市霊狩り

美味しい肉まん

文字の大きさ
上 下
1 / 22

あれから五年

しおりを挟む
 「鷲尾さん!そっちに逃げました」
私は取り逃がした事を連絡する
「おいおい京子ちゃんさぁ、俺もう歳なんだぜ?」
「弱音を吐かない!」
「厳しいねぇ! オラよ!」
鷲尾さんの拳で最後の『それ』を叩き潰す
「今ので最後かい?」
「多分」
「一体どうなってんだ?ここんとこほぼ毎日じゃねぇか」

 『彼』が五泉市から『呪い』を消し去ってもう5年が過ぎて、全てが終わり。平穏な日々が続いていた。だが、今年の3月から異常な事件が起きていた。強姦、犯人の居ない殺人事件、警察もお手上げだった。
 そんなある日、刑事の鷲尾さんが訪ねてきた。何でも強姦の犯行現場で、昔話で聞く幽霊が居たらしい。見えていたのは、鷲尾さんだけだったらしく。その場で自らの拳で叩き潰したそうだ。鷲尾さんには『なにか』を叩き潰す力を持つ。私にも力がある『なにか』を私が作り出す結界で封じ浄化して消滅させる。そう鷲尾さんと私には『なにか』が見える、5年前の『呪い』に直接関わった私達と一部の力を持つ人。私達はその幽霊を幽鬼と名付けた。だが実際に動けるのは私と鷲尾さんの二人。今日も幽鬼を退治していた。
 「一体何なんだろうな、若い女は強姦され男は殺される。京子ちゃんも気を付けな」
「じゃあ巻き込まないで欲しかったのですが……」
まあ私はもう若くない、だからこそ私の所へ来たのだろう。ある意味腹が立つ、もし『彼』だったら引っ叩く所だ。
「被害者の『若い』女性被害者の年代は?」
「概ね18~30歳と意外と幅広いんだよ、京子ちゃん今いくつだっけ?」
「今年で27になります」
「まぁ、付き合わせて悪いと思っている。だけどよ、他に頼れる『やつ』が居ないんだよ」
鷲尾さんも『彼』の事を引きずっている、私だって引きずっている。今居てくれたなら、どれ程頼もしいか。居なくなってから分かるその存在を。しかし今はもう、私達だけで究明しなければならない。この事件を、しかし
何も進展がなく。現れては退治する事の繰り返しだけで手が一杯だった。それは仕方ない、幽鬼と渡り合えるのが、私達二人だけしか居ない。何かしら逆転の手立てを考えなければならない。相手の目的だけでも分かれば……
 私は、この市のただの市役所職員に過ぎない。それでもこの力があるという理由と、5年前の事件に関わっていた事により。今回の件に駆り出された、今私の生活は昼夜逆転している。家族も理解してくれている。ありがたい事だ、だからこそ早く終わらせたい。焦るばかりだ……ヒエ様、ヤエ様どうかお力をお貸しください。
 何度目かの夜警を鷲尾さんとしている時だった。
「本当に理由が分からんのがなぁ」
「一連の事件で関連性は今の所分かりませんね」
「まったくよ嫌んなるぜ、まあ幽鬼が出たら取り押さえて尋問! って訳にはいかんしな」
「そもそも対話が出来るのでしょうか……」
突然男の悲鳴が聞こえた、本町の裏路地の飲み屋街の方向からだった。
「急ぐぜ!」
「はい!」
車を走らせる。
 数分後現場には、二人の男の死体があった。身体を袈裟斬りに切り裂かれている。まだこの近くに幽鬼が居る可能性がある、二人で出方を窺う。後ろの二体の死体が、突然立ち上がり私達に襲い掛かってきた。取り憑いて動かしている?
「鷲尾さんその二人を取り押さえて下さい!」
私はポケットの中から、五円玉を三つ取り出して準備を整える。鷲尾さんが意図を察してくれたのか、広い道路迄、二体の死体を引っ張り出してきた。既に二個はセット済みだ。後は鷲尾さんが、其処まで運んでくれれば最後の一個を置くことで結界が完成する。
 
 油断したつもりは無かった。だが突然路地裏へと引き込まれる。幽鬼が五体もいる、口と四肢を押さえ付けられる。声が出せない! いけないこのままだと! スーツを下着ごと引き裂かれた。胸が露わになる、抵抗するが押さえつけられていて動けない。幽鬼が満足そうに胸を擦る。それだけで今迄感じた事のない、抗いがたい快楽を感じる。身体がゾクリとする、幽鬼は丹念に胸をもて遊び胸の先端に噛みつく。甘い声が出かけるが唇をかみしめて堪えた。鷲尾さんの声が聞こえるが声が出せない、もがけばもがくほど。無数の手で押さえ付けられる、下卑た笑いを浮かべ下のスーツを無理矢理剥ぎ取られる。ストッキングも引き裂かれ、下着も剥ぎ足られる。脚を広げられた。悔しさで涙が溢れていく。
 「何やってるのよオバサン、そんなのとヤリたい訳? 正気?」
水をかけられる、私を抑えていた幽鬼達が絶叫をあげ消滅していく、私は拘束から解き放たれる。
 そんな私は、そんな女じゃない。幽鬼に弄ばれた事に涙がこぼれた。
「まぁ犯されて壊れる寄りましね、さっさとコイツら片付けるから。ちょっと待っててね」
 そう言うやいなや、槍のようなもので幽鬼達を切り裂いていく。一切の迷いもない動きで、また一つまた一つと切り裂いていく。最後の一体を切り捨てる。
 「オッサンこっち来んなよ!?」
「無事か!?」
「まあ無事と言えば無事何だろうけどさ。とにかくコッチ来んなよ!」
 「寄越すなら女性警官をお願い!」
そう言うと、彼女が着ていた服を脱ぎ始めて。私に投げて寄越す。
「サイズ合わなくても別に良いでしょ。その格好より」
受け取った服を着る。彼女は下着姿だが、堂々と立っている。
「貴女は?」
「そんな事より、オバサン流されすぎ。帰ったらさっさとシャワーでも浴びて寝な」
無性に身体が震えている。悔しくて涙が止まらない。
「冷静になったらちゃんと話すから」
女性警官がやってくる、彼女の下着姿に驚いていたが。彼女が冷静に状況を、女性警官に報告してくれた。
「だからアタシとこの人家まで送ってくれないかな?」
「では調書は、後日警察署で」
「そうしてくれる?ああ担当は鷲尾刑事でよろしく!」
「はぁ?」
「早く車お願い、先に彼女を家に送って上げて」
「大丈夫かい? 立てる?」
「ええ大丈夫です」
冷静ではなかったが返事をする。
「まっ力がある事が逆に作用したようだね、普通の女じゃ。幽鬼を見ただけで震え上がって声も出せないのに」
「当たり前のように、幽鬼を見ていたからこそ簡単に飲み込まれてつけこまれたのよ」
「油断しすぎオバサン」
反論できない、いとも簡単に嬲られ掛けてしまった自分が情けない。
「はいはい、もう終わった事だよ。ほら車が来たよ」
「ほら帰ろう?」
彼女に手を引かれて車に乗った
「貴女その姿で平気なの?」
「別に? 気にしたこと無いから、服を着てなきゃオバサン全裸だったでしょ?」
「ありがとう」
名も知らない彼女に例を言う
「お巡りさんアタシの『槍』は丁重に扱ってよ!」
「長くて載らないのよ」
「じゃあ良いわよ、こうするから」
彼女は車の窓を開けて、腕だけ出して槍を持った
「これなら良いでしょ?」
「良くありません!」
「いやこの娘の言うとおりにしてやってくれ」
鷲尾さんが女性警官を説得させた。
「京子ちゃんよ、無理かもしれないが。署に顔が出せるようなら、来てくれ」
そこまで言うと
「車を出してくれ」
女性警官に命じた、走り出す車の中で。彼女は
「まっ気にするなって、これ飲みな」
そう言って、私に飲み物を差し出す。黙って受け取り飲み干す。身体がほんのり光る
「瘴気は消えたね。まっ取り敢えず良かったじゃん、運が良かったね。間違い無く犯されていたよ」
何者だろう彼女は?暗くて顔がよく見えない
「貴女は誰?」
「アタシか? もし明日、警察署に来れたら教えてあげるよ」
「オバサンにそんな元気があるならだけど」
「そう……」


◇ ◇ ◇

 数刻前
 
 何で死体が動きやがるんだ。しかも力も強い! 京子ちゃんが結界を張れる場所までコイツら二人は厳しいか!? 血飛沫を飛び散らせながら向かってくる。どんなに殴っても向かってくる、きりがない俺の力で幽鬼を殴る事はできても、今は取り憑かれた死体を撲ってるだけに過ぎない。だからこそ京子ちゃんとの連携が不可欠だった。彼女の結界で幽鬼を死体から切り離す、それを耐えたものを俺が叩き潰す。今迄そうして来た。
 広い所まで誘い出すことができた、後はいつもの様に京子ちゃんが結界を張って……こない、さっき迄姿は見えていたのに! 不味い! しかし二つの死体が絡んで来る。コイツらの相手はしていられない。気が焦る、不味い早く探さないと! だが死体に足を掴まれ転び、そこに更にもう一体が覆い被さってくる。その時、死体の後ろに人影が見えた。その人物は、手に持った槍のような物で死体の首を切り払った。首からおびただしい程の血が流れ出ている、死体は動かなくなった。
 その事を確認すると、もう一体の腹を貫き通す。死体の中から臓物が飛び出し動かなくなった。
「オジサン油断しすぎ、これでも飲んで身を清めてなよ」
飲み物が入っている容器を渡される。
「そんな事よりもう一人いるんだ! 助けに行かんと!」
「連れって?」
「女だ」
「全く二人とも油断しすぎ」
「アタシが探す、オジサンはさっさと応援要請して。あと女性警官が良い、終わったら呼ぶから」
そう言うと娘が槍を死体から抜き、構えながら歩きだす。不思議な事に槍の穂には、血糊がついていなかった。それどころか蒼く光っている。そのまま暗い路地裏へと消えって行った

◇ ◇ ◇

 パトカーが私の家へと着く、もう深夜の一時を過ぎていた。
彼女に改めて礼を言う。彼女はウンザリとした様子で
「はいはい分かった分かった」
とだけ言い残しパトカーと共に去っていった。
 悔しかった、自分が犯されかけていた事に完全に油断しすぎていた。
これまで何体もの幽鬼を倒して来た……それがこのざま……家に入り熱いシャワーを浴びた。少しでも身体に纏わりついた感触を無くす為に、良く洗い流してから浴槽に浸かる。
 ふと5年前の事を思い出す、彼は何時も一人で行動していた、私達にはついてくるなと。今更気付く、呪いとか関係無くこうなる事を恐れていたのだろう。今彼に会えるなら謝りたい。リビングへと戻ると熱いお茶を飲み、寝室へと向かう、夫と娘が眠っている。私は娘の隣に潜り込み眠りについた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

若妻はえっちに好奇心

はぴろっく
恋愛
結婚してから数年、夫婦円満で仲良く生活している。 しかし、私のお家事情で仕事が忙しい日々が続き、旦那様とはすれ違いの日々を重ねて、私は仕事の疲れからセックスレスになっていた。 ある日、さり気なく旦那様と一緒にお風呂に入った。久しぶりに裸の対面だった。 男と女が、裸で狭く密閉された場所にいるのだから、自然的にせっくすに発展する。 私は久しぶりに頭の中をグラグラする刺激の快感を覚え、えっちの素晴らしさに目覚め、セックスレスから脱却する。 その日のHをきっかけに、私はえっちに好奇心が湧き、次第に普通のえっちから人に言えないえっちに覚醒していく。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...