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 そこまで聞くのが限界だった。その男たちは明らかに卯夏のことを話していた。

 ──なんだって? 卯夏がフェラ? とおりすがりみたいなあんな男に?

 怒りで目の前が真っ赤になった。
 冷静に考えたいと思うのに、卯夏とあの男に対するいらだちだけですぐにいっぱいになってしまう。

 ふつふつと煮えたぎりそうになりながら、席を立った。
 その場でその男をなぐりつけたかったけれど、それはぐっとがまんする。

 相手が卯夏だと確定したわけじゃない。

 それにようやく見つけた続けられそうな仕事だと、親方の黒島さんもいいひとなんだと、うれしそうに話した卯夏の顔が思い浮かぶ。
 ようやく見つけたその場所を奪いたくなかった。

 卯夏のいうとおり黒島さんは信頼できるひとだ。
 一見温厚そうなのに、やんちゃをしていた若者たちを統括しているだけの底しれなさもある。
 相手は客だし、僕がここでこいつらを殴りつけるよりも、きっとうまく対処してくれる。

 自分にそう言い聞かせて、殴りつけたくてカタカタとふるえるからだを、無理やり動かして店を出た。
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