40 / 78
イニシャルMH
しおりを挟む
アタシとヒエが浅い眠りから目覚め、暖かい布団から名残惜しそうに……静かに眠っている2人を、起こさないように静かに起きて身支度を済ませて玄関を後にする。
「さっ寒い! 私今日は……」
「ヤエに怒られるよ」
「アタシ等の為にヤエは奮発して防寒着を買ってくれたんだ」
「わかってるって……」
「じゃあ行こう」
ヒエの手を引いて歩いて配達所まで向かうと、今日は早めに新聞の荷降ろしが始まっていた。急いでチラシを折り込む作業をヒエと並んで始める。
自分が配達する担当分を自分のバイクに積み込むと
「ヒエ! 今日も飛ばして行くよ!」
「勝負ね! 何を賭ける?」
「自販機のコンポタ!」
「オッケー!」
2人でバイクを並べると、アタシ達の配達の速さで賭けをしてる。おっさんおばちゃんがスタートのカウントを始める、アクセルを吹かして待つ!
「3! 2! 1! スタァァアアトッ!」
勢い良く発進する! ここ最近ヒエとの勝負は、五分五分迄持ち直して来たんだ! 今月は勝ち越させて貰うよ! 時々凍った路面をタイヤを滑らせながら駆け抜け一軒一軒ポストに丁寧に突っ込んでいく! ここまでは順調! 防寒着のお陰で寒さはキツくない
「サンキュ! ヤエ!!」
まぁ買ってくれた1番の原因は師匠のインフルエンザ何だけどね……それでも! ヒエは村松方面、距離のハンデはあるが、アタシは配達の量が多い五分五分だ。1番の難所の住宅街へと入って行く、ここでのタイムロスは馬鹿にならない! まとまった区画なら脇に新聞を区画分を纏めて挟み込み、エンジンは切らずギアをニュートラルにしてダッシュで次々と投函を繰り返す! いちいちバイクで一軒一軒回るよりこっちの方が早い! まだ空は暗い……さぁ中盤戦だ! 更にスピードをあげる! 次のエリアに向かう為にショートカットをする、アタシのテクニックとカブを信じてタイヤ2本分の細い田んぼ道を駆け抜ける! 今の時期だから落ちても平気だけど、初めてこのショートカットを行った時は水を張った田んぼに落ちて新聞を駄目にして怒られたっけ……だけど! ヒエが現れてアタシの最速配達記録が抜かれた時に、もう一度チャレンジして成功させた掟破りのショートカットだ! 行くぜッ!
結果は……アタシの勝ちだった! だが……ヒエの帰りが遅い、何時もなら……ほぼ同時に帰ってくるのに何か変だ! まさか……転んだか? 皆が心配し始めている、スマホを取り出してGPSで調べて見ると……反応が出ているが動いて……いや動いてる? もしかして……心配した社長が電話を入れてるが出ないようだ
「社長、アタシ行ってきます! 場所分かりましたから!」
「わかった! 気をつけてな!」
地図アプリで確認した場所を頭に叩き込んでカブで勢い良く飛び出す! ヒエ、アンタに何かあったら配達所の皆が……それよりもヤエと師匠が1番悲しむんだよ!
「アタシ達は家族だ!!」
GPSのポイント付近までやって来るとまだ辺りは暗い、スマホを取り出して再度確認すると動いてる?
「こっちか!」
数百メートル離れた場所にヒエがバイクを押しながら歩いていた……まさか……
「ヒエー!!」
「んあ!? 茉希!!」
「何やってんのさ! 社長心配してたよ!」
「いや~油断したわ、ガス欠でさ……帰るまで持つと思ったんだけどね……」
「配達は?」
「それはちゃんと終わらせたよ、さっき言ったじゃん帰るまで持つと思ったって」
「全く心配させないでよ! 今社長に連絡するから!」
さっさと電話を掛けると、社長の安堵の声が聞こえた。
「ガソリン代は後で立替えるから、ちゃんと帰って来なさい」
「わかりました!」
電話を切ると。
「さっさと行こうガススタ迄、まだちょっと歩かないと」
「もう汗だくよ……足が痛い腰が痛い……」
「しょうがないなぁ……心配させた罰だよ」
「心配してくれたの茉希が?」
「だってさヒエに何かあったら悲しむよ?」
「あっ……ごめん」
「今だから言うけど……アタシ、ヤエとヒエに嫉妬してた……アタシには絶対に入り込めない程……」
「私とヤエと健の魂が溶け合っている事?」
「ヒエ達は師匠が人として死んでもずっと一緒なんだよね?」
「そうよ私達の魂は、存在は永遠と言える程……だから?」
「うん、アタシは仲間外れだって……でも諦めきれなくて……アパートに」
「そう言えば隣の部屋から出て、押しかけてきたわね?」
「うん……不安だった……嫌われたら……追い出されたらって」
「でも受け入れてくれた……嬉しかった、一緒に暮らしてお祭り行ったり、指輪を買いに行ったり」
「そのうち気が付いた……あぁアタシはいつの間にか4人で家族なんだって」
「茉希……」
「アタシの家ってさ特殊だったじゃん……友達もだから……アタシが求めていたものが……そこにあったんだ」
「そっか……幸せ感じてる?」
「そりゃあもうビンビンにね! ほらガススタだよ!」
「これで一安心出来るわぁ~」
2台ともガソリンを満タンにすると
「満タンだしいっちょ行っとく?」
「仕切り直しね!」
「オッケー!」
「じゃあ配達所までレディGO!!」
明るくなり始めた空の下カブを爆走させ、ゴールを目指して走らせた。
「たっだいま~」
「おかえりなさい2人共、お疲れ様!」
「お疲れさん!」
「うふぅ師匠! 大好き!」
そう言うと思いっきり抱きついた……もうヒエもヤエも何も言わない。
「どうしたのさ? 茉希ちゃん」
「あはッ! なんでかなぁ?」
同じ男を愛した、それを認め合ったのだから……アタシは最後まで一緒には居られない、それを2人は知っている。ならせめてその時まで4人でいようね……
「さっ寒い! 私今日は……」
「ヤエに怒られるよ」
「アタシ等の為にヤエは奮発して防寒着を買ってくれたんだ」
「わかってるって……」
「じゃあ行こう」
ヒエの手を引いて歩いて配達所まで向かうと、今日は早めに新聞の荷降ろしが始まっていた。急いでチラシを折り込む作業をヒエと並んで始める。
自分が配達する担当分を自分のバイクに積み込むと
「ヒエ! 今日も飛ばして行くよ!」
「勝負ね! 何を賭ける?」
「自販機のコンポタ!」
「オッケー!」
2人でバイクを並べると、アタシ達の配達の速さで賭けをしてる。おっさんおばちゃんがスタートのカウントを始める、アクセルを吹かして待つ!
「3! 2! 1! スタァァアアトッ!」
勢い良く発進する! ここ最近ヒエとの勝負は、五分五分迄持ち直して来たんだ! 今月は勝ち越させて貰うよ! 時々凍った路面をタイヤを滑らせながら駆け抜け一軒一軒ポストに丁寧に突っ込んでいく! ここまでは順調! 防寒着のお陰で寒さはキツくない
「サンキュ! ヤエ!!」
まぁ買ってくれた1番の原因は師匠のインフルエンザ何だけどね……それでも! ヒエは村松方面、距離のハンデはあるが、アタシは配達の量が多い五分五分だ。1番の難所の住宅街へと入って行く、ここでのタイムロスは馬鹿にならない! まとまった区画なら脇に新聞を区画分を纏めて挟み込み、エンジンは切らずギアをニュートラルにしてダッシュで次々と投函を繰り返す! いちいちバイクで一軒一軒回るよりこっちの方が早い! まだ空は暗い……さぁ中盤戦だ! 更にスピードをあげる! 次のエリアに向かう為にショートカットをする、アタシのテクニックとカブを信じてタイヤ2本分の細い田んぼ道を駆け抜ける! 今の時期だから落ちても平気だけど、初めてこのショートカットを行った時は水を張った田んぼに落ちて新聞を駄目にして怒られたっけ……だけど! ヒエが現れてアタシの最速配達記録が抜かれた時に、もう一度チャレンジして成功させた掟破りのショートカットだ! 行くぜッ!
結果は……アタシの勝ちだった! だが……ヒエの帰りが遅い、何時もなら……ほぼ同時に帰ってくるのに何か変だ! まさか……転んだか? 皆が心配し始めている、スマホを取り出してGPSで調べて見ると……反応が出ているが動いて……いや動いてる? もしかして……心配した社長が電話を入れてるが出ないようだ
「社長、アタシ行ってきます! 場所分かりましたから!」
「わかった! 気をつけてな!」
地図アプリで確認した場所を頭に叩き込んでカブで勢い良く飛び出す! ヒエ、アンタに何かあったら配達所の皆が……それよりもヤエと師匠が1番悲しむんだよ!
「アタシ達は家族だ!!」
GPSのポイント付近までやって来るとまだ辺りは暗い、スマホを取り出して再度確認すると動いてる?
「こっちか!」
数百メートル離れた場所にヒエがバイクを押しながら歩いていた……まさか……
「ヒエー!!」
「んあ!? 茉希!!」
「何やってんのさ! 社長心配してたよ!」
「いや~油断したわ、ガス欠でさ……帰るまで持つと思ったんだけどね……」
「配達は?」
「それはちゃんと終わらせたよ、さっき言ったじゃん帰るまで持つと思ったって」
「全く心配させないでよ! 今社長に連絡するから!」
さっさと電話を掛けると、社長の安堵の声が聞こえた。
「ガソリン代は後で立替えるから、ちゃんと帰って来なさい」
「わかりました!」
電話を切ると。
「さっさと行こうガススタ迄、まだちょっと歩かないと」
「もう汗だくよ……足が痛い腰が痛い……」
「しょうがないなぁ……心配させた罰だよ」
「心配してくれたの茉希が?」
「だってさヒエに何かあったら悲しむよ?」
「あっ……ごめん」
「今だから言うけど……アタシ、ヤエとヒエに嫉妬してた……アタシには絶対に入り込めない程……」
「私とヤエと健の魂が溶け合っている事?」
「ヒエ達は師匠が人として死んでもずっと一緒なんだよね?」
「そうよ私達の魂は、存在は永遠と言える程……だから?」
「うん、アタシは仲間外れだって……でも諦めきれなくて……アパートに」
「そう言えば隣の部屋から出て、押しかけてきたわね?」
「うん……不安だった……嫌われたら……追い出されたらって」
「でも受け入れてくれた……嬉しかった、一緒に暮らしてお祭り行ったり、指輪を買いに行ったり」
「そのうち気が付いた……あぁアタシはいつの間にか4人で家族なんだって」
「茉希……」
「アタシの家ってさ特殊だったじゃん……友達もだから……アタシが求めていたものが……そこにあったんだ」
「そっか……幸せ感じてる?」
「そりゃあもうビンビンにね! ほらガススタだよ!」
「これで一安心出来るわぁ~」
2台ともガソリンを満タンにすると
「満タンだしいっちょ行っとく?」
「仕切り直しね!」
「オッケー!」
「じゃあ配達所までレディGO!!」
明るくなり始めた空の下カブを爆走させ、ゴールを目指して走らせた。
「たっだいま~」
「おかえりなさい2人共、お疲れ様!」
「お疲れさん!」
「うふぅ師匠! 大好き!」
そう言うと思いっきり抱きついた……もうヒエもヤエも何も言わない。
「どうしたのさ? 茉希ちゃん」
「あはッ! なんでかなぁ?」
同じ男を愛した、それを認め合ったのだから……アタシは最後まで一緒には居られない、それを2人は知っている。ならせめてその時まで4人でいようね……
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
もうすぐ死ぬ悪女に転生してしまった 生き残るために清楚系美女を演じていたら聖女に選ばれました
来須みかん
ファンタジー
父に頬を激しく打たれた瞬間にメアリーは前世の記憶を思い出した。ここは前世にハマっていた乙女ゲームの世界で、自分は主人公を陥れる悪女メアリーだった。
やり直したくても、もう全てが遅く、明日になれば身に覚えのない殺害未遂容疑でメアリーは拘束されてしまう。
「とりあえず、生き残ろう……まず、それだ」
毒々しい悪女メアリーが、前世の記憶を使い、清楚系美女を演じて媚びて好かれて、時々、癒して救って、乙女ゲームの世界を変えるお話。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる