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異変について聞いてみた!

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 さらに数日が過ぎた、幸いな事に新潟市の守り人と会うことはなかった。普段の会社勤めには何の支障も無かったが……ヤエとヒエの事の方が気になってしょうがない、勢いもあったけど正直に言えば後悔はしていない……ヒエが言ってた、私達にはある意味人間の常識は通用しないわよって……いつの日か二人に言ったことあったけどな。
『じゃあ二人共俺のお嫁さんって事?』
 あの言葉がまさか現実になりかけているとは……二人は大切な存在だ特にヤエは、なのに私達を愛してか……いっそ事実婚って事にしてって……駄目だ! 茉希ちゃんをどうするか、彼女も大切な人には違い無い。ただライクなだけだ……ごちゃごちゃ悩んでいると不意に嫌な予感が頭によぎる、茉希ちゃんは新潟の大学に通っていると言う事は……アカン! もし茉希ちゃんが狙われたら……今日の夕飯時にそれとなく聞いてみよう。

 アパートに帰ると3人共揃っていた、ヤエとヒエの目線が纏わりつく……俺はどうなってしまうのだろうか……じゃない! 食後に勉強中の茉希ちゃんに話しかける。
「あのさ、茉希ちゃんの周りで変な事とか起こってない?」
「ん~~別に何もないかなぁ、どうして?」
「いやほらね、茉希ちゃん可愛いから変な奴とかに絡まれてないか心配でさ」
 どうやら異変には巻き込まれていないと見るべきか。気にはなる……
「あのさ! 今度の俺の休みの日に一緒に大学まで行っていいかな?」
「「何で!!」」
 あっ……ヤエとヒエから怒りのオーラを感じる。
「保護者としてね!」
「師匠……良いよ! 次の休みいつだっけ?」
「15日だけど……どうかな? 俺の青春時代は暗黒期でさ、眩しいキャンパスライフに憧れがあってね」
「ふ~ん? じゃあ、その日なら講義が……昼からだから、本当にそれだけ?」
「ちょっと見たら直ぐに帰るよ」
 そこまで話すと茉希ちゃんがお風呂に入ったスキに、ヤエとヒエに誤解を解いておく。
「本当に見に行くだけなのね?」
「隠れて連れ込んだりしないでしょうね?」
「信用ないなぁ俺……二人共こっち来て」
 ヤエとヒエのほっぺにキスをすると
「もし浮気したら……健を殺して神の座へ一緒に連れ帰らせて貰うわよ?」
「怖いよヤエ……俺の気持ちは変わらない」
「じゃあ何で茉希の大学なんかに興味あるの?」
「俺の過去知ってる癖に……」
「過去って言えば……ねぇ健、小野寺茂子さんて知ってる?」
「誰それ? 俺の過去は知っての通り、職を転々としてたから何処かであったかもね」
「まっそういう訳で次の休みは出かけてくるよ、御土産も買ってくるからさ」

 当日、ヒエに留守番を頼むと茉希ちゃんと一緒に出掛けた。
「師匠が学校か……思い出すって言ったら変だけどさ……」
「どうかした?」
「いや……あの……ほら、敵対してたじゃん……」
「あ~あの時か……覚えているの?」
「うん……」
「まっ俺は気にしてないよ、手でも繋ごうか?」
「うん!」
 この娘もちゃんと守らなきゃな、もし茉希ちゃんにまで危害を加える様ならぶっ飛ばす! 電車の中でも茉希ちゃんは手を離さなかった、流石に新潟の街中では名残惜しそうに離してくれたが……
「師匠! こっちのバスだよ!」
「バスか……そう言えば大学って今は何処になってるの?」
「前と一緒、青陵大学だよ? あれ知らなかったけ?」
「そこは変わってないんだね……凄いんだな大女神様」
「アタシは感謝してるんだ、友達も新しく出来たしね」
「じゃ……」
「彼氏とか興味無いから師匠以外に」
 黙ってバスに乗ると走り出す、並んで座ると。
「師匠の事諦めきれないよ……ヒエとヤエに負けないぐらい好き」
「そっか……俺も好きだよ3人共」
「アタシだけを見てなんて言わない……ヒエもヤエも好き」
「俺達は家族……それじゃ駄目かな?」
「良いよそれでも、でも……一度で良いんだアタシの初めてを……貰って……くれないかな?」
「公共の場でそういう事言わないの!」
「もう! ちゃんと考えておいてね!」
 
 そんなこんなで青陵大学に着くと……感じるな……
「師匠! ここだよ! アタシもう講義だから行くけど捕まらないでよ?」
「大丈夫! あっちに美味しいアイス屋さんがあるから、取り敢えずそっちに向かうよ」
「じゃあね!」
「いってらっしゃい! 茉希ちゃん」
 さてと……アイスの前に行くか! 護国神社へ、近付くと神気が身体中に勝手に満たされていく……本殿から離れた林の中に彼女は居た。
「こちらでは、お久しぶりですね八神さん」
「ですね大女神様、『理由』はもう知ってますよね?」
「ええ勿論、良く救ってくれました。二人は?」
「元気ですよ、人間世界を満喫してるみたいです」
「ふふっ……それだけじゃないでしょう?」
「そうですね……大切な存在です、それよりも……」
「新潟に現れている瘴鬼の事ですね?」
「はい、もし茉希ちゃんに害なす存在なら……叩き潰します!」
「大丈夫……渡辺茉希は、約束通り私が責任を持って守護していますよ」
「と言うか……此方へは被害は出ていません」
「あっそうなんですか? じゃあ駅周辺って事ですか?」
「そうですね……今彼処の土地は、混乱の渦中と言っていいでしょう」
「駅の改修工事とか?」
「そうです……建物などは、デタラメに建てている訳では無いのはご存知でしょう?」
「じゃあ……まさか……」
「嘆かわしい事です」
「じゃあ俺は介入しませんよ、良いですよね?」
「八神さんは充分過ぎる程に戦いました、守るべき者は有るでしょう?」
「ですね! それじゃ大女神様一緒にアイスでも食べに行きません?」
「あら? 宜しいのですか?」
「男一人じゃねちょっと……この間の分も奢りますから」
「少しお待ちを……鳥居の前で待ち合わせましょう」
「じゃあ待ってます!」
 本当に世話になったからな……大女神様は下越地方の大きな神社であれば、どこにでも同じ様に同一人物として存在する。何があったかはもう昔の話だ……鳥居の前で待っていると白いワンピースの美しい姿で現れた。
「それでは行きましょうか?」
「何でも注文して下さい、俺の奢りです!」
「それでは手を……」
 大女神様の手を取りジェラートショップ迄エスコートすると、道中のすれ違う人々が振り返る。まぁ美人だしな……残念な点を除けば……お店に入ると目を輝かせている、そうこの大女神様は甘い物に目がない。
「たまりません……この甘い香り! 八神さん早く座りましょう!」
 店内の客の注目を浴びながらテーブル席に着くと、パンケーキにパフェのビッグサイズを頼み始めた。
「あの……大女神様? そんなに食べれます?」
「何かしら八神さん?」
「何でもないです……」
 悔しいがこんな美女がビッグサイズを食べるとは……だが食べる姿さえ美しい。食後のコーヒーを飲み干すと、窓の外をぼんやり見ていた俺に。
「ごちそうさまでした八神さん」
「食べたんですね……少し海まで行きませんか?」
「構いませんが……どうしたのですか八神さん?」
「ちょっと歩きたいんですよ、海なんて……」
「行きましょうか、八神さん手を」
「ありがとうございます大女神様」
 

 大女神様の手を取ると海辺へと歩き始めた……
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