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美味しい肉まん

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『準備は念入りに』

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 夢を見ていた、アイツらがお互いをかばい合い切磋琢磨している様だ。だが場面は移り変わり今度は、二人がお互い三角形の形をした剣の様なものを持ち二人共泣きながら向き合って居る。そして決着が着くどちらか一人の勝者しか選ばれなかったのだろう、だが勝った方の女の子は負けた女の子を泣きながら抱きしめ涙を流し一言震える声で

『ユルサナイ』

 そこで目が覚めた、辺りを見渡すここは居間の様だった。頬が痛い……往復ビンタを食らいまくって気絶したのか、部屋には塚田さんしかいなかった。
 起き上がると塚田さんが近づいてきて水を飲ませてくれた。
「ヤガミさん……思い出しました? よ……アナタという人は! 何が生きるですか! 自分から死んで、どういうつもりだったんですか!」
 塚田さんが泣きながら抱きついてくる、なんで記憶が? いや未来の事が……なぜわかる!? 塚田さんを引き離す
「なっなんの事か分かりませんよ?」
「誤魔化しても無駄です、今の私にはこれから起きる事。将来の事までハッキリと分かりますよ」
「ちなみに……どんな記憶ですか?」
「アナタが死んだ五年後に幽鬼と呼ばれる化け物との戦い」
「私は……渡辺茉希と鷲尾さん達三人で戦い迎え討ち勝ちました」
「それだけ? プライベートは?」
「私と夫の間に子供が生まれた事までちゃんと覚えてますよ」
 ん? ちょっと違うな、塚田さんは茉希ちゃんと拗れた関係になった筈だが……
「お子さんは?」
「双子が産まれて幸せに暮らしていましたよ、幽鬼共が現れるまでは」
「いつその記憶を?」
「ついさっき頭をぶつけたでしょう、その時に一気に流れ込んで来ましたよ!」
「本当はヤガミさんと記憶のすり合わせがしたいのですが……やるべき事があるのでしょう?」
 ならもう隠さなくていいかな? 取り敢えず宮司さんが待つ部屋へと向かう。
「おおっ無事でしたか! 女性の平手打ちで気絶など情けないですぞ!」
「うるさいよジイさん」
「ジイさん!? 何というか不思議な人ですね……」
「それにしても無事で何よりです」
 そう言われて塚田さんの方を見る、彼女は袖を捲り右腕を見せた。そこには痣の跡が消えていた。
「見ての通り『呪い』は消えたようです、がこれからの事を話し合いましょう」
「と言いますと?」
 俺は塚田さんに続いて話す
「この地は霊峰白山につらなる神格も高き神社ですよね? ならば今五泉市で起きている『呪い』を祓う剣がある筈です、三角剣が」
「なるほど……」
「俺は三角剣を作る為にここへ来ました、ジイさんが何と言おうと作ります」
「まぁ麓の土地に関しては大体の事は把握しておりますで」
「じゃあ尚更だ! さっさと行きますよ」
「ちょっと待って下され『呪い』の根源についても知っているのですか!?」
「ヒエとヤエの話なら割愛して頂いて結構ですよ」
「なんと!?」
「ジイさん今は『ヒエ』が根源何だよね、『呪いを』断ち切る為に必要なんだ!」
「それではヤガミさん塚田さん此方へ」
 俺たちを連れて神社の奥迄案内をしてくれた。そこには色々な物がお供えされていた。その奥にはよく知る三角形の剣があった。
「恐らくは女神が『呪い』と化したのでしょう、あちらの剣に見覚えは?」
「嫌になる程にね」
 そう答えた
「あれが三角剣と言います、厄から護って下さる有り難い剣です」
「ですが現在、現存するのはあれだけなのです」
「知ってる、さっきも言ったが時間が惜しいさっさと作るよジイさん」
 説明したかったのだろうが、がっくりと項垂れているジイさんを引きずり納屋へと向かう。
「ヤガミさん待って!」
 塚田さんに呼び止められた
「私も行きます!」
「はぃ? 塚田さんはお茶でも飲んで待ってて下さい」
「私にも必要なんです三角結界の為に三角剣が」
「そんな事まで覚えているんですか?」
「なんとなくですが……私を見てください」
 塚田さんを神気を通した目で見ると全身に霊気を纏っている。
「あぁ~分かりました、じゃあ一緒に行きましょう。神木を選んで下さい後は俺が……」
「最初から最後迄やります、今度はヤガミさんを守りたいですから……それに必要なのは私達だけじゃないでしょう?」
 頑固だなぁもう……もう俺はニンゲンじゃないのに。
「じゃあ付いてきてください」
「へっ!? なんですっと! 私め今日は腰が……」
「「良いからさっさとくる!」」
「私は手伝うだけですからな!」

 時計を見る午後三時過ぎか、今日はもう間に合わない。でも作って明日へ繋ごうそして少しでも『呪い』の被害者が出ない事を願った。

「ヒィヒィ」

俺は息切れを起こしていた。何度繰り返してもこの作業はキツイ
「ほらもうひと踏ん張りですから頑張って!」
「やっかましぃわ!」
 塚田さんも神木を選び、ジイさんに手伝って貰いながら切り倒してしまっている。ずるい! だが今回作る三角剣は、より強力な物を作り出す為だ神木選びは慎重に行った。以前は『神木が選ぶ』と云われたが、今回は逆だ俺の神気を開放して耐えうる神木を探す。
 結果見つけたのだが……これが堅い! なかなか進まない。普通の力じゃ駄目って事か……ならばと斧に神気を通すと幾分か速くなった。良しこれなら!
 その瞬間『時間』が止まった、辺りは静寂が支配している……厳かな声が聞こえてきた。
「ヤガミタケシよ……何故もがくのです……」
「知りませんよそんな事! 俺に言わないで二人の女神達に聞いてくださいよ!」
「断ろうと思えば幾らでも断れる筈です……なのにアナタは続けている」
「アイツらの頼みは断りづらくってねぇ。それにこれには俺の意思も半分位は、有るんですよ大女神様」
 話している間にも斧を振るう
「今回の周回には大女神様も力を貸してくれてるじゃないですか!」
「俺の記憶は残ってる! 塚田さんの記憶まで……何故ですか!」
「歴史は収束して行きますからね、最善の結果から記憶を呼び覚ませる様にちょっと手を貸しただけです」
「じゃあ塚田さんの辛い記憶は?」
「貴方が歴史を、昨日変えた影響により変わっています」
「そりゃ良かったです!」
「歴史の改変は既に始まり、歯車が新しく廻り始めて居ます」
「ですがヤガミタケシ……貴方は既に輪廻からも外れ、今その魂はヒエとヤエと溶け合っています」
「もう貴方の運命だけは変えられません、それでも抗いますか?」
「愚問です……俺はアイツらが喜ぶなら……皆が幸せになれるのなら何度だって繰り返す! ……でも出来れば今回で終わりに……」
 最後に泣き言も付け加えておく。
「面白い事を言いますねヤガミタケシ……私に出来ることはちょっとの奇跡です。手繰り寄せられるかは貴方次第です、幸運を祈っていますよ」
 鳥達の羽ばたきで意識が戻る
「ヤガミさん危ない!!」
「へっ?」
 切り倒した神木が俺めがけて倒れてくる所だった。
「ひぃあああああ!」
 既の所で避ける、あっぶな! 大女神様も大概ポンコツか? 二本の神木を一人で二往復で運んだ、酷くない? まっいいか
「ジイさんは塚田さんの方を頼む。俺は試したい事があるから一人でやる。道具借りるよ」
 鋸で神木を切って行く、今回作るのはある意味凶悪な見た目になるからだ。神気を流し込みながら丁寧に切っていく。思ったより進みが悪い、神木と神気を同調させて作っているんだ仕方がない……塚田さんの方を見るとジイさんがヒイコラ言いながら木を切っていた、うわぁ……塚田さんは女性だまぁわかるけどさ……塚田さんは彫刻刀で一生懸命彫っている。負けてられないな!
 夜も遅くなり塚田さん達は今日の作業は終わりにしたらしい。
「ヤガミさんも今日はもう休んだほうが……」
「大丈夫だから、気にしないで休んで良いよ」
「それはもうニンゲンじゃ無いからですか?」
 気にせず黙って作業を続ける。
「ヤガミさんが死ぬ事は元を辿れば、私のせいなんですよね……私が選んだから……」
「何も言ってくれないんですか?」
 黙って続ける。
「昨日もあんなに私を家に帰したがったのも理由が……」
 手を止めずに答える
「塚田さんさ……未来なんて誰にも分からないんだよ、もしかしたら俺も生き残れるかもね……」
「そっそうですよね、大丈夫です! ヤガミさんの背中は私が守ります!」
「違うよ……塚田さんが守るべき者は俺じゃなくて家族だよ」
「何でそんなこと言うんですか……私は欲張りで執念深いんです、皆を守ります。その為にはヤガミさんにも生きてて欲しいんです」
 真面目だなぁアイツらにも聞かせてやりたい。
「おやすみ塚田さん」
 話を無理矢理切って作業に没頭していく、塚田さんはまだ何か言いたげだったが。
「おやすみなさい」
 とだけ言って中へと入って行った。それからどれ程の時間が過ぎただろうか、形になってきた。今迄の三角剣とは違う形だ、日本刀に近い形となっている。刃の部分は鋸のように細かい三角が刻まれている切先も三角で仕上げた。ここから最後の仕上げだ、神気は行き渡っている柄の部分は革巻きで仕上げた。さぁ刃の部分だ丁寧に彫刻刀で彫っていく、空が明るくなりつつあった。ジイさんが起きて来るなり驚いている。
「何と立派な三角剣! いや三角刀と言ったところですかな!」
 ジイさんにも霊力がある筈だ、だからこそ興奮気味なのだろう。俺は最後に鍔の三角をはめ込み。
「完成だよ、流石に疲れた……お風呂借りるよジイさん」
「ごゆっくりと」
 入れ替わりに塚田さんが出てくる
「おはよう御座いますヤガミさん」
「おはよう塚田さん、風呂入ってきますね」
「ごゆっくりどうぞ」
 屋敷の中に入り、熱い風呂に身を浸からせる。何という心地良さだろうかゆったりと浸かっていると記憶を辿る。明日にはアイツらとの決戦だ出来ることは全てやっておこう。一応鷲尾さんとは今回は面識がないが武器を用意すべきか? 簡易的な三角槍も作っておくか? いや茉希ちゃんはまだ子供だ、将来迄戦わせないように今ケリをつける。方針は決まった! 風呂から上がり作業場に向かうと。塚田さんが三角剣を飛ばしていた……おいおい知ってたけどすげぇな、もう三角結界迄発生させている。
 ジイさんが突っ伏して倒れている。その脇には簡単な三角槍と腕輪が用意されていた。
「ちょっと困りますよ塚田さん! なんて物作ってるんですか!」
「将来的に仲間になって下さる人の為ですよ?」
「鷲尾さんならともかく、茉希ちゃん迄巻き込む訳には行かないでしょう!」
「使わなければそれに越した事ないでしょう?」
「まぁそうですが……このジイさんどうするんですか?」
「まぁ昨日から神木を切って下さりましたからしょうがないですね」
 ジイさんの尻めがけて塚田さんが三角剣をコントロールして突き刺す。
「ぎゃひいいいい!」
「ほら元気!」
 えげつないなぁ……ちぃっとまてよ? 疑問がよぎる
「塚田さん今何歳?」
「はぁ? 二十な……はっ!? あっあれ私は……えっと」
 やっぱりな記憶がこんがらがるって言うのかな?
「塚田さんは二十二歳ですよね!」
「えっとそうですね! 考えない事にします……」
 取り敢えず出来た荷物を整理する
塚田さん専用三角剣七本
簡易三角槍一本
腕輪一組
神三角刀一本
 まぁ上出来だろうね、ジイさんに餞別としてお手水と御神酒を分けてもらい。三人に見送られながら山を降りて行った。

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