにね。途中で帰られて、ずっと探すとかなったらめんどいしね」
充:「そうそう」
徹:「龍のストーキングだったのに龍のストーカーをストーキングすることになるとは思わなかったよ。そうと決まれば手分けする?」
充:「うん。将太朗は1階、徹也は3階、俺は2階でいい?」
徹&将:「「OK」」
充:「じゃあ見つかったら連絡ってことで」
将:「はいよ」
徹:「まかせとけ」
 2人と分かれ、僕は近くのエスカレーターに向かった。とりあえず3階の端まで移動して、しらみ潰しに探していくことにした。移動しながらも三人組の姿を見逃さないように、注意しながら移動する。3階端は子供が遊べるアスレチックコーナになっていた。さすがにこの辺にはいないだろうと考えつつも、一応ざっと見てみる。よし。いない。反対側まで見ていこうかと思っていると、スマホ着信音が鳴る。充からだった。
徹:「どった?」
充:「いたわ」
徹:「えぇ……早いな」
充:「俺もびっくりだよ。フードコートにいるから戻ってきて」
徹:「りょうかーい」
 通話を切り、来た道を戻る。さっき使ったエスカレーターを降り、フードコート側に向かうとフードコートを見渡せる位置にあるベンチで将太朗と充が合流していた。
徹:「早かったねぇ。どこにいる?」
充:「そば屋前の席に座ってる。これから普通にお昼食べるみたい」
将:「ほんとだ。まぁ、時間的にもそうなるか」
徹:「さっき会った時よりも負のオーラ出てる気がするぞ?」
充:「目的の人を誰かさんのせいで見失って、ここまで見つからないとは思わなかったんじゃない?」
徹:「てへっ☆映画終わるまでどれくらい?」
充:「あと……1時間あるね。ご飯食べてもらって、もう少し泳がせたら仕上げだ」
将:「あの感じなら上手くいきそうだね」
充:「俺はここで見とくから、遊んできてもいいよ?」
将:「私は特にいいかなー」
徹:「えっ、じゃあ僕アイス買ってくる。なんかいる?」
充:「どこで買うの?」
徹:「3階に自販機の14アイスあったからそこで」
充:「じゃあチョコチップ頼むよ」
将:「私、ソーダフロート」
徹:「おっけい。行ってくらぁ」
 僕は再び、3階に行きアイスを買いに行くのであった。

 …………。

 三人組がご飯を食べ終え、また龍を探し始めて20分。相変わらず仲良く3人で探している。手分けをするという選択肢はないのだろうか……。
充:「そろそろ行こうか」
将:「おっ、待ってました」
徹:「やっとあの3人から解放される……」
 僕らは早足で遠回りをし、三人組が歩いてる通路の前に先回りをした。周囲を確認しながら歩く三人組に僕らは正面から近づく。Aがこちらに気づいたようだ。気づくや否やこちらに駆け寄ってくる。
女A:「あの!」
 ターゲットは僕のようだった。まぁ、接触したし来るだろうなとは思っていた。
徹:「あ、さっきはどうも」
女A:「龍くんはどこ?」
徹:「あー……それがですね……」
女A:「……?」
徹:「僕らがデートについてきてるのがバレちゃって、怒って帰っちゃいました。ストーカーなんて最低だ!って言われちゃって……。だからもうここにはいませんよ?」
女A:「そんな……」
 僕がそういうと三人組は揃って肩を落とし、出口の方へ向かっていった。
 僕らは離れた位置で、三人組がとぼとぼとショッピングモールを出ていくのを確認し、3人でハイタッチをした。
将:「やったね」
充:「あんなに上手くいくとは」
徹:「泳がせて疲れさせたのが効いたんじゃない?」
将:「そこにもう龍がいないのと、ストーカーなんて最低だ発言のダブルパンチは効いたろうね」
徹:「うんうん」
充:「これでストーカーするのやめて貰えたらいいけどなぁ」
将:「これからもするようなら、また私たちが立ちはだかるだけさ」
徹:「おー、かっこいい!けど、気持ち的にはもうたくさんだよ」
将:「違いない」
充:「あははっ、じゃあ帰ろうか。あっと、龍に連絡いれなきゃ」
 そう言うと充はスマホを取り出し、『ストーカー撃退完了。あとは2人で楽しんで』とメッセージを龍に送信した。
充:「じゃあ、俺たちも帰りますか」
徹:「おーう。なーんかどっと疲れたよ。温泉でも入ってかない?」
将:「いいね!」
充:「賛成」
徹:「おっしゃー!じゃあ行こうぜー」
将:「このデートのこと龍から聞くの楽しみだなぁ」
充:「徹底的に聞かないとね」
徹:「そうだねぇ。あ、そう言えば映画のチケットなに渡したんだ?」
将:「なんだっけ?今、公開中の【君へ届け】だったかな」
徹:「恋愛映画だっけ?」
将:「たしかそう。1人で恋愛映画のチケット2枚買うの恥ずかしかったなぁ」
充:「1番早く映画のチケットを買いに行けるのは将太朗だからね。助かったよ」
将:「……まぁね」
 充に言葉に満足そうに将太朗は呟いた。
 こうして僕らの小さな作戦行動は幕を下ろした。龍の恋バナを聞けるのが楽しみだ。
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